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スパイダーマン3 [2007年 レビュー]

スパイダーマン3」(2007年・アメリカ) 監督:サム・ライミ 脚本:アルヴィン・サージェント

 オーストラリアの行き帰り、結局映画は1本も観なかった。
 もちろんカンタスの機内では何本も上映していたけれど、どうにもこうにも吹き替えがヘタなのと、テレビサイズの画面で観ることにガマンがならず、何本も途中で断念した。
 そんなこともあって帰国した5日はどうしても映画が観たかった。しかも劇場で。となると今はこれしかない。何も考えずに楽しめるアメコミ映画の決定版だ。

 ユナイテッド・シネマ豊洲では驚いたことに3つのスクリーンで「スパイダーマン3」を上映していた。
 ひとつはノーマル、ひとつは吹き替え版、ひとつはDLPとあった。DLPはいわゆる「デジタル上映」と言われるもので、劇場の公式HPにはこんな説明が掲載されている。

  【フィルムを使用せず、デジタル化された映像データをDLP Cinema映写機を通してスクリーンに映しています。スクリーンの隅から隅までシャープで鮮明な高画質が投影され、音も圧縮されていないため非常にクリアです。また、何回上映を繰り返しても傷やホコリで映像や音響が劣化することがなく、常に公開初日と同じきれいな映像をお楽しみいただけます。】

 配給会社にとってプリント代は、作品の買い付け費用、国内宣伝費と並ぶ3大支出のひとつで、ここ数年劇場数が一気に増えたこともあり、プリント費は頭痛のタネとなっているらしい。これがフルデジタル化されればフィルムを製造する必要もないし、通信回線や衛星回線を使って劇場に配信することが可能になり、莫大な輸送コストも削減される。フルデジタル化はまさに一石二鳥どころか一石三鳥にも四鳥にもなるのだが、日本国内では今ひとつ普及していない。その理由は実に単純で、デジタル化のための初期投資額が思いのほか高額だからだ。
 従来のアナログプロジェクターはおよそ25,000ドル。これに対してデジタルプロジェクターは130,000ドルもする。しかもプロジェクター以外にデジタル映像送出機やスイッチャーなどの周辺機器も必要で、その額は2500万円を軽く超えると聞く。
 デジタル映写機のマーケットシェア99%を占めるテキサス・インスツルメンツ社によると、2007年1月の段階でDLP Cinema映写機の設置台数は全世界で3,000台超(内訳は北米で1,934台、欧州で572台、アジアで398台、南米で26台、その他業務用285台)。わずか10ヶ月前はようやく1,000台を突破したばかりだったというから伸び率はうなぎ上りなのだが、デジタル化に踏み切ったほとんどは映画会社直営の劇場か、外資系のシネコンばかり。変動の激しい観客動員を鑑みるに、旧来の劇場経営者たちにとって2500万円を超える投資は、まさにギャンブルとしか言いようが無いのだ。
 劇場を取り巻く「格差」は、今後日本の映画興行にどんな影響を与えるのだろうか?

 「スパイダーマン3」はハリウッドにおける格差のアッパーに位置する作品である。
 非公式ながら製作費は$258,000,000(約310億円)と言われており、これは2005年の「キングコング」($207,000,000)を抜いてハリウッド史上ダントツの1位(つまり世界一)。
 「フルデジタル化で製作費削減が可能になったと聞いたけど、ありゃウソだったのか?」と思わず聞きたくなる
額だ。
 しかも、「ここまで来たら、もうストーリーなんかどうでもいい!」ってことになるのだろうか?僕にとってはそれくらいツッコミどころ満載の映画だった。
 例えば、「うにょうにょ動くあの黒い物体は結局何だったの?」ってサム・ライミに聞いたとする。
 するとサムは目を丸くしてこう答えるだろう。
 「ねえ、ちょっと待って。こんなスゴイ映像を観ておいて、最初に聞くのがそれ?」
 間違いなく、こう言われるね。
 じゃあ僕はこう返そう。
 「だったらCGアートでもやっとけ」

 もちろん見応えはあった。
 でも戦闘シーンはスピードが速くてワケがわからなかったし、
敵が多すぎて話にまとまりがなかったし、「ベンおじさんを殺した犯人は結局誰だったんだよ!」だったし、トビー・マグワイアの腹はダブついてたし(いいのか!あんなの見せちゃって!)、ロン・ハワードの娘もいまいち可愛くないし、面白かったのは編集長のパートとトム・クルーズをパロったとしか思えないトビーの悪ふざけぶりだけだったぞ!サム!

 何も考えずに観るにはちょっと長い気がしますねえ、139分は。
 「復讐」というキーワードをもっと生かした脚本にもして欲しかった。途中、ピーターとハリーの「復讐」に対する価値観の相違を匂わせているだけになんとも勿体無かったと思います。
 パート2が面白かっただけにちょっと残念。「4」はあるんでしょうか?

 
それにしてもサム、あの黒い物体はなんだったの???

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ミック

サム・ライミを見た事はないけれど、
目を丸くしている姿が目に浮かぶ様でおもいっきり、笑っていました。
「うにょうにょ動くその黒い物体」を見てみたくなりました。
サムライミの映画では『XYZマーダーズ』が好きで何度も見ました。
趣味悪いですか(笑)
by ミック (2007-05-08 23:02) 

ken

サム・ライミって「呪怨」をハリウッドでリメイクさせたプロデューサーでもあって
親日派なんですよね、彼は。
でも僕はツッコミますけど(笑)。nice!ありがとうございます。
by ken (2007-05-09 01:41) 

ミホ

わたしも全く同じ疑問を持ちました(笑)。
あの、“うにょうにょした黒い物体”はナンなんでしょうね。
確か、大学の先生が途中まで研究していたような・・・。
全てがしり切れトンボ(死語?)で、最後はちょっと疲れました(笑)。
by ミホ (2007-05-09 07:41) 

ken

先生が「あれは…!」と確か言いかけていたような気がします!
尻切れトンボは死語ですねえ(笑)。
nice!ありがとうございます。
by ken (2007-05-09 10:03) 

クリス

やっぱり詰め込みすぎてますよね(苦笑)もっとシンプルな脚本を書いてくれれば、CG満載の映像も楽しめたのに。
トビーが主役じゃなかったら、眠りに落ちてたかもしれません・・・。
by クリス (2007-06-18 23:05) 

hanashinobu

こんばんは。早速来てしまいましたが、「スパイダーマン3」のレビューより『旧来の劇場経営者たちにとって2500万円を超える投資は、まさにギャンブル』という所に納得してしまいました。実は7月に地元でシネコンできるはずがおジャンになってしまっていたので・・・・・・そういう事情もあったのかなぁとか。

しかし、同じ所にナゾを感じてました。ほんとにあの黒い物体はなんだったんでしょうね?
by hanashinobu (2007-06-18 23:30) 

ken

>蟻銀さん
 ほんとトビーじゃなく別の役者だったら、
 このシリーズはどうなっていたんでしょうね???

>hanashinobuさん
 あの黒いスライムだけはまったく意味不明でしたねえ。
 思い出してもちょっと腹が立つ(笑)。
 シネコンは…ざんねんでしたね。
by ken (2007-06-19 01:08) 

hash

CG満載しすぎの映画でしたね。
おっしゃるようにCGアニメで作ればいいのにと思いました。
by hash (2007-11-10 01:20) 

ken

スパイダーマンなんて、ほとんどがCGでしたもんね。
スーパーマン・リターンズもそうだったけど。
nice!ありがとうございます。
by ken (2007-11-10 03:10) 

satoco

もう数億ドル予算を減らしたところで映画の出来にたいして影響はなさそうな気がするんですが...その数億でどれだけのことができるかと思うと...映画ってそこまでお金をかけて作るもんなのか?という疑問がわいてきます。
by satoco (2009-06-01 02:34) 

ken

ハリウッドは金の感覚が完全にマヒしてますね。
そんなことで良いわけがありません。なんとかしなきゃ。
nice!ありがとうございます。
by ken (2009-06-04 00:10) 

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