チャプター27 [2007年 レビュー]
「チャプター27」(2007年・カナダ/アメリカ) 監督・脚本:J・P・シェーファー
マーク・ディヴィッド・チャップマンがジョン・レノンを殺害するまでの3日間を描いた作品。
ベースになったのは、チャップマンに200時間にも及ぶインタビューを行い、出版された「ジョン・レノンを殺した男」(ジャック・ジョーンズ著、1995年刊)。
これを基に“映画雑誌の編集主任”という肩書きを持つJ・P・シェーファーが脚本を書き、監督を務めることになった。もちろん初監督。ちなみにジョン・レノンが殺害された当時シェーファーは1歳だった。
「なぜ今頃、こんな作品が?」
と思うのは僕だけだろうか。だとしたら申し訳ないので、まずは映画のことから書いていく。
タイトルの意味。公式HPの記述が面白かったので引用させていただく。
『26のチャプターで綴られているJ・D・サリンジャー、不朽の青春小説「ライ麦畑でつかまえて」の主人公、ホールデン・コールフィールドに自分を重ね合わせていたマーク・ディヴィッド・チャップマンが、この小説を完全に誤読して、ジョン・レノン殺害に至った、その「ライ麦畑~」から逸脱した“最後の行動”を象徴するものである』
残念ながら僕は「ライ麦畑~」を読んでいなかったので、本作の意図するところをすべては理解していないと思う。
だから、これから本作を観ようと言う人にはまず「ライ麦畑~」を読むことを薦める。すると“誤読”の意味をより深く知ることが出来るだろう。
しかし読んでいない僕にも、1980年12月8日未明に至るまでの異様な緊迫感は、充分すぎるほど伝わってきた。
当然、ビートルズとの関わり、ジョン・レノンに対する想い、そしてこの事件をどこで、どう聞き、どう感じたかによって、本作から受け取る緊迫感は微妙に異なるだろうが、“誰もが知るゴール”へ向けて突き進む“誰も知らないプロセス”は、そのすべてのシーンが衝撃的だ。
途中、不満が無いわけじゃなかった。
僕は中盤あたりまで「チャップマンはなぜジョン・レノン殺害を思い至ったか」の具体的な描写が足りないんじゃないかと思った。ただチャップマンの妄想に付き合わされているだけのような気もした(もしや、ここは「ライ麦畑~」を読んでおくことで解消されるのかも知れない)。
しかし、結果的には後半用意されたチャップマンの激しい自問自答が僕の不満を解消することになった。人間の持つ最も弱い部分と対峙して葛藤するチャップマンの様子は、決して他人事とは思えない見事な心理描写だったと思う。
唯一、本当に残念だったのは、「ジョンにサインをもらうチャップマン」という写真がこの世に存在しているはずなのに、その1枚が本編で使われなかったことだ。どんな理由で使わなかったのか、あるいは使えなかったのかは知らないが、その1枚があればこの映画は「傑作」と太鼓判を押せたのに、と思う。
それでも、この作品の持つリアリティは素晴らしい。
チャップマンの直接取材をしたジャック・ジョーンズと、それを基に見事な脚本を書き上げたJ・P・シェーファーの仕事は賞賛に値する。
そしてもう一人忘れてはならないのが、チャップマンを演じたジャレッド・レトだ。
このイケメン俳優が、 チャップマンを演じるために、
…こうなった!
体重を30キロも増やしたというジャレッド・レト。
「レイジング・ブル」のデ・ニーロにも驚いたが(古いな)、これはそれ以来の驚き。
さて、最後に僕自身の疑問。
「なぜ今、この事件を取り上げるのか?」
監督のシェーファーは1979年ドイツ出身。世代的に見てもビートルズやジョン・レノンには特別な思い入れはないはずだ。
なのになぜ?
その理由を調べてみたら、公式HPにこうあった。
シェーファーが大学生だった頃。ある友人が「2001年に仮出所するだろうチャップマンを射殺しに行く予定だ」と話した。普段は「人を殺す」とか「復讐」と言ったことなどまったく口にしない友人が、チャップマンについては自分自身のコントロールを失っていた。それがシェーファーにはショックで、以来ジョン・レノン殺害事件に興味を持つようになったと言う。
「事件に直面した人間は、その事件をなかなか語ることが出来ない」
これは過去にいくつかの事件を取材して僕なりに感じたことだ。
大きく言えば、沖縄、広島、長崎の人たちは、なかなか戦争のことを話したがらなかった。
この事件も同じだと思う。客観的にこの事件を捉えられる世代じゃないと作り得なかった作品なのだ。
その証拠に、この映画をボイコットしようと言う運動もあちこちで展開されている。こういった映画でチャップマンを取り上げること自体、ジョン・レノン殺害という「大きなこと」を成し遂げて、有名になろうとした彼を増長させるだけだと。
言わんとすることは分かる。
けれど僕は、これを「優れた映画だ」と評価する。
マーク・ディヴィッド・チャップマンがジョン・レノンを殺害するまでの3日間を描いた作品。
ベースになったのは、チャップマンに200時間にも及ぶインタビューを行い、出版された「ジョン・レノンを殺した男」(ジャック・ジョーンズ著、1995年刊)。
これを基に“映画雑誌の編集主任”という肩書きを持つJ・P・シェーファーが脚本を書き、監督を務めることになった。もちろん初監督。ちなみにジョン・レノンが殺害された当時シェーファーは1歳だった。
「なぜ今頃、こんな作品が?」
と思うのは僕だけだろうか。だとしたら申し訳ないので、まずは映画のことから書いていく。
タイトルの意味。公式HPの記述が面白かったので引用させていただく。
『26のチャプターで綴られているJ・D・サリンジャー、不朽の青春小説「ライ麦畑でつかまえて」の主人公、ホールデン・コールフィールドに自分を重ね合わせていたマーク・ディヴィッド・チャップマンが、この小説を完全に誤読して、ジョン・レノン殺害に至った、その「ライ麦畑~」から逸脱した“最後の行動”を象徴するものである』
残念ながら僕は「ライ麦畑~」を読んでいなかったので、本作の意図するところをすべては理解していないと思う。
だから、これから本作を観ようと言う人にはまず「ライ麦畑~」を読むことを薦める。すると“誤読”の意味をより深く知ることが出来るだろう。
しかし読んでいない僕にも、1980年12月8日未明に至るまでの異様な緊迫感は、充分すぎるほど伝わってきた。
当然、ビートルズとの関わり、ジョン・レノンに対する想い、そしてこの事件をどこで、どう聞き、どう感じたかによって、本作から受け取る緊迫感は微妙に異なるだろうが、“誰もが知るゴール”へ向けて突き進む“誰も知らないプロセス”は、そのすべてのシーンが衝撃的だ。
途中、不満が無いわけじゃなかった。
僕は中盤あたりまで「チャップマンはなぜジョン・レノン殺害を思い至ったか」の具体的な描写が足りないんじゃないかと思った。ただチャップマンの妄想に付き合わされているだけのような気もした(もしや、ここは「ライ麦畑~」を読んでおくことで解消されるのかも知れない)。
しかし、結果的には後半用意されたチャップマンの激しい自問自答が僕の不満を解消することになった。人間の持つ最も弱い部分と対峙して葛藤するチャップマンの様子は、決して他人事とは思えない見事な心理描写だったと思う。
唯一、本当に残念だったのは、「ジョンにサインをもらうチャップマン」という写真がこの世に存在しているはずなのに、その1枚が本編で使われなかったことだ。どんな理由で使わなかったのか、あるいは使えなかったのかは知らないが、その1枚があればこの映画は「傑作」と太鼓判を押せたのに、と思う。
それでも、この作品の持つリアリティは素晴らしい。
チャップマンの直接取材をしたジャック・ジョーンズと、それを基に見事な脚本を書き上げたJ・P・シェーファーの仕事は賞賛に値する。
そしてもう一人忘れてはならないのが、チャップマンを演じたジャレッド・レトだ。
このイケメン俳優が、 チャップマンを演じるために、
…こうなった!
体重を30キロも増やしたというジャレッド・レト。
「レイジング・ブル」のデ・ニーロにも驚いたが(古いな)、これはそれ以来の驚き。
さて、最後に僕自身の疑問。
「なぜ今、この事件を取り上げるのか?」
監督のシェーファーは1979年ドイツ出身。世代的に見てもビートルズやジョン・レノンには特別な思い入れはないはずだ。
なのになぜ?
その理由を調べてみたら、公式HPにこうあった。
シェーファーが大学生だった頃。ある友人が「2001年に仮出所するだろうチャップマンを射殺しに行く予定だ」と話した。普段は「人を殺す」とか「復讐」と言ったことなどまったく口にしない友人が、チャップマンについては自分自身のコントロールを失っていた。それがシェーファーにはショックで、以来ジョン・レノン殺害事件に興味を持つようになったと言う。
「事件に直面した人間は、その事件をなかなか語ることが出来ない」
これは過去にいくつかの事件を取材して僕なりに感じたことだ。
大きく言えば、沖縄、広島、長崎の人たちは、なかなか戦争のことを話したがらなかった。
この事件も同じだと思う。客観的にこの事件を捉えられる世代じゃないと作り得なかった作品なのだ。
その証拠に、この映画をボイコットしようと言う運動もあちこちで展開されている。こういった映画でチャップマンを取り上げること自体、ジョン・レノン殺害という「大きなこと」を成し遂げて、有名になろうとした彼を増長させるだけだと。
言わんとすることは分かる。
けれど僕は、これを「優れた映画だ」と評価する。
これ、おすすめなのですね?是非みたいと思っております。(レノン射殺に当時号泣したワタクシです)「ライ麦」から逸脱、云々の記述が面白いですね。関係ないけど村上春樹訳の「ライ麦....」かなり面白かったです。
by snorita (2007-11-09 00:24)
ボイコット云々言わない人にはオススメします。
村上春樹訳が出たときにはさすがに読もうかと思ったんですけど
そうですか、やっぱり面白いんですね。
nice!ありがとうございます。
by ken (2007-11-09 00:50)
アレだけの事をしでかした人なので、簡単に理由が分ったら、つまらなかったかも知れません。でも、ちょっと、気を持たせすぎでイラッとしました(笑)
やっぱり、ライ麦~読もうかなと思ってます。
by 江戸うっどスキー (2007-12-27 22:52)
あの事件との関わりや思い入れによって、受け止め方が大きく異なる
映画だと思います。僕はイラッとはしませんでしたけど、もう少し見せ方は
あっただろうと思いましたね。
やっぱり「ライ麦~」読みましょう(笑)。
nice!ありがとうございます。
by ken (2007-12-28 03:39)