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福井晴敏 Op.ローズダスト 文藝春秋  [日記(2006)]

Op.ローズダスト(上)

Op.ローズダスト(上)

  • 作者: 福井 晴敏
  • 出版社/メーカー: 文藝春秋
  • 発売日: 2006/03/14
  • メディア: 単行本

 amazonのレビューは☆☆☆★★だったので買うのを躊躇っていた。
 のっけから都心での爆破テロ、登場するのが警視庁公安部に属する中年刑事、防衛庁情報局(ダイス)の若い工作員。お馴染みの福井晴敏ワールドである。この配役は「亡国のイージス」の古参軍曹?と如月行そのままで、先が読めそうであり☆3つも分からないではない。
 興味があったのは、村上龍と福井晴敏が北朝鮮をどう書いているかだった。
 北朝鮮との係わり方は、「半島を出よ」とでは大きく趣を異にする。村上龍は北朝鮮軍が日本に攻め入るというクライシス・ノベルを書いたが、福井晴敏は「北朝鮮」を遠景として、制度疲労を起こした戦後の枠組みと、未だ形を取ることの出来ない新しい制度の軋みを書いた。 両者とも希望を次の世代に託す物語を終えた。

「いまの日本には古い言葉しかない。右翼とか左翼とか、タカ派とかハト派とか・・・。もうそういう分け方じゃ割り切れない時代になってるのに」

 新しい時代を切り開くには、新しい言葉が必要である。「戦争放棄」「日米同盟」「平和国家」などの古い言葉では、現在の国際状況に対処しきれない、特に9.11以降にあってはそうかもしれない。今流行の「もったいない」も、我が国では死語の復権だが、日本以外の国では新しい言葉(新しい概念)なのだろう。ただ、新しい言葉が生まれるためには、破壊によるカタルシスが必要なのかどうか。福井晴敏は新しい言葉による新しい物語を書くつもりだろう。「Op.ローズダスト」は、その宣言の物語だと勝手に解釈している。なんと言っても、「終戦のローレライ」を書いた作家だから。「終戦のローレライ」のラスト50ページを書き得た作家だから、期待している。「Op.ローズダスト」は雑誌に連載され、LastPhaseが加筆されて出版された。加筆部分が無いと小説としては尻切れトンボだが、加筆部分が小説全体を補完しているかというと、そうも思えない。映像化に走り過ぎ、「終戦のローレライ」にあった叙情が足りない。

福井さんとしては☆☆☆だが、自作を期待して →☆☆☆☆★


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