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シェルブールの雨傘 [2007年 ベスト20]

シェルブールの雨傘」(1963年・フランス) 監督・脚本:ジャック・ドゥミ 音楽:ミシェル・ルグラン

 子供の頃からタイトルは知ってたけど実は観てなかった映画シリーーーズ!です。
 ちなみに前回は「死刑台のエレベーター」でした。

 僕が生まれた年に製作された映画を44年後に観て一番驚かされたのは、この作品がミュージカルだったことです。しかもただの一言も「素」で喋るセリフがありません。劇中すべてのセリフが歌(!)。郵便屋さんが「ゆうび~ん」というただ一言のセリフも歌
なんです(笑)。これに慣れるまでには若干時間がかかりましたが、本編スタートから30分後にはあの有名なテーマ曲が流れてきて、僕は一気にのめり込みました。あまりにもせつなくメロウな旋律は観る者の心に染み渡り、ただの恋愛ドラマを劇的なものに仕立てるのです。

 肝心のストーリーですが、恋人同士の2人、傘屋の娘ジュヌヴィエーブ(カトリーヌ・ドヌーブ)と自動車修理工のギイ(ニーノ・カステルヌオーヴォ)が戦争のために離れ離れになってしまう、という内容で、これが「旅立ち」「不在」「帰還」と題した3部構成で描かれます。
 このサブタイトルからも想像できるように、本作は戦争によって引き裂かれた恋愛ドラマの典型とも言うべき展開になるわけですが、容易に想像がつく流れでありながら、そのラストシーンはあまりに美しく、そしてせつなく、非情な恋愛の現実を見事に描いていて、僕は猛烈に感動をしました。
 まさに映画史に残る名場面。

 いや~それにしてもカトリーヌ・ドヌーブが美しいです。反則なくらい。僕たちは今の彼女を知っているわけですから、「そうかあ。この娘があんな風になあ…」と考えて、ちょっと覚めてしまうことが無いでもないんですが(笑)、その邪念もいずれは振り払える見事な美しさです。
 プロダクションデザインや衣裳のカラー配分も素晴らしく綺麗で、カラー映画の特性を全面に押し出そうとしたジャック・ドゥミのセンスが随所に見られます。これはフランス映画ならではと言っていいのかも知れません。
 しかし、この映画で最も優れているところは、重要な登場人物の1人であるマドレーヌ(エレン・ファルナー)が実に魅力的なキャラクターであることでしょう。カトリーヌ・ドヌーブとはまたひと味違った美しい女優さんで、このキャスティングが確実に本作の完成度を高めていると思います。

 古い名作映画を今観ると、新しい発見がいくつもあります。そして「この映画の影響を受けて、あの映画のあのカットは作られたんだな」と気がつくのも楽しい。
 本作の冒頭、雨の降る石畳を俯瞰で撮ったクレジットショットは、いろんな監督たちにパクられた影響を与えたんですね。
 映画ファンは必見の名作です。


シェルブールの雨傘

シェルブールの雨傘

  • 出版社/メーカー: ソニー・ピクチャーズエンタテインメント
  • 発売日: 1998/12/24
  • メディア: DVD

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コメント 11

ミック

実は最後まで見ていません!
以前、「カトリーヌ・ドヌーブがかっこいい女性だな」と、思ってDVDを借りて
きたのに、最初の10分でギブしてしまいました。
友人に「10分でギブした。」と、言ったら
「もったいない、いい映画なのに・・・」と、言われた事があります(へへ;)
だめですネ~、ちゃんと最後まで見ないと!
by ミック (2007-03-26 18:55) 

mouse1948

kenさん、こんばんわ。
映画、好きです。
「シェルブールの雨傘」で思い出すのは、学生時代のサークル仲間で、この映画に魅せられ、10回も観た、という男がいます。
by mouse1948 (2007-03-26 19:07) 

名作中の名作ですよね。ホントにドヌーブが美しくってため息が出ます。
良いミュージカル作品って終わった後に必ずと言って良いほど
鼻歌を歌ってしまうのは私だけではないと思うのですが
観終わって数ヶ月は、雨が降ると勝手に口ずさんでしまうくらい
世界に没頭しましたw

ラストシーンは悲しく、美しく、胸が締め付けられる素晴らしいシーンですよね。何度観ても涙が出ます!
by (2007-03-26 22:30) 

coco030705

こんばんは。
とても有名な映画ですね。私はテレビで見たのですが、すごく前の話で
内容をまったく覚えていません。でも、色とりどりのかさを持って踊るシーンはよく覚えています。この映画では、カトリーヌ・ドヌーブのお姉さんが共演しているんですよね。この方は不幸にして交通事故で亡くなったとか。
ぜひ、もう一度きちんと見直したい作品です。
by coco030705 (2007-03-27 00:47) 

ken

>ミックさん
 10分って、ちょうどギブしたくなる頃ですね(笑)。
 でもぜひぜひリトライして最後まで観てください。
 きっと「観てよかった!」と思えるはずですから。
 nice!ありがとうございます。

>mouse1948さん
 10回も観た人は何に魅せられたのでしょうね。気になります(笑)。
 nice!ありがとうございます。

>AnneMarieさん
 僕は中学生の頃にこの映画のテーマ曲を聴いて、その頃から鼻歌で
 歌っていた記憶があります。映画も観てないのに(笑)。
 ラストは確実に胸キュン(死語。しかも使い方まで違う)ですねえ。
 nice!ありがとうございます。

>coco030705さん
 えー、カトリーヌのお姉さん?誰のことだろう???
 ぜひもう一度ご覧になって教えてください!
 nice!ありがとうございます。
by ken (2007-03-27 01:56) 

coco030705

kenさんへ
ドヌーブの実姉は、フランソワーズ・ドルレアックといって、
モデルから女優になった人です。でも1967年、カンヌで自動車事故に
より25才の若さで亡くなりました。YAHOO映画→人名検索で出てきます。
残念ながら、私もこの人の映画は見たことがないんですが、写真は見たことがあります。妹に負けず劣らずの美人でしたよ。
by coco030705 (2007-03-27 17:26) 

ken

情報ありがとうございます。
姉妹で共演した「ロシュフォールの恋人たち」という映画があるそうですね。
機会があればぜひ観てみたいと思います。
ありがとうございました!
by ken (2007-03-27 18:05) 

coco030705

姉妹共演は「ロシュフォールの恋人たち」のほうでしたね。間違ってました。すみません。<m(_)m>
この映画も未見ですが、いつか見てみたいと思います。
by coco030705 (2007-03-27 22:22) 

ken

そうですね。僕も観てみたいです(超亀レス。何言ってんだかw)
by ken (2009-02-17 18:12) 

てくてく

こんばんは~^^
ラストシーンの“胸締め付けられ度”はかなり高かった。
そこにあの音楽が加われば、鬼に金棒!?^^

マドレーヌは考えてみたらいい女ですよね。
全てを承知の上で、ギイ一筋。
静かだけど、内には熱いものを秘めた人って感じかな^^
by てくてく (2009-08-11 01:20) 

ken

ラストシーンにあの音楽は「鉄板」でしたね.
今となってはマドレーヌがどんな顔していたか、思い出そうとしても
カトリーヌが邪魔して思い出せませんw もう一度観てみようかな。
nice!ありがとうございます。
by ken (2009-08-11 02:12) 

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