僕が9歳だったころ [2007年 ベスト20]
「僕が9歳だったころ」(2004年・韓国) 監督:ユン・イノ 脚本:イ・マニ 原作:ウィ・ギチョル
久しぶりに韓国映画の「当たり」を引きました。
これは電通が仕組んだ「韓流」のヘナチョコ映画とはまったく次元の違う、良質なアジア映画です。本作にはイケメン俳優も美人女優も出来てきませんが、「これを観ずして韓国映画を語る無かれ」と言っておきましょう。だって日本で作れと言っても絶対に作れないタイプの作品だと思うから。
原作は韓国で130万部を売り上げたベストセラー「9歳の人生」。
田舎の小学校に通うヨミンは目の悪い母親にサングラスを買うため、内緒でアルバイトをする心優しい少年。しかし学校では上級生をも黙らせるガキ大将。そんなヨミンのクラスに、ある日アメリカ育ちの美少女ウリムが転校して来る。ヨミンはたちまち心奪われるが、気持ちに反してケンカばかりしてしまう…。
ぶっちゃけ何てことない話です。なのにすごく面白い。特に昭和30年代生まれの世代には心に刺さるものが必ずあると思います。
僕はまず「小学校の1クラスという小世界の中にも様々な人間模様があったなあ」と遠い昔に思いを馳せました。そこには「差別」も「偏見」も「格差」も「暴力」も「嘘」も平然と存在していたけれど、「義理」も「人情」も「思いやり」も「絆」も「男気」もあった。そして時代は今より温かかった。もっと細かく言えば、大人は子供のことをよく見ていたし、子供は大人の言うことをよく聞いた。さて「昔あったものがどうして今はないんだろう?」と思うと、この映画はますます心に染みるのです。
少し具体的なことを。
この作品の見どころはまず子供たちの演技。主演の2人は実は芸歴の長い子役だそうで、その芝居の巧さはまさに大人顔負け。ヨミンを演じたキム・ソクは昔かたぎの実直な少年を、ウリムを演じたイ・セヨンは気の強い美少女を巧く演じていたと思います。
でも僕が一番好きだったのはヨミンの幼なじみのクムボクを演じたナ・アヒョン。韓国の女優で言うとチョン・ドヨンのような雰囲気を持つ彼女は、純粋だからこそ憎まれ口を叩いてしまう微妙な役柄を実に見事に演じていました。
ユーモア感覚を忘れない脚本も見事。おそらく僕たちも一度は通ってきた道だからこそ笑えるポイントが沢山あるのですが、無理やりな事件を作ることなく、さりげない出来事を積み重ねて、観客の記憶をくすぐるテクニックは絶妙。
唯一ウリムが自らのことを話すクライマックスだけは「もう少し別のアプローチがなかったか?」と思ったけれど、そのあとの締め括り方が気持ちよかったので「相殺」って感じでしょうか。
昭和40年代に小学生だった男子は必見の1本。
自分のアルバムを観るような気持ちで、105分間思い出に浸ってください。
僕は9歳のとき、熊本県下益城郡富合町にあった富合小学校に通っていました。そのとき大好きだった田中そお子ちゃんは、いま何をしてるかなあ(笑)。
thanks! 360,000prv
コノ作品ボクもストライクでした
なんでもないのにイイ作品
もう一度見てみようかな
by 魚河岸おじさん (2007-02-23 17:11)
小学校の教室にはいろんなキャラクターがいたんですよね。
映画の中にかつての自分がいるんじゃないかと、思わず探してしまいました(笑)。
by ken (2007-02-24 00:50)
男子だけでなく女子にも良かったです。
ウリム役の子、「チャングムの誓い」のクミョン役の子で興味があってチェックしたのですが、そんな事は関係なく良かったです。
悪人がいない(強いて言えば担任の先生と近所のお父さんくらい)のにちゃんとドラマがあって感動しました。
by noel (2007-02-25 11:06)
本物の悪人がいないだけに、担任の先生の暴力が強烈に映りましたね。
でも、昔はあんな先生がザラにいたんですよねえ。
nice!ありがとうございます。
by ken (2007-02-25 12:17)