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ヒロシマナガサキ [2007年 ベスト20]

ヒロシマナガサキ」(2007年・アメリカ) 監督・製作・編集:スティーブン・オカザキ

 「衝撃」の一言。
 原爆をテーマ作られたドキュメンタリーはこれまでも沢山あった。
 しかし、
 
この作品(原題:White Light/Black Rain)ほどショッキングな作品はなかったと思う。
 目を覆いたくなる過去。
 目を疑いたくなる現実。
 観た者は間違いなく言葉を失うだろう。
 そして、戦争がいかに愚かな行為であるかを(改めて、ではなく)初めて思い知るのだ。
 今まで僕の中にあった「反戦」は、人に教えられて口にしていた「反戦」でしかなかった。
 それほどショックだった。
 
 「衝撃」の所以を明らかにしておこうと思う。

 本編は被爆者14人のインタビューを中心に構成されている。
 この構成は今までも多く観てきた。
 驚かされるのは、老いた14人のうち何人かの被爆直後の映像があることだ。
 焼け爛れた皮膚をさらして治療を受ける少年。
 ごっそりと髪の抜け落ちた頭をさらす少女。
 文字にすることすら躊躇してしまう映像が中盤紹介される。
 その少年少女たちは生き永らえて、我々の目の前で苦悩の60年を語る。
 傷ついた肉体を晒しながら。
 何人かがこう言う。
 「昨日のことのように思い出せます」
 
 原爆。

 未曾有の悲劇は、人類が目撃した最大の閃光と5,000度の熱によって刻印された。
 そのデータは何物にも勝るハードウェアである“人間の五感”に記録された。
 だからその記憶は、記録されたままの姿で、脳裏に表示されるのだ。
 そして今。
 ハードウェアの多くは耐久年数を超えようとしている。
 忘れたくても忘れられなかった記憶が、被爆者の寿命と共に失われようとしている。
 失ってはいけない。
 絶対に失ってはいけない記憶を、今バックアップしておくために本作は生まれたのだ。
 本作が世に出る意義はあまりに大きい。
 これは世界中のすべての人が観ておくべき作品だと断言する。
 世界で唯一の被爆国の、世界で最悪の悲劇が、ここに記録されているからだ。

 そして、2007年8月6日。
 この作品はHBO(全米3,800万人が加入している大手ケーブルテレビ局)にて全米放送される。
 その反応やいかに。

 日本では7月28日(土)から、岩波ホールほか全国でロードショー公開となります。
 必見です。

ヒロシマナガサキ

ヒロシマナガサキ

  • 出版社/メーカー: マクザム
  • メディア: DVD

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コメント 15

れいちゃん

被爆の風化が叫ばれる中、
また、広島市民として、
ぜひ見ておこうと思います。
子どもたちと一緒に。
by れいちゃん (2007-06-14 17:33) 

ken

本編の冒頭、原宿の若者にインタビューするシーンがあるのですが
ここでの現実に愕然とします。
ぜひお子さんと一緒に観に行ってください。
by ken (2007-06-14 18:00) 

po-net

貴重な映画ですね。被爆国民としてぜひ見ておきたいです。
by po-net (2007-06-14 19:44) 

ken

はい。ぜひご覧になってください。
目を逸らしたくなりますが、ガマンしてください。
by ken (2007-06-14 23:59) 

初めまして。
コメントを頂いたので、来てみたんですが、
記事の内容に見入ってしまいました。
文章が丁寧で分かりやすいです。

原爆…二度とあってはならない事ですよね。
広島は、一度は行ってみたい場所でもあります。
私もみんなと映画を見に行きます。目を逸らさずに…
by (2007-06-15 02:56) 

**feeling**

家の母は広島出身でもないが、出身です。
山口から広島に。戦後まもなくのことでした。
当時は焼け野原。
いたるところに、ケロイドのひとひと。
今でもいると思いますが、戦争で下半身をなくした人などが
地面をはって、物乞いをしている。
小学生だった私、24のときの私。
どちらも目撃をしましたが、衝撃はでかかった。
広島記念館の中には、当時の状況を聞けるコーナーがあります。
涙なくてはとてもじゃないけれど、きけません。
行った折にはぜひ。
by **feeling** (2007-06-15 09:06) 

ken

>Reiさん
 ようこそ。広島いいところですよ~。カープファンにとっては、ですけど(笑)。
 この映画は本当に出来るだけ多くの人に観て欲しいと思います。
 nice!ありがとうございます。

>keiko_keikoさん
 原爆記念館は広島も長崎も行きました。
 広島の被爆者の声を聞くコーナーは展示物を観終わったあと、
 出口へ向かう途中にありますよね。
 全部は聞いていませんが、一度おさらいしたいと思います。
 nice!ありがとうございます。
by ken (2007-06-15 10:46) 

kotori

広島生まれの広島育ちの私は、学校の平和学習で、
被爆体験者の話を聞いたり、直後の映像も見た事があります。
ほんとに、あまりにひどくて、言葉が出ないですよね。
原子爆弾は、ほんとに恐ろしい兵器です。
見るのは、つらいと思うけど、見てもらいたい映画ですね。
by kotori (2007-06-17 22:08) 

ken

東京の子供と、広島・長崎の子供。
原爆に対する認識の差はあまりにも大きくて愕然とします。
なんとかしなければいけないと思いました。
nice!ありがとうございます。
by ken (2007-06-17 22:42) 

Sho

そのことを実際に体験した方々が、そのことを言葉にするというのは
言葉に出来ないくらいの(ここで本当に言葉を失ってしまうのですが)苦痛があるんだろうと思うんですね。
生涯心にとどめて亡くなった多くの方々がいる。そして、体験者は、10歳なら今年72歳になられる。
それを思うと、こういう映画がどれほど貴重かと思います。
アメリカでも日本でも、義務教育中にこういう映画を観る枠を作れないものかと思います。
by Sho (2007-06-23 19:03) 

ken

本当ですね。
一番大切なのは、やっぱり教育だと思います。
nice!ありがとうございます。
by ken (2007-06-24 02:00) 

midori

公開初日に観てきました.

>目を覆いたくなる過去。
>目を疑いたくなる現実。
>観た者は間違いなく言葉を失うだろう。

全くその通りでした.
あまりにも残酷な現実に目を見張り,声にならないうめき声を上げ,
途中からは哀しみとも悔しさとも怒りとも諦めともつかない感情から
流れ出る涙がずっとずっと止まらずに...

伝えていく,繋げていく,そうすることでしか
何十万もの彼らの魂を癒す術はないのだなと感じました.
8/6のアメリカでのテレビ放映によって
原爆を落とした側からのどんな反響があるのか,
静かに見守りたいと思います.
by midori (2007-07-31 10:40) 

ken

観ていただいてありがとうございます。
自分の映画じゃないけど、日本の大事な映画だと思います。
もっとたくさんの人に観ていただけますように。
nice!ありがとうございます。
by ken (2007-07-31 13:11) 

デクノボー

8月9日に観てきました。
日本はもはや戦前ではないかと言われ始めている今、観ておくべき映画でした。kenさんの記事を読まなければこの映画の存在を知らなかったので、感謝です。
by デクノボー (2007-08-20 19:33) 

ken

人間はつらいことを忘れられるから生きられる生き物なのですが
忘れてはいけないことってやっぱりあるんだな、と思い直した作品です。
ご覧いただきありがとうございました。
nice!ありがとうございます。
by ken (2007-08-20 21:08) 

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