ココシリ [2007年 レビュー]
「ココシリ」(2004年・中国/香港) 監督・脚本:ルー・チューアン
「ココシリ」とはチベット語で「青い山々」、モンゴル語で「美しい娘」という意味で、チベット高原の海抜4700メートルに位置する広大な無人地帯を指しています。
そしてこの映画は20世紀末のココシリに実在した、チベットカモシカの密猟団と闘う民間パトロール隊の壮絶な活動を描いた作品です。
久しぶりに「男」の映画を観ました。
「義を見てせざるは勇無きなり」という言葉がありますが、これはまさに「義」に生きる男たちの物語。なにより僕は「動物を守るためだけに自分の命を賭けて闘う」という男たちの信念に愕然としました。と同時にその「想い」がどこから来ているのかが知りたかったのですが、残念ながらその辺りは説明不足。
また、民間パトロール隊主要メンバーのキャラクターがまったく立っていないのも惜しい。
ナレーションでもテロップでもいいから隊員のプロフィールを簡単に挿入するだけで、印象はガラリと変わったと思います。本編はわずか88分ですから、あと15分足しても誰も文句を言わなかっただろうに。
けれど、この作品は映画のクオリティ云々を言う前に、かつてココシリにはこういう男たちがいたのだという事実を世界的に知らしめる意味だけで、評価していい作品だと思います。なぜなら、この作品はドラマとしてではなく、ドキュメンタリーとして作られていても絶賛されただろうテーマだから。やはり「事実」の重みに勝るものはありません。
息を呑む“美しさ”と“恐ろしさ”を併せ持つココシリの自然と予想だにしなかったエンディング。
本物だけが持つパワーの凄まじさを久しぶりに味わいました。
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