ドリームガールズ [2007年 レビュー]
「ドリームガールズ」(2006年・アメリカ) 監督・脚本:ビル・コンドン
1981年に“東海岸(ブロードウェイ)”で生まれたミュージカルが、25年をの時を経て“西海岸(ハリウッド)”へ渡り、「ドリームガールズ」は映画になった。
ゴールデングローブ作品賞(ミュージカル/コメディ部門)を獲りながらアカデミー作品賞にはノミネートされなかった不運の理由と、菊地凛子と助演女優賞を争うジェニファー・ハドソンのパフォーマンスをこの目で確かめるため、公開初日に劇場へ行く。
ミュージカルは最初の10分が勝負だと思う。
オープニングでいかに観客を惹きつけるかが作品の評価を大きく変える。オープニングアクトはミュージカルの命だ。
例えばアカデミー作品賞を獲った「シカゴ」はキャサリン・ゼタ=ジョーンズが。トニー賞史上最多の12部門を受賞した「プロデューサーズ」のリメイクは主演の2人(ネイサン・レイン&マシュー・ブロデリック)が、共にアンサンブルを従え迫力のあるヴォーカルを披露する。あるいは「オペラ座の怪人」は静かなオルゴールの音から一転、突如パイプオルガンが奏でる不協和音が劇場を揺らす。いずれも主役ないしはメインテーマ曲が作品のオープニングを飾るのだ。
ところが「ドリームガールズ」は主要キャストではないエキストラのパフォーマンスで幕を開ける。これはちょっと意外だった。ところが観ているとその理由はあっという間に分かる。オープニングを飾る3組の歌手は、この映画における“ドリーメッツ”の前座扱いなのだ。彼女たちが登場するまでは言わばイントロ。観客はすっかりじらされた格好になり、やがて4組目になってようやく登場するドリーメッツに観客はノックアウトされる、という仕組みだ。
ドリーメッツが登場するとそこから先は見どころ満載。その例をいくつか挙げてみよう。
まず驚くのはエディ・マーフィの歌だ。そのパフォーマンスはあまりに素晴らしく、「もしや吹き替えでは?」と疑ったが、エンドクレジットには確かに“Performed by Eddie Murphy”の文字があった。聞けば80年代に3枚のアルバムをリリースしていたらしく、超一流エンターテイナーの底力を見せ付けられる。
考えてみればコメディ映画以外でエディ・マーフィを観たのも初めてで、時代の波に乗り切れず落ちぶれていくエンターテイナーという役どころを見事に演じていたと思う。特に最後のステージでエディが見せる“男の悲哀”はしばらく目に焼き付いて消えそうにない。
続いては、やはりジェニファー・ハドソンだ。
彼女のパワー溢れる歌唱力にはビヨンセも完敗。しかしこの実力の差がストーリーと密接な関係にあるのだから「ドリームガールズ」は面白い。
ジェニファー・ハドソンの見せ場は大きく3回あって、いずれも感動的なパフォーマンスを披露する。まず、ドリームズからの脱退を余儀なくされたとき。続いて歌手として復活を果たしたとき、そしてエンディング。4人目のドリームズが登場するシーンだ。エンディングの展開は読めなくないが、思わず涙してしまう観客も少なくないだろう。
しかし、こうして観ていると彼女を「助演女優」として扱うのが正しいのかどうか疑問に思う。少なくとも僕の彼女は映画の後で、ジェイミー、ビヨンセ、エディが並んだポスターを見つけて「なんでビヨンセがセンター?」と不思議そうにしていた。
その主演女優、ビヨンセの美しさには目を見張る。
本作のために10キロ減量をしたというのも驚きだが、あらゆるシーンでとにかく美しい。シャロン・デイビスのデザインした衣裳もアカデミー衣裳デザイン賞ノミネートに相応しい出来栄えなのだが、それを着こなせるビヨンセがやっぱり凄い。上映時間の2時間10分、ビヨンセだけを観ていてもいい(笑)。ルックスだけでなく、ジェニファー・ハドソンに負けじと歌うソロの「Listen」も聴き応え充分。解散コンサートの「Hard To Say Goodbye」もいい。
そして、やはりミュージカルの真の主役とも言うべき楽曲の数々が最大の聴きどころだろう。
60年代から70年代にかけてのモータウンサウンド風音楽が僕の世代にはなんとも心地良い。
それにしても、さすがミュージカル発祥の地あって、この手の作品を作らせたらやはりこの国には叶わない。途中エフィーが再起を果たした後でしばらく中だるみするが、作品のクオリティを極端に下げるほどではないだろう。
「That's Enterteiment!」
アカデミー作品賞にノミネートされなかったのは残念だが、「シカゴ」以来の最高のミュージカル映画だと僕は思う。
余談だけど、菊地凛子はジェニファー・ハドソンに勝てないだろうなあ(笑)。
1981年に“東海岸(ブロードウェイ)”で生まれたミュージカルが、25年をの時を経て“西海岸(ハリウッド)”へ渡り、「ドリームガールズ」は映画になった。
ゴールデングローブ作品賞(ミュージカル/コメディ部門)を獲りながらアカデミー作品賞にはノミネートされなかった不運の理由と、菊地凛子と助演女優賞を争うジェニファー・ハドソンのパフォーマンスをこの目で確かめるため、公開初日に劇場へ行く。
ミュージカルは最初の10分が勝負だと思う。
オープニングでいかに観客を惹きつけるかが作品の評価を大きく変える。オープニングアクトはミュージカルの命だ。
例えばアカデミー作品賞を獲った「シカゴ」はキャサリン・ゼタ=ジョーンズが。トニー賞史上最多の12部門を受賞した「プロデューサーズ」のリメイクは主演の2人(ネイサン・レイン&マシュー・ブロデリック)が、共にアンサンブルを従え迫力のあるヴォーカルを披露する。あるいは「オペラ座の怪人」は静かなオルゴールの音から一転、突如パイプオルガンが奏でる不協和音が劇場を揺らす。いずれも主役ないしはメインテーマ曲が作品のオープニングを飾るのだ。
ところが「ドリームガールズ」は主要キャストではないエキストラのパフォーマンスで幕を開ける。これはちょっと意外だった。ところが観ているとその理由はあっという間に分かる。オープニングを飾る3組の歌手は、この映画における“ドリーメッツ”の前座扱いなのだ。彼女たちが登場するまでは言わばイントロ。観客はすっかりじらされた格好になり、やがて4組目になってようやく登場するドリーメッツに観客はノックアウトされる、という仕組みだ。
ドリーメッツが登場するとそこから先は見どころ満載。その例をいくつか挙げてみよう。
まず驚くのはエディ・マーフィの歌だ。そのパフォーマンスはあまりに素晴らしく、「もしや吹き替えでは?」と疑ったが、エンドクレジットには確かに“Performed by Eddie Murphy”の文字があった。聞けば80年代に3枚のアルバムをリリースしていたらしく、超一流エンターテイナーの底力を見せ付けられる。
考えてみればコメディ映画以外でエディ・マーフィを観たのも初めてで、時代の波に乗り切れず落ちぶれていくエンターテイナーという役どころを見事に演じていたと思う。特に最後のステージでエディが見せる“男の悲哀”はしばらく目に焼き付いて消えそうにない。
続いては、やはりジェニファー・ハドソンだ。
彼女のパワー溢れる歌唱力にはビヨンセも完敗。しかしこの実力の差がストーリーと密接な関係にあるのだから「ドリームガールズ」は面白い。
ジェニファー・ハドソンの見せ場は大きく3回あって、いずれも感動的なパフォーマンスを披露する。まず、ドリームズからの脱退を余儀なくされたとき。続いて歌手として復活を果たしたとき、そしてエンディング。4人目のドリームズが登場するシーンだ。エンディングの展開は読めなくないが、思わず涙してしまう観客も少なくないだろう。
しかし、こうして観ていると彼女を「助演女優」として扱うのが正しいのかどうか疑問に思う。少なくとも僕の彼女は映画の後で、ジェイミー、ビヨンセ、エディが並んだポスターを見つけて「なんでビヨンセがセンター?」と不思議そうにしていた。
その主演女優、ビヨンセの美しさには目を見張る。
本作のために10キロ減量をしたというのも驚きだが、あらゆるシーンでとにかく美しい。シャロン・デイビスのデザインした衣裳もアカデミー衣裳デザイン賞ノミネートに相応しい出来栄えなのだが、それを着こなせるビヨンセがやっぱり凄い。上映時間の2時間10分、ビヨンセだけを観ていてもいい(笑)。ルックスだけでなく、ジェニファー・ハドソンに負けじと歌うソロの「Listen」も聴き応え充分。解散コンサートの「Hard To Say Goodbye」もいい。
そして、やはりミュージカルの真の主役とも言うべき楽曲の数々が最大の聴きどころだろう。
60年代から70年代にかけてのモータウンサウンド風音楽が僕の世代にはなんとも心地良い。
それにしても、さすがミュージカル発祥の地あって、この手の作品を作らせたらやはりこの国には叶わない。途中エフィーが再起を果たした後でしばらく中だるみするが、作品のクオリティを極端に下げるほどではないだろう。
「That's Enterteiment!」
アカデミー作品賞にノミネートされなかったのは残念だが、「シカゴ」以来の最高のミュージカル映画だと僕は思う。
余談だけど、菊地凛子はジェニファー・ハドソンに勝てないだろうなあ(笑)。
ドリームガールズ スペシャル・コレクターズ・エディション [DVD]
- 出版社/メーカー: パラマウント ホーム エンタテインメント ジャパン
- メディア: DVD
これすごくカッコ良さそうですよね、みたいみたい!
ちょうどこちらでもかかっているんで、是非行く。
結構評価が分かれてたんでどうしようか悩んでたんだけど、背中押されました〜。
by snorita (2007-02-19 06:58)
評価が分かれる理由が分かりません(笑)。
ぜひ観に行ってきて下さいっ!
by ken (2007-02-19 14:36)
こんばんは。
すばらしい歌の数々に圧倒されました!
特にジェニファー・ハドソンは圧巻ですね。
あの歌に振り向かない男なんてダメでしょうと思えてしまいました(笑)
> 菊地凛子はジェニファー・ハドソンに勝てないだろうなあ
あの迫力には負けちゃうかもしれませんね。
by non_0101 (2007-02-21 00:27)
そう言えば、この映画でものすごく不思議だったのは、
カーティス(ジェイミー・フォックス)は、メチャクチャ可愛いディーナ(ビヨンセ)
がいるのに、どうしてエフィー(ジェニファー・ハドソン)とデキちゃうのか?
ってことでした(笑)。
「もしかしてデブ専?」とも思いましたが、結局ディーナとデキちゃうし。
ここだけが唯一リアリティを欠いてましたねえ(笑)。
nice!ありがとうございます。サントラもいいですよ^^
by ken (2007-02-21 00:40)
こんばんは。はじめまして。
(niceありがとうございましたー!)
ビヨンセのあのスタイルには驚愕しました。
10kg減量とのことですが、出るところは出てるしスゴイです。。。
サントラはダンナが買ってきました。
これから聞いて反芻しようと思います。
他の記事もあれこれ読ませていただきます!
by YORI (2007-02-22 00:15)
YORIさん、ようこそ。
やっぱり出るとこ出て、引っ込むとこ引っ込んでる女子は
セクスゥイ~ですね(笑)。
サントラ、すでにヘビロテになってます。
nice!ありがとうございます。
by ken (2007-02-22 01:28)
こんばんは。
ビヨンセ本当にきれいでした!今まで知りませんでした(笑)。
これは観るとサントラが欲しくなりますよね。
でも、まだ購入検討中ですけど^^;
by (2007-02-22 22:44)
こんばんは!
ビヨンセの変わりようを観るだけでもお金だす価値あるかも(笑)
私はしっかりとジェニファー・ハドソンの歌で泣かされましたぁ。
kenさんが仰るとおり、見終わった後だとあのポスターには違和感感じますよね。
サントラ、購入しました!恐らく土曜日に到着予定。
そしてその日に2回目を見る予定です(苦笑)
by sicca (2007-02-23 00:23)
>ERUNさん
だからどうしてディーナじゃなくて、エフィーとデキちゃったのかが
よく分からないんですよねえ(笑)。サントラ、買いです。
>siccaさん
ラスト4人での歌は泣きました(笑)。
僕ももう一度劇場で観てもいいな。 nice!ありがとうございます。
by ken (2007-02-23 01:08)
本日見てきました
ビヨンセの美しさとジェニファー・ハドソンのパフォーマンスにシビレ
男の情けなさを満喫してきました
by 魚河岸おじさん (2007-02-28 16:16)
この映画の男はホントに情けなかったですねえ(笑)。
by ken (2007-02-28 23:39)
今日見ました。そんなに凄いのか?ジェニファー・ハドソン・・と思っていたら凄い!!!!
kenさんがずっと不思議がっておられる(笑)「何故にカーティスはエフィと?」
の理由は「魔がさした」ってやつじゃないでしょうか(笑)
by Sho (2007-03-04 23:58)
「魔がさした」って言葉は使い勝手のある言葉ですねえ(笑)。
ためになるご意見とnice!ありがとうございました。
by ken (2007-03-05 01:44)
今日、ドリームガールズ見てきました。
もう、感動!
映画館で見て良かったと思わせる迫力のある映画でした。
ジェニファー・ハドソンはすごい存在感。
エディーマーフィーは復活したみたいで、うれしかったデス!
家に帰ってきたら、amazonでDVD付きのサントラ買っていました♪
by ミック (2007-03-07 23:52)
エディ・マーフィはアカデミー助演男優賞を獲れなくて
式の途中で帰宅しちゃったそうです。残念でしたねえ。
nice!ありがとうございます。
by ken (2007-03-08 01:28)
やっと、観てきました。最後に拍手をしてしまそうになりました。よかったです。衣装も、曲も、ストーリーも、文句なくniceですね。ミュージカルはオペラ座の怪人しか見てない私ですが、サントラ購入したくなりました。なったって昔のディスコで踊った懐かしい曲があったりして、他にもいい曲ありましたものねェ。日本もそう思ったのですが、助演女優が主役を喰っているように感じました。
by eklady (2007-03-09 07:47)
ビヨンセは完全に割を食っちゃいましたねえ。
このミュージカル、舞台版も観たいと思います。
来日しないかしら?
by ken (2007-03-09 13:55)
やっと見ました。私がいいと思ったポイントがほぼ同じだったのでうれしかったです。もうひとつ、主役にしてヒールのジェイミー・フォックスも堂々と憎々しくてよかったです。
エンドロールで一通り他の出演者が出た後、and introduce と表示されてからジェニファー・ハドソンが出たのが印象的でした。
by satoco (2009-04-27 02:56)
追記です。カーティスがエフィとできたのはエフィを操るために決まってるじゃないですか~。おだてて機嫌とってるのがエスカレートして関係をもってやらないということを聞かなくなっちゃったんですよ。
by satoco (2009-04-27 02:58)
and introduce とはこれまた粋な紹介の仕方でしたね。
まったく気付きませんでした。
それにしても、「関係を持ったうえで操る」とは、僕の人生訓にはまったくなくて
気付きませんでした(爆)。nice!ありがとうございます。
by ken (2009-04-28 02:44)