ブラッド・ダイヤモンド

「ブラッド・ダイヤモンド」（2006年・アメリカ）　監督：エドワード・ズウィック

　まず一言。作品の完成度の高さに絶句しました。
　「感動のあまり声も出ない」という経験も初めてでしたが、なにより社会派のテーマをここまでエンタテイメントに昇華させた作品を僕は他に知りません。

　主演がディカプリオだけに思い返すは今年のアカデミー賞。
　「ディパーテッド」なんてクソみたいな映画に作品賞をやるくらいなら、この「ブラッド・ダイヤモンド」にやれ！と僕は言いたい。「ディパーテッド」の100倍面白いし、100倍価値がある。じゃあどうしてノミネートすらされなかったのかと言えば、その理由は観れば分かります。セレブリティ揃いのアカデミー会員にとってはきっと耳の痛いハナシだったのでしょう。
　
　これは紛争に資金を提供する目的で不法に取引される“紛争ダイヤモンド”にまつわる物語。
　ここ数年アフリカを題材にした映画が数多く作られているけれど、観客も事件の当事者である可能性が高いという点では「ホテル・ルワンダ」よりも激しく心を揺さぶられます。
　「自分が手にしたあのダイヤモンドは、一体どこで産出されたものなのか？」
　劇中そんなことを思ったが最後、一瞬たりともスクリーンから目を離せなくなるでしょう。本作はそれくらいのタブーに触れています。少なくとも2002年までは確実にあった「悪魔の取り引き」。描かれているのはその一例に過ぎないけれど。

　扱うテーマがどんなによくても、作品のクオリティが低くては伝わるものも伝わりません。
　本作が優れている点は、開始からブラックアウトするまでの2時間23分、緊張感の緩むところがただの一箇所もないところです。脚本の観点で言うと、事件の内容、発生のタイミング、収束のさせ方など、そのどれもが実に見事で、仮にケチをつけるならどんな事件に遭遇しても主要登場人物が死なないことくらい（笑）。
　主人公を3人にし、「隠す男」「狙う男」「暴く女」の三竦みにしたアイディアも秀逸。
　レオ。
　「ラストキング・オブ・スコットランド」を観ていないので何とも言えないけれど、それでも本作のディカプリオはアカデミー主演男優賞に匹敵する素晴らしい仕事をしたと思う。これまでのキャリアの最高傑作。
　フンスー。
　「彼は実際の事件に関わったホンモノの当事者」と言われても僕は絶対に疑わない。その存在は「リアリティー」ではなく「リアル」。「ホテル・ルワンダ」のドン・チードルを超越しています。
　ジェニファー・コネリー。
　場違いなセックスアピールもなければ、映画としての魅力を損なうわけでもない。この絶妙なバランス感覚が感動的かつ魅力的。

　「ナニミル？」を始めて2年と1ヶ月になります。
　現在までに掲載している映画レビューは629本ありますが、630本目となる「ブラッド・ダイヤモンド」は間違いなくこの中の1位です。
　この作品が公開されるGW時期、もし仮に「1本しか映画を観られない」ってことになったら、僕は「バベル」よりも「ブラッド・ダイヤモンド」を強く勧めます。この映画だけはゼッタイに観て損はありません。

　最後に。
　世界中のメディアがこの映画をどう評価したのか、参考までにリライトしておきましょう。

　世界の見方が変わる。　　　 ロサンゼルス・タイムス
　最高に楽しめる！ディカプリオは非の打ちどころがなく、フンスーの演技は感動を呼び、コネリーはキャリア最高の演技。　　 　 マキシム
　すばらしい、すばらしい、すばらしい。　　　　 グッドモーニング・アメリカ
　ディカプリオのワイルドさが満開。　　　　 ニューズウィーク
　ゾクゾクするほどの傑作。　　　 　 ニューヨーク・マガジン
　エドワード・ズウィックの最高傑作。　　　　 ニューヨーカー
　厳しい現実をえぐったエンターテイメント作品。ディカプリオ熱演！そして、演技という概念を超越したフンスーの演技。　　　　 プレミア

　1度でも「ダイヤ」と名の付く物に触れたことのある総ての人が観るべき衝撃の問題作。この10年で最高のハリウッド映画。　　　　 ナニミル？

 

ブラッド・ダイヤモンド [DVD]

• 出版社/メーカー: ワーナー・ホーム・ビデオ
• メディア: DVD

コメント 36

4月7日が楽しみ～♪
by ミック (2007-03-21 05:05) 

観なくっちゃ・・・
by (2007-03-21 08:22) 

ココまでｋｅｎさんが絶賛する作品とは・・・・
気になって仕方ありません
by 魚河岸おじさん (2007-03-21 08:50) 

kenさん、おはようございます。
「ブラッド・ダイヤモンド」ですね、
必ず観ます！φ(..)

ところで昨晩、「デスノート」後編を観て、これで全２巻を観終わりました。
★５満点として、４、これが私の評価です。
発想がいいですね、なかなか良い映画でした。
最近の邦画はコミックを原作として作られた映画がが多いですね。
しかもいずれも素晴らしい出来です。
「ALWAYS 三丁目の夕日」、「ナナ」等が記憶に新たしいです。
コミック以外でも「明日の記憶」、「博士の好きな数式」等良い映画があるますね。
邦画の興行収入が伸びているそうでなによりです。

洋画では「トンマッコルへようこそ」が良かったです。
★４.５です。

最近は映画館から足が遠くなり、レンタルショップの常連となりました。
by mouse1948 (2007-03-21 10:11) 

>ミックさん
　待ち遠しいですねえ。僕ももう一度観に行きます！
　nice！ありがとうございます。

>脳外科医さん
　ぜひ観てください！nice！ありがとうございます。

>魚河岸おじさん
　魚河岸おじさんは「バベル」も観てくださいね（笑）。
　nice！ありがとうございます。

>mouse1948さん
　「デスノート」は全然観る予定に入れてなかったんですが、
　ちょっと検討します（笑）。
　「トンマッコル」は観る予定。でもいつになるやら…。
　nice！ありがとうございます。
by ken (2007-03-21 14:41) 

こんばんは。
この作品には本当に衝撃を受けました。
ここまでハードだとは思っていなくて心の準備をしていなかったので
銃撃シーンでは椅子から転げ落ちそうになりました（笑）
でも、本当に観て良かったです。
ディカプリオは本当に良い演技でしたね。拍手をあげたいと思いました☆
by non_0101 (2007-03-21 19:28) 

「ナニミル？」主演男優賞をあげたいと思います（笑）。
nice！ありがとうございます。
by ken (2007-03-21 21:19) 

こんばんは。
「ディパーテッド」を見に行ったとき、この映画の予告編を見て、
おもしろそう！と思いました。kenさんの記事を読んで、それが確信にかわりつつあります。ぜひゴールデン・ウィーク前に見たいですね。」
by coco030705 (2007-03-21 22:28) 

ぜひ観に行ってレオを褒めてやってください。ちょっとデブだけど（笑）。
nice！ありがとうございます。
by ken (2007-03-22 00:41) 

ｋｅｎさんの分析、凄い！
脚本は文句のつけようが無いですね。
ただ、レオ様、マッチョ過ぎ（笑）
by 江戸うっどスキー (2007-03-24 03:32) 

この映画を観たら、レオが負けた「ラストキング・オブ・スコットランド」に
俄然興味がわきました！観に行かなきゃ。
nice！ありがとうございます。
by ken (2007-03-24 11:27) 

こんばんは。

　コメント＆ｎｉｃｅ！有難うございます。
また遊びに来させていただきます。
by NOLITA (2007-04-02 21:54) 

NOLITAさん、ぜひお越しくださいませ。
nice！ありがとうございます。
by ken (2007-04-03 01:29) 

おぉ！大絶賛ですね☆
「ディカプリオかぁ〜、、」と思いつつ観たのですが、
ほんと、この映画は観てよかったです。
賞を取らなかった理由もなるほど☆納得、、、
by ジジョ (2007-04-09 01:45) 

この映画が訴えている問題については、仕事で追ってみようと思いました。
人を動かす力が映画にはあるんですよね。
nice！ありがとうございます。
by ken (2007-04-09 11:20) 

　とうとう観てきました。今帰った所です。この作品は感動でした。私もこれからレオ様と呼ばせていただこうと思いました。すごい迫力で私も、最初から最後まで目が離せませんでした。人が死んでいく作品は、本当に辛くて最初のシーンは、目を被うほどショッキングでしたが、映画でこんなに胸が熱くなったのは、久々です。映画っていいですね、土曜に観た、大帝の剣は、情けなかった。これも原作負けでした。大好きな獏さんの作品だったのになと、残念です。いつか、kenさんの辛らつな批評楽しみにしてます。
　このブラッドダイヤモンドを観て、また映画大好きになりました。
by eklady (2007-04-10 00:31) 

そうですね。僕もこの作品を観て、ますます映画を好きになった気がします。
「大帝の剣」はまず観ないと思います（笑）。
ご期待に応えられなくてスイマセン！
by ken (2007-04-10 01:47) 

紛争ダイヤモンドって、これから購入しようとする日本人の市場にも 現存
するのですか？！気を付け…させなくっちゃ～！（←(ーー;) 誰に ?! ）
by 流星☆彡 (2007-04-20 06:35) 

ダイヤモンド業界はこの映画によって「不買運動」が起こるのを恐れて
現在では市場に出回る紛争ダイヤモンドは1％程度、と発言していますが
たった1％のダイヤでも何人もの人が犠牲になっているんです。
我々日本人はそういう事実を知り、ダイヤを買わなければいけませんね。
nice！ありがとうございます。
by ken (2007-04-20 13:28) 

あれ？私、コメント入れるの忘れてました（苦笑）
今作は、主題の観客への投げ方が、とてもストレートだった分パンチは強かったんですが、強さが抑えられていた為にしつこくなく、そのさじ加減が絶妙でした。１％しか紛争ダイヤモンドはないんだよーなんて平気な顔していってるダイヤモンド業界人が、芯から恐ろしく思います。
by クリス (2007-04-28 00:12) 

さじ加減、めりはり、バランス感覚…。
いろんな言い方はありますが、どれも素晴らしかったと思います！
この題材の取材したいなあ。　nice！ありがとうございます。
by ken (2007-04-28 00:52) 

ごぶさたしております。
kenさんのレビューを拝見して、これは絶対観なきゃいかん！
と思って、やっと観てきました。
これほどまでに濃密で（不謹慎だけど）見ごたえのある作品は
本当に稀だと思います。
終わってからしばらく、席を立てませんでした……。
すばらしい映画を教えてくださって感謝、感謝です。
記事を書いたので、TBさせてください。
by lucksun (2007-04-29 01:32) 

lucksunさん、お久しぶりです。
レビューを読んで観に行って頂けたなんて最高の褒め言葉＆nice！
ありがとうございます。
by ken (2007-04-29 03:20) 

はじめまして！先日は私のブログに訪問していただきありがとうございました。　「ブラッドダイヤモンド」は、とにかく衝撃的でした。　上段の席で観ていたのですが、銃撃戦のシーンで「頭を低くして！」とディカプリオが言ったセリフで、思わず自分も頭を低くしてしまいました・・・　kenさんはとてもたくさんの作品を観ていらっしゃるようなので、またちょくちょくおじゃまさせていただきたいと思いました。よろしくお願いいたします。
by ちゅうちゃん (2007-04-29 22:32) 

頭を低くしたハナシは笑いました。
でも、それくらい臨場感があったんですよねえ（笑）。
また遊びに来てください！
nice！ありがとうございます。
by ken (2007-04-29 23:48) 

この作品は絶対にアカデミー賞は取りませんね（笑）
社会派の映画なのに、じっとり暗くなく、エンターテイメントに優れていて、
私もここ何年か見た映画の中で、一番良かったです。
＞「隠す男」「狙う男」「暴く女」
かっこいいです！
ＴＢさせて下さいネ＾＾！
by ミック (2007-05-13 01:20) 

昨日、観てきました。なぜ、人間同士なのに殺し合う？というクエスチョンがずっと浮かんでいたのですが、劇中でもその台詞がでてきて、涙がでました。
よくこの映画、完成できたなぁと思います。資金集めとか大変だったのじゃないかしら。
by カオリ (2007-05-13 08:46) 

>ミックさん
　もっともっと評価される映画なんです、これは。
　キンバリー・プロセスのことも、どこかでやりたいな。
　nice！ありがとうございます。

>カオリさん
　デビアス社の圧力はあったと聞きます。
　だから最後のテロップを入れたと。
　完成してからも世界中のダイヤモンド業界が、理論武装をしたそうです。
　nice！ありがとうございます。
by ken (2007-05-13 10:11) 

"「ホテル・ルワンダ」よりも激しく心を揺さぶられます。"私も同感です。衝撃的なのは少年兵士の活動が克明に描かれていたことです。
by ばぁつん (2007-09-18 22:38) 

洗脳された少年兵士の言動は心が痛みましたね。
あんな不幸な子供は見たくありません。
nice！ありがとうございます。
by ken (2007-09-18 22:45) 

kenさんのコメントを読んで、ようやくこの映画観ましたけど、本当に素晴らしいかったです！！
いや〜イイ映画ですね！！
by u_yasu (2008-01-11 00:04) 

ですよねー、ですよねー！（笑）。
1人でも多くの方に観て欲しい映画だったので、ご覧頂けて嬉しいです。
nice！ありがとうございます。
by ken (2008-01-11 00:18) 

遅くなりましたが、観ました。
これは凄い。
この映画を見る前と後では「ダイヤモンド」に対する見方が完全に変わりますね。
特典映像を見ている途中ですが、「子供を捜す親とダイヤを探す男の対比」「子供は宝石」の言葉が印象に残りました。
本当に凄い。この映画を教えていただき、ありがとうございます。
by Sho (2008-01-13 16:58) 

特典映像はあまりに事実が重過ぎて途中で断念したままです。
ちゃんと観なきゃいけませんね。
nice！ありがとうございます。
by ken (2008-01-14 01:38) 

あ～どうしよう；；　観ていません><　観ます！！
by Betty (2009-02-05 11:06) 

それはいけませんねえw
ぜひご覧になってからまたお越しくださいませ。
nice！ありがとうございます。
by ken (2009-02-06 00:48)