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チルソクの夏 [2005年 レビュー]

チルソクの夏」(2003年・日本) 監督・脚本:佐々部清

 これは70年代後半の下関を舞台に日韓高校生の恋と友情を描いた物語。
 僕と同世代の人たちにとっては「胸キュン(死語と知りつつ使う)映画」だと思います。
 タイトルの「チルソク」は人の名前かと思っていましたが、実は「七夕」のことでした。相変わらずこの程度の情報で映画観てます。でもこんなもんで充分です。はい。

 昭和38年生まれの僕にとって70年代後半は激動の時代です。
 歴史的という意味ではありません。僕の人生において、という意味です。
 僕が中学生になったのは1875年(昭和50年)。広島カープ初優勝の年です。あ、どうでもいいですね。すいま
せん。そして1978年で高校生になります。
 この年頃は最も多感な時期で、オバカな子供時代を終え、大人の仲間入りの準備を始める頃でもあります。視野も広がり、興味の対象も飛躍的に増えます。そして脳みそもまだまだ柔らかいですから、いろんなことを考えます(考えて考えて堂々巡りになることも多々ありましたが)。
 例えば、「チルソクの夏」の時代設定である1977年(僕は中学3年生でした)は国内外でこんなことが起きてました。

 ・青酸コーラ事件
 ・ロッキード事件初公判
 ・山口百恵、桜田淳子、森昌子。“花の高三トリオ”最初で最後の武道館公演
 ・映画「ロッキー」アカデミー最優秀作品賞獲得
 ・有楽町の日劇ミュージックホール閉鎖
 ・「サーキットの狼」大人気。スーパーカーブーム到来
 ・三里塚成田空港闘争
 ・ピンクレディー「渚のシンドバッド」が初のミリオンセラーに
 ・キャンディーズ引退宣言
 ・映画「宇宙戦艦ヤマト」公開
 ・エルビス・プレスリー死去
 ・王貞治756号達成。国民栄誉賞が創設される
 ・テレビドラマ「ルーツ」放送
 ・「スターウォーズ」全米公開
 ・革新的なF1マシン、ロータス78デビュー

 最後の項目だけは万人の知るところではありませんが(笑)、とにかく興味の対象を増やしてしまうと、それに比例して情報量も増えてしまい、情報処理能力の低い中学3年生は大変なことになります。もう何をどうすればいいのかさっぱり判らなくなる。しかもこんな時代に恋愛までしちゃうんです。そりゃもうタイヘン!。親が「アンタは勉強だけしてればいいのっ!」と子供に怒る理由が今になってようやく判りました(笑)。

 さて。
 この映画は派手な波風の立つ映画ではありません。どちらかというと地味な「懐メロ」映画です。 
 けれど、
携帯電話もメールもなかった時代に初恋を経験した人なら、自分の想いを重ねてこの映画を観ることが出来ると思います。そのあなたの想いがこの映画を温かい映画に変えるのです。
 (この先、ちょいとネタバレします)
 



 仮に「懐メロ映画」でなかったとしても、この映画はいい企画だと思います。
 互いに惹かれ合う韓国の男の子と日本の女の子。その2人の想いを互いの親が、日韓の歴史を持ち出して引き裂こうとします。
 なぜ「過去」の歴史が「現在」の2人の障害になるのか。2人は悩みます。この悩みをもう少し丁寧に描いてもよかったのでは?と思いますが、そこはこの映画を観た子供たちの学習意欲に期待しましょう。
 いずれにせよ、日本とアジア諸国の歴史を見つめ直すきっかけともなる作品ですから、そういう意味でも優れた企画だと思うのです。

 
「スウィングガールズ」以来、これで上野樹里の出演作を全部観たことになりました。地方の高校生という役どころは彼女の十八番かも知れません。決して美人じゃないけれど、明るくはつらつとした女の子は見ていて実に気持ちよかった。
 主役を演じた水谷妃里もいいです。フェリー埠頭のシーンは胸が熱くなりました。余計なセリフを書かず、名前を呼ばせるだけにした脚本も良かったんだけどね。

 フェリーで思い出しましたが、四国で育った僕にとってフェリーは重要な旅の足であり、いろんな思い出の詰まった乗り物です。
 海と港とフェリーという絵は、とてもノスタルジックな風景でした。
 チルソクの夏 特別版

チルソクの夏 特別版

  • 出版社/メーカー: 角川エンタテインメント
  • 発売日: 2004/10/29
  • メディア: DVD


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コメント 3

魚河岸おじさん

こんにちは、良い映画でしたよね、
何故、まっすぐな恋愛はいくつになっても涙が出るのでしょうか?
by 魚河岸おじさん (2005-05-09 17:39) 

youko

私も良い映画と思いました。時代も重なりましたし。
でも、私の場合は全く「韓国」という国~だけじゃなくて、アジア自体~を考えるような環境ではなかったので、自分の高校時代の大人はこういう考えを持ってる人が多かったのだということを気づかされたというか・・・やっぱり、日本の近代史はもう少しちゃんと勉強した方がよいのじゃないかと思ったのです。私自身、全然知りませんし。
いろいろと考えた映画でした。
by youko (2005-05-09 21:13) 

ken

魚河岸おじさんさん
 まっすぐな恋愛に無縁になっちゃうとこういう類のものは泣けますね(笑)。
 もう曲がりきっちゃってるもんなあ、オレ。

youさん
 僕は「文通」もツボだったんですよね~。
 小学校3年生のときにすごく好きな女の子がいたんですが、
 僕が転校をすることになって、でもその女の子との縁が切れるのが嫌で
 生まれて初めて文通をしたんです。手紙の楽しさとか喜びを知ったのは
 このときですね。恋愛のパワーってやっぱりすごいです^^
by ken (2005-05-10 02:40) 

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