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鉄道員 [2006年 レビュー]

鉄道員」(1956年・イタリア) 監督・脚本:ピエトロ・ジェルミ 脚本:アルフレード・ジャンネッティ

 
実は初見でした。
 タイトルも音楽も評価もずいぶんと耳にしていながら、これまで観なかった理由は「今さら観る理由がない」に尽きます。
 それでも今回観てみようと思ったのは、とあるブログで「あのメロディを聴くだけで思わず泣けるシーン満載だった」という記事を読んだからです。
 僕は内心「ほんまかいな~」と思いつつ、「まあ、いつかは観てもいいか」と思い直してDISCASで予約したら、新作予約の網をスルリとかいくぐってコイツがぺろっと届いちゃったんですね。それで已む無く観ちゃったワケ。DISCASコノヤロー(笑)。
 しかし実際観てみるとなるほど確かに良く出来た映画で、「戦後イタリア庶民の生活を描いた秀作」という売り文句に偽りなしだと思いました。
 ただしそれは、この映画が1956年に製作されたという事実を鑑みて、なんですけどね。
 
 小説も映画もラジオもテレビも、時代が変わればドラマの要素は変わります。
 古い例えで恐縮ですが、脚本家・菊田一夫さんの名作「君の名は」は1952年にNHKのラジオドラマとして放送され大人気を博し(番組の時間になると銭湯の女湯から客が消えたらしい)、その翌年、岸恵子・佐田啓二コンビで制作された映画版も大ヒット。「真知子巻き」なんてブームまで起きました。

 ところがそれから37年後の1991年、NHK連続テレビ小説でリメイクされたテレビドラマ版(鈴木京香主演)は見事に大コケ。当然ですが時代は「君の名は」を求めていなかったのです。

 「君の名は」も「鉄道員」も歴史に名を残すことになった理由は、公開当時はあくまでも“現代劇”であったことと、物語の背景に“敗戦国が抱える悲劇的要素”が含まれていて、それが生々しい時代だったからに他なりません。
 その裏返しになりますが、戦勝国のアメリカでは「鉄道員」の評価は高くありませんでした。
 閑話休題。
 では「鉄道員」が公開された1956年、戦勝国のアメリカではどんな映画が公開されていたか。
 知ると驚きますよ~(笑)。
 まずこの年のアカデミー作品賞を獲ったのが「80日間世界一周」。…ご陽気っ!
 他にはグレース・ケリー最後の映画出演となった「上流社会」。…セレブっ!
 ゴールデングローブ作品賞を獲得したミューカル「王様と私」。…ド派手っ!
 すごいでしょう?
 戦勝国と敗戦国の違いはこういうところにもあったんですね。 


 さて。
 「鉄道員」で描かれているのは普遍不滅のテーマ、家族愛です。
 世界中の誰が観ても、そこはかとない感動を得られると思います。でも僕たちは日本人ですから、あえて言わせてもらいます。
 「鉄道員」を観る前に小津安二郎の映画を観たほうがいい。
 「鉄道員」はあくまで“イタリア映画の傑作”であって、同様の名作が日本にも在るのだと言うことを知って欲しいのです。

鉄道員

鉄道員

  • 出版社/メーカー: ポニーキャニオン
  • 発売日: 2004/10/20
  • メディア: DVD

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コメント 9

wkkii

古きよき家族愛で感動したいなら、小津を観ろ。大賛成です。「早春('56)」や「東京暮色('57)」の頃ですね。どちらもとっても良い映画です。
by wkkii (2006-05-10 21:13) 

ecco

そうか。
映画について記事にするときはこうしていろんなことが
わからなくてはならないのですね。
先日。私の映画の過去記事にコメントがはいっていて
「あなたは映画がおわかりになっていないのでは・・・」とのコメント。
なんだかへこみました^^;
映画の記事ももう書かないかもしれません。
思ったままを思ったようにしかかけないので
またへこみたくないですもん(笑)

kenさんのところは毎回うかがわせていだだきます。
でも私のところに映画の記事がないと
kenさんにはあまり来ていただけないかしら・・・
by ecco (2006-05-10 21:19) 

ken

>wkkiiさん
 小津作品はいつであっても観る価値のある作品が多いかなと思います。
 僕もますます観てみたくなりました。「鉄道員」のおかげです。
 nice!ありがとうございます。

>eccoさん
 映画の記事の書き方なんてなんのルールもありませんよっ!
 eccoさんの記事に「分かってない」なんてコメントをする人こそ、
 何も分かっていないんです。そんなこと書き込むなんて失礼千万!
 僕はeccoさんのブログ毎回チェックしていますよ。
 ただすっかり人気ブログになっているので、コメントするのに気後れしている
 だけです(笑)。これからも楽しませて頂きます。
 映画の記事もどうぞ好き勝手に書き殴って下さい。楽しみにしています(笑)
 nice!ありがとうございます。
by ken (2006-05-11 00:19) 

ecco

kenさん。
ちょっと元気でました。
ありがとう~~^^
by ecco (2006-05-11 20:14) 

ken

eccoさん、良かったです。
ついでですから、もっと元気になってください^^
by ken (2006-05-12 01:41) 

瑠璃子

俺は無言nice!のほうがアレだな。
そんな話はさておき、この鉄道員を私は三百人劇場というところで見ました。あとは道とかMとか。古いのばっかりだなあ。愚痴はいいとして。
重要なキーワードでストがでてきますが、鉄道会社のストとかそういうのについて詳しくないとイマイチ緊迫感がでないかもしれないし、このお父さんの背負う荷の重さが理解できないやもしれません。あとはムッソリーニ政権のあとのイタリアの政治状況とか。
これは同時代に生きていれば、9・11からイラク侵攻へいたるアメリカの国民感情のようにある程度見える(目に入る)ように、あ・うんの呼吸で飲み込めるものがあるとおもうんですが、後から見返すとなかなか理解しづらくなってしまうんですよね…。ちなみに見たときは大泣きしました。ただちょっと今考えればあざといかな、という気がしないでもないですね。
by 瑠璃子 (2006-05-17 17:47) 

ken

ムッソリーニ政権後の政治状況までは把握してませんでした^^
この映画は確実に泣けるんだろうと思って観ていたのですが、
これまた全然泣けなかったんですけど、これはストーリーの背景の理解力の
問題だったかも知れませんねえ。
え?でもそんなことお構いなしに泣ける映画じゃなかったっけ?(笑)
nice!ありがとうございます。…確かに無言nice!もナンですね。
by ken (2006-05-18 13:33) 

瑠璃子

えーっとこのコメント書いた後にふと、これを見た高校生当時、自分の父親と非常に仲が悪かったことを思い出しました。そういうことがあったから、かもしれない。またなんとなくピエトロ・ジェルミが父親に似てるんだよなあ。高校生で政治状況なんてわかんないわけで実は単純な話でした。スンマソ。
by 瑠璃子 (2006-05-18 14:06) 

ken

劇中の父と娘を自分に置き換えて観ていたんですね。
そりゃ泣けるでしょうよ(笑)。あー良かった難しいハナシじゃなくて。
by ken (2006-05-18 15:11) 

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