伴野 朗 長安殺人賦 集英社文庫 [日記(2006)]
↓で「項羽と劉邦」を読んだ後、古本漁りで見つけた中華ものの一冊。伴野 朗と云えば、北京原人の化石をめぐって第二次世界対戦前夜?の中国を舞台に、日中諜報機関が入り乱れて戦う「五十万年の死角」が有名である。
「長安殺人賦」は題名のように、唐の都長安を舞台に、阿倍仲麻呂と詩仙李白がホームズとワトソンよろしく二人三脚で殺人事件を解決するという、歴史好きにはわくわくする仕掛けとなっている。当然、玄宗皇帝、楊貴妃は出てくるし、碧眼の胡姫(ペルシャ人)が出てくるは少林寺拳法の名手まで出てきて、ちょっとサービス過剰と思わないでもないが、それはそれで楽しめる。
阿倍仲麻呂が登場するわけだから、当然遣唐使や科挙制度などの蘊蓄が語られ、作中に李白、杜甫、白楽天、王維などの漢詩が挿入され、歴史と漢文の勉強も出来る仕組みになっている。長安の地図を参照しながら読むと、仲麻呂、李白と共にほろ酔い気分で花を愛でながら芙蓉園(長安の公園)をそぞろ歩く気分や、金市(繁華街)で碧眼紅毛のペルシャ美人とすれ違うというスリルを味わうことも出来る。まことに贅沢な趣向となっている。
李白:「長安は春に限る。そう思われぬ、仲殿?」
仲麻呂:「いかにも。大唐の都は、春こそがふさわしい・・・」
李白:「さあ、一献・・・」
???ちょっとイメージ違うなァ、などとそれなりに楽しめる。
お勧め度 →★★★☆☆
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