つぐない

「つぐない」（2007年・イギリス）　監督：ジョー・ライト　脚本：イアン・マキューアン

　映画界に賞レースの季節がやって来ましたね～。
　しかーし！今年は大事件発生。NBCがゴールデングローブ賞の放送を取りやめました。
　うおーい、脚本家組合のストライキってまだ続いてたのかよ！まあスターが授賞式に来ないかも知れないとなったら、テレビは写すもの無いもんねえ。
　そんなわけで今年のゴールデングローブ賞は記者会見だけで終わりだそうです。
　あちゃーアカデミー賞はどうなるんだろう。
　
　「つぐない」はゴールデングローブ作品賞（ドラマ部門）にノミネートされてます。
　キャストを見ていると、筆頭にクレジットされるキーラ・ナイトレイ、セシーリアの物語かと思いがちですが、実際には違います。これはセシーリアの妹、ブライオニーの物語。
　しかも僕は「イングリッシュ・ペイシェント」や「コールドマウンテン」のような大河ロマンスかと思っていたのですが、それも違いました。
　ドラマには「身分の違いを越えた愛」と「戦争が引き裂いてしまう愛」というある種“鉄板”のテーマが二つも織り込まれながら、さらにそれを包括する「贖罪」という大テーマが存在しているんです。なるほど「つぐない」とはそういうことかあ、と感心してしまいました。
　見事な構造です。当然ですけど原作がよく出来ているんでしょうね。
　
　脚本はブライオニーの人生を3つの時代に分けて描いています。
　第1章は13歳。
　幼いが故に犯してしまった罪により、姉セシーリアと使用人の息子ロビー（ジェームズ・マカヴォイ）の芽生えたばかりの愛を引き裂いてしまうまで。
　本編123分のうち45分ほどを費やしているだろうこのパートが抜群に面白いです。
　タイプの効果音を引用した音楽も、13歳のブライオニーを演じたシーアシャ・ローナン（デビュー間もない広末涼子を思い出させる）も実に素晴らしい。
　第2章は18歳。
　ロンドンの病院で看護士見習いをしながら、自分の犯した罪の重さに改めて気が付く。
　ここはロビーにまつわるシークエンスが盛りだくさんで若干中だるみしています。しかし「贖罪」がテーマであることを忘れなければ（僕は一瞬忘れかけてた）、問題なく乗り切れます。
　第3章は77歳。
　詳しくは書きませんが、このブロックがあるからこそ、「つぐない」を唯一無比の作品に仕上げていると思います。

　さらに特筆すべきは編集。
　時折時系列を無視し、登場人物の視点を変えた“つなぎ“が施されていますが、これは「ブライオニーが受けるショックを、観客にも同時に与えるため」の作戦。見事なアイディアだと思いました。
　
　タイトルは地味ですが、ゴールデングローブ作品賞ノミネートも納得の味わい深い名作です。

つぐない

• 出版社/メーカー: ジェネオン エンタテインメント
• メディア: DVD

コメント 17

これはおもしろそうですね。キーラがとってもきれいです。
kenさんがこれだけ褒めておられるんだから、面白いに違いないと思います。是非見ようと思います。ついでに原作も読んでみたいです。
by coco030705 (2008-01-09 19:59) 

キーラって肉感的じゃないのに、魅力的ですよね。
僕も原作、読んでみたくなりました。
nice！ありがとうございます。
by ken (2008-01-09 21:20) 

とても気になる作品です。
「贖罪」がテーマで、年代を分けて展開していく作りは
見ごたえがありそうです。
チェックしておきます＾＾

映画界の賞レースは個人的に地味にチェックしています
今年は、組合のストライキの関係が気になりますね・・・
アカデミー賞だけは盛り上げて欲しいです><
by (2008-01-10 20:35) 

アカデミー賞もヤバイかも知れませんよ～。
まずは22日のノミネート発表が気になるところです。
nice！ありがとうございます。
by ken (2008-01-10 20:58) 

ＴＢさせていただきました。
原作を読んでいるんで、どう映像化されたのか、
とても楽しみにしています。
by (2008-01-11 20:20) 

こんばんは。
すごく楽しみにしている作品です！
やっぱり面白そうですね～　ぜひ、観てみたいです(^^)
by non_0101 (2008-01-11 23:06) 

>おりょんさん
　原作がどうなのかとても気になります！
　時間があれば読んでみたいなあ。
　nice！ありがとうございます。

>non_0101さん
　あまり期待しないで、ニュートラルな気持ちで楽しんで下さい。
　nice！ありがとうございます。
by ken (2008-01-12 03:08) 

こんばんは。
試写会で観てきました！素晴らしい作品でしたね。
セシーリア、ロビー、ブライオニーのそれぞれの人生を考えると
本当に胸がいっぱいになりました。
観た後、しばらくは口がきけなかったです(T_T)
by non_0101 (2008-03-28 00:23) 

いいですよね～。
僕も劇場へもう一度行こうかと思います。
by ken (2008-03-28 01:07) 

わ～、あの少女が広末涼子にkenさんもみえたんですね。実は、3回目に一緒に行った映画クラブのNさんもそういってました。ジェームズ・マカヴォイはトビー・マクガイアっぽくて、じゃ、キーラは誰かなぁ・・・？ってところで、話が止まってしまいましたけど（笑）
by クリス (2008-04-30 22:40) 

キーラは「鉄板」ですかねｗｗｗ
nice！ありがとうございます。
by ken (2008-04-30 23:32) 

こんにちは。
この映画は大阪はテアトル梅田でやっていますが、上映期間が延びています。やっぱりいい映画はいいんですね。

＞登場人物の視点を変えた“つなぎ“が施されています
これは本当にブライオニーの気持になれましたね。視点を変えた場面を織り込んだことは、大成功だったと思いました。もう一度じっくり見たい作品だと思います。
by coco030705 (2008-05-14 19:00) 

やっぱり編集って大事だなあ、と思わせた作品です。
アカデミー作品賞獲って欲しかったなあ。
by ken (2008-05-15 21:27) 

13歳のブライオニー、すごく魅力的でした。
青い目に吸い込まれそうでしたよ～。
全体的に（色も白い！）無垢な感じ。
同じ歳位のいとこと比べると、余計そう思える。
確かに広末涼子っぽかったですね＾＾
by てくてく (2008-09-29 14:34) 

白人特有の白さが眩しかった～。
広末マニアにはたまならない少女でしたw
nice！ありがとうございます。
by ken (2008-10-03 22:08) 

流行りが去った後、今さら観ました。。
しかし、これだけ秀逸な作品、流行りなど無関係ですよね。
TBお願いします。
by pandahead (2009-01-05 23:44) 

いずれ古典の名作に成ると思いますね、これは。
nice！ありがとうございます。
by ken (2009-01-06 00:35)