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ツォツィ [2007年 レビュー]

ツォツィ」(2005年・南アフリカ/イギリス) 監督・脚本:ギャヴィン・フッド

 4月5日の読売朝刊社会面に興味深い記事があった。
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『R-15なぜ?』
 この映画は、南アフリカのスラム街が舞台。窃盗や暴力行為を重ねて生きてきた少年が、強奪した車の中で見つけた乳児との出会いをきっかけに、命の大切さや罪の意識に目覚め、生きる希望を見いだすまでを描く。「ツォツィ」とは「不良」を意味する現地の言葉。アフリカ映画としては初めてアカデミー賞外国語映画賞を受賞した感動作。しかし、主人公や仲間の少年が、電車の中で乗客を襲って殺人に及ぶ場面や、乳児誘拐の場面などがあったことから、「未成年者が銃やアイスピックを使って殺傷するシーンが刺激的。こうした行動パターンと、実際の描写がふさわしくない」として、「R-15」指定を受けた。
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 というわけで「ツォツィ」を観る。
 問題の(アイスピックを使って殺傷する)シーンについては、「事前に話を聞いていて、身構えて観ていたからこそ耐えられる」レベルだったと思う。
 仮に僕が中学生で、何の情報も持たず、唐突にあのシーンを観たら、きっとショックを受けただろう。それは描写の問題ではなく、「金を稼ぐために公衆の面前で人を殺す」という行為が、日本の15歳未満の子供が持ち合わせる「常識の範疇」を超えていると思うからだ。だから僕個人は「R-15」が妥当だと思う。
 日本のレーティングは現在、【一般】【PG-12】【R-15】【R-18】の4区分に分かれている。
 「ツォツィ」の配給元である日活は「PG-
12」が適当ではないかと主張しているのだが、実はこの「PG-12」は“有名無実の区分”とも言われていて、「映倫規定そのものに問題がある」と指摘する映画関係者も少なくない。
 映倫はPG-12をこう定めている。
 「12歳未満(小学生以下)の方の観覧には適していない部分があります。なるべく親、または保護者が同伴してください」
 ここで問題なのは「なるべく」という文言である。これを逆手に取れば、「最悪は誰も同伴しなくて良い」ということである。そもそも映倫規定には法的強制力が無い。その中にあってPG-12は最もあやふやな区分になっているのだ。
 【PG-12】は事実上【一般】と変わらない。だから【R-15】にしない限り小学生以下の子供も「ツォツィ」を観ることになってしまう。
 映倫のジャッジはこういう理由だったのだろう。

 ちなみに「ツォツィ」のレーティング、諸外国は次のようになっている。
 アメリカ「R」:17歳未満は保護者同伴。カナダ「14A」:14歳未満は保護者同伴。ポルトガル「M12」:12歳未満は保護者同伴。アルゼンチン「13」:鑑賞は13歳以上。
 この中で僕がいいと思うのはアメリカのレーティングだ。
 この映画を小学生に見せる必要は無いと思う。小学生はまだまだ他に勉強することが沢山ある。吸収すべき情報の優先順位から言うと、南アフリカの現状はまだまだあとでいい。
 見聞を広める年頃の中学生には見せてもいい。そのため映倫規定に【PG-15】を新設し、規定の文言から「なるべく」をカットする。これが最も妥当じゃないだろうか。

 本編自体、日本人にとっては別世界なことだけに、大人でも説明が必要な箇所がいくつかある。
 そういう意味では、子供の疑問に答えられる大人が同伴したほうが、より作品を理解出来るだろう。
 良識ある大人が子供と共に観るべき作品。

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コメント 2

ジジョ

なるほど☆ たしかに小学生にはキツイ内容ですね、、、
そして「なるべく、、」って曖昧な表現が日本的ですね。。
国ごとのレーディングおもしろいです!
勉強になりました(^-^)☆
by ジジョ (2007-04-25 01:02) 

ken

映倫によるとPGは“助言指導”なんだそうです。
そう聞いて「なるべく」という言葉も納得しました。
強制力を持たない映倫規定だからこそ、日本の映画人たちは
のびのびと映画を作ることが出来るんだな、と思いました。
nice!ありがとうございます。
by ken (2007-04-25 01:10) 

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