立花 隆「政治と情念~権力・カネ・女」 [日記(2005)]
単行本『「田中真紀子」研究』を改題したものが本書らしい。有名な「田中角栄の研究」の流れで、基調は本質的に変わっていない。文藝春秋の記者との対談の体裁をとっており、内容が「ゴシップ」だから大変読みやすい。
*** 引用 ***
・・・政治の本質は利害の調整にあります。・・・政治力というのは、言葉を換えていえば、妥協しがたい立場に立つ対立者間に、妥協を作り出す能力(合意形成能力)ということです。それに必要なのは妥協点を見つけ出す能力(いわゆる落としどころを見抜く能力)であり、当事者双方に、それをのませる能力です。
のませる能力として重要なのは、一方ではそれをのまないと、より大きな損失をこうむることになると思わせるおどしの能力であり、もう一方では、のめば別の筋から別の利益が期待できる思わせる(またその通り実現してやる)損失補填能力です。そういう能力において角栄は特にすぐれていました。
*** 引用おわり ***
米貿易赤字の元凶である日米繊維交渉を例に、田中角栄の問題解決手法をこのように斬る。外交問題を国内問題とすり替え、日本の繊維業者に多額の保証(ばらまき)をすることにより解決を図るのである。短絡的にいえば、この「妥協」と「脅し」と「補填=カネ」こそが田中角栄と自民党保守派=日本の戦後政治である。
たぶん、「政治」とはそういうものだと思わせるエピソードが詰まっている。
個人的評価は★★★★★。
★★★★★=絶対のおすすめ。
★★★★☆=おすすめ。
★★★☆☆=読んで損は無い。
★★☆☆☆=好みに合わない。
★☆☆☆☆=(私にとっては)理解不能。
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