さらば、わが愛/覇王別姫 [2008年 レビュー]
「さらば、わが愛/覇王別姫」(1993年・香港) 監督:チェン・カイコー 原作・脚本:リー・ピクワー
京劇「覇王別姫」を軸に激動の中国を生きた2人の役者の生涯を描いた大河ドラマ。
93年のアカデミー賞外国語映画賞はノミネートのみで終わったものの、同年のカンヌ国際映画祭ではパルム・ドール。ゴールデングローブ賞は外国語映画賞を受賞しています。
同じ時代を描いた映画「活きる」を観たときにも思ったのだけれど、近代中国の歴史はあまりに波乱に満ちていて、だからこそ時代に翻弄される人々の日常は劇的で面白いのでしょう。それだけでも充分面白いのに、この作品は激動の歴史を背景にして、中国ならではの世界観“京劇”をモチーフにしたところが企画としてまず素晴らしい。
不遇の少年時代を過ごした2人が苦しい修行時代を経て、当代随一の京劇役者となり、舞台上では互いを必要としながら、舞台下での互いの想いはやがてすれ違うようになっていく…。
そんな2人の生涯を描いた172分は見事なまでの適正尺。長さを感じることはまったくありません。
見せてくれたのはレスリー・チャンの美しさもあったでしょう。
その美しさはメイクだけで表現したものではなく、常に肩を落とした姿勢、目線、指先、など流れるような身のこなしをマスターしたレスリー・チャンの努力の賜物。
もうひとつ注目すべき点は、男が男を愛する物語でありながら、観客から拒否されるような映画でないこと。
そうなっている理由はレスリー・チャン登場以前、子役たちによるシーンの丁寧な描写と、のちに登場するコン・リーの演技によるものだと思います。
遊郭で働く母に捨てられ蔑まれた自分を、ただ1人かばってくれた兄のような存在。さらに京劇の女形に選ばれながら、なかなか自覚できない時期を経て、“女”になりきったときに気付く“兄”に対する想い。ここまでじっくり見せられると観客は否定のしようがありません。
さらにコン・リーが女のいやらしさを見事に演じきっていて、レスリー・チャンを一層純粋な“女”に見せてくれるのです。
この作品がリリースされた1993年は、香港の中国返還4年前。返還後にここまでの作品が作れたかどうか分からないな、と思えば、15年後の今になって観てもとても価値のある作品だと思います。
京劇「覇王別姫」を軸に激動の中国を生きた2人の役者の生涯を描いた大河ドラマ。
93年のアカデミー賞外国語映画賞はノミネートのみで終わったものの、同年のカンヌ国際映画祭ではパルム・ドール。ゴールデングローブ賞は外国語映画賞を受賞しています。
同じ時代を描いた映画「活きる」を観たときにも思ったのだけれど、近代中国の歴史はあまりに波乱に満ちていて、だからこそ時代に翻弄される人々の日常は劇的で面白いのでしょう。それだけでも充分面白いのに、この作品は激動の歴史を背景にして、中国ならではの世界観“京劇”をモチーフにしたところが企画としてまず素晴らしい。
不遇の少年時代を過ごした2人が苦しい修行時代を経て、当代随一の京劇役者となり、舞台上では互いを必要としながら、舞台下での互いの想いはやがてすれ違うようになっていく…。
そんな2人の生涯を描いた172分は見事なまでの適正尺。長さを感じることはまったくありません。
見せてくれたのはレスリー・チャンの美しさもあったでしょう。
その美しさはメイクだけで表現したものではなく、常に肩を落とした姿勢、目線、指先、など流れるような身のこなしをマスターしたレスリー・チャンの努力の賜物。
もうひとつ注目すべき点は、男が男を愛する物語でありながら、観客から拒否されるような映画でないこと。
そうなっている理由はレスリー・チャン登場以前、子役たちによるシーンの丁寧な描写と、のちに登場するコン・リーの演技によるものだと思います。
遊郭で働く母に捨てられ蔑まれた自分を、ただ1人かばってくれた兄のような存在。さらに京劇の女形に選ばれながら、なかなか自覚できない時期を経て、“女”になりきったときに気付く“兄”に対する想い。ここまでじっくり見せられると観客は否定のしようがありません。
さらにコン・リーが女のいやらしさを見事に演じきっていて、レスリー・チャンを一層純粋な“女”に見せてくれるのです。
この作品がリリースされた1993年は、香港の中国返還4年前。返還後にここまでの作品が作れたかどうか分からないな、と思えば、15年後の今になって観てもとても価値のある作品だと思います。
kenさん、未見だったですか!?意外だわ。
京劇しか知らない蝶衣。
自分を捨てた母と同じ娼婦を選んだ“兄”への想い。
コン・リーも素晴らしいですが、
レスリーの演技とは思えない姿に、何度観ても泣けます。
今となっては、レスリー本人の最期とダブります。
by 蓮花 (2008-01-19 05:14)
まさに”大河ドラマ”でしたね。
登場人物三人が、愛したり憎んだりしながらものすごく濃密な関係を長い間生きていくんですね。
kenさんのレビューを読みながら、再度観たくなりました。
by Sho (2008-01-19 09:35)
>蓮花さん
そうなんです。15年前の僕は時間があれば外で酒を飲むか、
FF系のゲームを徹夜でやるかっていう生活をしていたので
映画なんてほとんど観ていなかったのです。
だからレスリーの自殺もいまいちピンと来なかったんですよねえ。
この作品を観て、やっと意味が分かりました。
nice!ありがとうございます。
>Shoさん
そんなわけで、この時代の作品もこれからたくさん観ないといけないなと
思いを新たにした1本でした。
nice!ありがとうございます。
by ken (2008-01-19 10:26)
観ていただけましたか!
私の乏しい映画鑑賞歴の中でですが,ベストワンの作品です.
最初に観たときの,胸のせつなさ・苦しさは,たとえようもありません.
この映画を思うたび,大げさですけど
「人は感動するために生まれてくるのかなぁ」などと遠い目になってしまいます.
by midori (2008-01-20 11:48)
「人は感動するために生まれてくる」
いい言葉ですね。その言葉に感動します。
そんな言葉を生んだ、この映画にも感謝ですね!
nice!ありがとうございます。
by ken (2008-01-20 12:31)
懐かしい映画です。
この映画でチェン・カイコー監督が好きになりました。
レスリー・チャンには尊敬の気持ちが強くなりました。
そして、サンザシは私にとって、悲しいものとなりました。
レスリー・チャンが今でも生きていてくれたらなと、残念に思います。
by ミック (2008-01-20 19:30)
僕はチェン・カイコーの作品では「北京ヴァイオリン」が好きでした。
レスリーが生きてたら、どうなってたでしょうねえ。
nice!ありがとうございます。
by ken (2008-01-20 20:20)