村上春樹 羊をめぐる冒険 講談社文庫

羊をめぐる冒険〈上〉

• 作者: 村上 春樹
• 出版社/メーカー: 講談社
• 発売日: 2004/11
• メディア: 文庫

　村上春樹をめぐるシンポジウムが開催され、立ち見席が（と云うのも変だが）出る盛況であったと何処かで読んだ。海外での翻訳も進み、若い研究者も多いと聞く。「若い」ということがミソかもしれない。村上春樹は、「ノルウェーの森」が評判になった頃読んだ記憶があるが、ほぼ初めてと云ってよい。
　独特の表現とスタイルを持っている。例えば、

「・・・少なくともそれには一貫したテーマが感じられた。『思想の相反対性』とでもいうべきものである。一頭の驢馬が、左右に同量のかいばを置かれて、どちらから食べ始めればいいのかを決めかねたまま餓死しつつあるといった類いの哀しみがそこには漂っていた。」

これが、建物に関する描写である。こうした独特の感性を持った主人公と、耳モデルと売春と広告代理店のOLを職業とする主人公のガールフレンドを軸に、児玉誉士夫を思わせる大物右翼の秘書、主人公の友人鼠、そのまた友人の羊男（この羊男は、なんと羊の縫いぐるみを着ている！）、羊博士がからんで、この世のものとも思えない背に☆マークを持つ羊を探す、何とも不思議な物語りである。
　（私の）理解を越えたメタファーを持った登場人物と表現で、上下２巻一気に読ませる魅力を持っている。これが村上春樹ワールドなのかどうか。全編に流れる「優しさ」の様なものが魅力のひとつであることは間違いない、↓で書いた小川洋子「博士の愛した数式」と同質かもしれない。

理解不能、★は付けられない→☆☆☆☆☆