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渡辺容子 左手に告げるなかれ 講談社文庫 [日記(2006)]

左手に告げるなかれ

左手に告げるなかれ

  • 作者: 渡辺 容子
  • 出版社/メーカー: 講談社
  • 発売日: 1999/07
  • メディア: 文庫

 題名だけで何となく読んで見たい本がある。女性作家で「左手」と云えば、ル・グゥインの「闇の左手」が思い浮かぶが・・・かな?と思って読んでみた。見事に外した。

「あなたが、施しをするときには、右の手でしていることを、左の手にさえも知らせないようにせよ。」

とマタイ伝第6章から来ているらしい。「左手に告げるなかれ」とは、読む前も読んだ後も、いい題名である。作者のセンスが偲ばれる。

「妬いてるの?と、ついいましがた尋ねた言葉を、さきほどより執拗に繰り返して尋ねたい欲求にかられたが、唇をきつく閉じあわせ、それを我慢した。肯定されようものなら、テーブルを逆さに引っ繰り返しかねない自分が怖かったからだ。親不知を抜歯されたときに味わう強い疼きを、歯でなく、私は胸に感じていた。」

元恋人の殺された妻への嫉妬である。随所に、こうした気の利いた表現が冴える。

 元恋人の冴えない中年男、主人公と事件を追いかける「探偵」、アイスクリームに目が無い刑事犬丸と同性より男性の人物造形がうまい。事件の舞台や動機、謎解きは好みではないが、軽快な会話と主人公「八木薔子」の魅力で最後まで読ませる。保安士「八木薔子」シリーズが生まれてもおかしくはない。坂東指令長、恋人の木島、犬丸刑事などを脇役に、2時間スペシャルのシリーズドラマを企画したディレクターはいたであろう(ひょっとしてドラマになった?)。但し舞台がスーパー、コンビニのため、スポンサーに配慮して没になったかと思う。
1996年、江戸川乱歩賞受賞作。

好みから云うと →☆☆☆★★

追記
「八木薔子」で検索をかけると、1997年、天海祐希主演でドラマ化されているらしい。


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