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藤原作弥 満州、少国民の戦記 新潮文庫 [日記(2006)]

満州、少国民の戦記

満州、少国民の戦記

  • 作者: 藤原 作弥
  • 出版社/メーカー: 新潮社
  • 発売日: 1988/07
  • メディア: 文庫

 藤原作弥は『李香蘭 私の半生』の共同執筆者である。本書は少国民・藤原作弥の、1944年~1946年の満州、ノモンハンに近い興安街という小さな街と、鴨緑河ほとりの国境の街安東での体験談である。敗戦と満州引き揚げの悲劇を扱ったフィクション・ノンフィクションは多いが、本書は、安東7万人の日本人が、ロシア軍・八路軍(中国共産党)・国民党の影響下にある治安維持委員会などの勢力が拮抗するなかで中立を守りながら、日本人会を組織し祖国帰還を目指した「希望に満ちた望郷物語」である。


 興安街を脱出できた著者のグループは、在満州の日本人としては幸運な部類に入るのだろうが、大陸に置き去りにされた日本人が帰国を目指して逞しく生きる姿は感動的である。いつの時代のどんな状況下でも、希望を持って生き抜こうとする人々の存在を、著者は生き生きと描く。父は骨董屋の看板を掲げて裏では密造酒の製造に励み、母は露店で餃子を、少年は酒場で煙草を売るという著者一家の姿はどこかユーモアさえただよう。煙草売の少年(著者)が大人の世界に足を踏み入れ成長してゆく姿も、自分を美化するでもなく、愛情を持って描いていて好感がもてる。『付 子供の戦記』で描かれる「葛根廟事件」など、日本人虐殺事件、残留孤児など満州引揚には悲劇だけではなく本書の様な「希望に満ちた望郷物語」が存在したことは、救われる思いがする。

 

 解説を時の日銀副総裁・三重野康が書いている。安東銀行頭取・三重野勝(康の父)のエピソードが本書に紹介されているが、日銀副総裁にひっかかったので検索をかけてみると、著者は民間から就任して話題となった「ヒゲ」の日銀副総裁であった(現在は日立総研社長)。

それなり →☆☆☆★★


タグ:満州
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