ニライカナイからの手紙 [2006年 レビュー]
「ニライカナイからの手紙」(2005年・日本) 監督・脚本:熊澤尚人 主演:蒼井優
ここ数年、沖縄を舞台にした映画いくつも作られているが、これらの映画は簡単に言うと2つに分けられる。
それは「沖縄でなければ撮れない話」と「沖縄でなくても撮れる話」の2つだ。
例えば「ひめゆりの塔」「ウンタマギルー」「ナビィの恋」などは前者で、「ソナチネ」「深呼吸の必要」「イツカ波ノ彼方ニ」は後者に当たる。
「ニライカナイからの手紙」も後者にあたる作品で、ここでは竹富島が舞台になっているが、実際には瀬戸内だろうが伊豆諸島だろうがドラマとしてはどこでも成立するストーリーだった。
僕はこの映画を面白いと思わない。
なぜなら、この映画は沖縄の人と風土をまったく描けていないからだ。
確かに“ニライカナイ”とは沖縄地方に伝わる伝承である。その内容についてはネタバレに繋がりかねないので記述は避けるが、しかし熊澤監督は単に“ニライカナイ”を利用しただけだった。
僕個人は沖縄を舞台にした映画には他の邦画とは違う、ある期待を寄せてしまうだけに、「お願いだから他所でやってくれ!」と激しく思った。
この映画を面白くないと思うもうひとつの理由は、あまりにも“小さな嘘”が多過ぎたことだ。
例えば竹富島出身の20歳の女の子がやんごとなき理由により東京の“井の頭公園”から実家へ帰ろうとする。時刻は午前10時過ぎだ。
井の頭公園から竹富島までの最短ルートは日本トランスオーシャンの石垣島直行便に乗ることだが、直行便は1日1便。しかも午前6時30分発である。となると、羽田→石垣島→石垣港→竹富島となるのだが、仮に2006年8月15日で計算するとこういう経路になる。ちなみに井の頭公園で30分は時間を費やしたと計算すると、
【井の頭公園10:31→久我山10:36→渋谷10:56→品川11:13→京急蒲田11:23→羽田空港11:33→羽田発JAL1923便12:40→石垣空港着15:10→(タクシー移動)→石垣港着17:20→八重山観光フェリー17:30発→竹富島17:45着】
もちろんこれは順調に行ったらのハナシで、17:30に石垣港を出るフェリーは実は最終便だし、仮に電車が時間調整したり、飛行機の離発着に遅れが出たり、空港でタクシーが拾えなかったりしたら、家にたどり着くのは確実に翌日。しかもこの7時間14分もかかる行程が映画の中ではたったの3カットで済まされ、20歳の女の子は夕方の竹富島を疾走しているのだ。
こういう事実関係のみならず、俳優への演技指導やセリフにも非現実が多数見受けられて、決して悪くない蒼井優の芝居までもが「嘘」に見えてしまうのだからなんとももったいない話だと思う。
一種の謎解きとも言えなくないストーリーは、2003年秋に日本でもヒットしたある映画がヒントになっていると思います。仮に監督が否定したとしても僕は勝手にそう思う。
ある映画、とは秘密ですが、どうしても知りたい人はコチラをクリックして下さい。ただし完全にネタバレしてしまうと思います(笑)。
沖縄映画と期待して観なければ、まずまずかと。
キタ━━━━(゚∀゚)━━━━!!
あ、やっぱりと膝をうちまくりでしたよ。そういやミッチェルも同じように↓
http://blog.so-net.ne.jp/warabaa/2006-08-12
この東京→竹島間のタイムテーブルを検討してましたが、
どう考えてもアウトですね。また、あらゆる物語展開上のエクスキューズとして「オキナワのヒトは純朴です」という一点突破で全面展開しようとしているから破綻しちゃうんですよね。沖縄というものを製作者側がいかに理解してないかがよくわかります。この設定で泣けという方が無理なんですが実は最後の南果歩の演技で泣いてしまったり。チキショウ悔しいぜ。平良進とかいい役者いっぱいだしているのにな…。その他唐突にでてくるゆうパックといい、郵政公社はこの映画を通してなにを訴えたかったのかと勘ぐってしまいました。
蒼井優が能面的だ、と書いたんですがよく考えたら慣れない沖縄方言のためにそうなっていたような気がします。あれは沖縄音階に接してないとものすごく難しいとおもうので、ちょっとカワイソウナ気がしました。
この間沖縄物産展に行った際、「涙そうそう」という映画の宣伝をやってました。このテツをふまなきゃいいけど。心配です。
by 瑠璃子 (2006-08-14 18:14)
ミッチェル氏の分析を読んで思い出しましたが、井の頭公園-羽田間に
「渋谷一局」がはさまってましたっけ?(笑)だとしたらますます無理っすね~。
「涙そうそう」もちょっとコワイですぅ。
nice!ありがとうございます。
by ken (2006-08-14 21:38)