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船戸与一 かくも短き眠り 角川文庫 [日記(2006)]

かくも短き眠り

かくも短き眠り

  • 作者: 船戸 与一
  • 出版社/メーカー: 角川書店
  • 発売日: 2000/04
  • メディア: 文庫

舞台は、チャウセスク政権崩壊の5年後、1994年ルーマニア。傭兵の履歴を持つ日本人の法律事務所調査員を主人公にルーマニア対外情報局、ハンガリー民主同盟の非合法組織にチャウセスクの親衛隊(ドラキュラの息子たち)が絡む。舞台は吸血鬼伝説の地トランシルバニア、これはもう船戸ワールドである。
船戸与一の書く物語は、虐げられる者、少数民族の抵抗・独立の紛争に日本人が巻き込まれるスタイルが多いが、「かくも短き眠り」も、トランシルバニアをハンガリーに帰属させようとするマジャール人組織が登場するが、それは舞台の背景に過ぎない。
 スパイや傭兵の登場する物語り、は対立する二つの陣営があって成り立つ。資本主義陣営と社会主義陣営の区分けがあいまいになり、冷戦構造が崩れた1989年以降は、そうしたスリラーは成り立ち難くなている。変わって登場するのが、民族、文明の対立である(1989年以前の民族紛争は、両陣営の代理戦争の意味が強い)。冷戦構造に替えて作者が設定した舞台は、民族の紛争ではなく幻の「ベルリンの壁」である。登場人物を取り囲み、捕らえているのは、壊されたはずの「ベルリンの壁」である。「かくも短き眠り」は、無くなった「壁」を埋める空しい代償行為の物語である。

船戸ワールドにしては迫力に乏しい →☆☆★★★


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