村上春樹 村上朝日堂はいかにして鍛えられたか 新潮文庫 [日記(2006)]
村上春樹が週間朝日に連載した随筆、又は雑文。カットを安西水丸が描いている。
小説家にとって、小説以外の文章を発表することの意味は何なんだろうと考える。本業では無いのだから、云わば雑文と呼ばれるのだろうが、小説家の名前(ブランド)で書き、商品として流通する以上それなりの存在意義があるはずである。↓の『半眼訥訥』は高村薫の小説を切り離して独立しても(本来そういう仮定は無理があるが)、読むに耐え得るものであり感心した。
で、『村上朝日堂』が面白くないかと云えば、これはこれで結構面白いし笑える。
『長寿猫の秘密・出産編』などは出色である。猫の手を握って、出産に立ち会う描写は・・・
「猫はときどき後ろを振り返って、『どこにも行かないでね、お願い』というようななまめかしい目つきでじっと僕を見る。」どこか凄みさえ感じる。
「だからうちの奥さんはよく『それ、ひょっとしてあなたの子供じゃないの?』と云っていたが・・・」笑える。
鮨の乗っていない回転鮨のベルトコンベアを前に、「ハマチ、烏賊」と頼みながら鮨を食べる『真昼の暗黒の回転鮨』もいい。嘘か誠か詮索は無用、素直に騙されるか創作と思えばよい。
100円の古本だからまあいいか →☆☆☆★★
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