SSブログ

茶の味 [2005年 レビュー]

茶の味」(2003年・日本) 監督・脚本・編集:石井克人

 この映画は観ようかどうしようか、かなり躊躇した。
 「みんな夕焼けみてた、宇宙のはじっこで」ってコピーの映画が143分もある。
 中身想像できない映画が2時間23分ですよ。かなり勇気要りますよね。この尺は。
 でも観てみようと思ったのは、石井監督の名前があったからかなあ。

 …2時間23分経過。
 「わちゃーっ」…考えがまとまらず一晩寝てみる。
 (この先、小難しい話が長いです)
 


 「茶の味」は散文詩です。
 とにかく「なんじゃそりゃ」なエピソードの連続なんですが、観終わってみると「あのシーンもよかった、このシーンもよかった」といろいろと思い出します。
 閑話休題。
 僕たちは過去の思い出を蘇らせるとき、イメージできるのは断片的なシーンのいくつかでしかありません。
 また、過去の記憶にはそれぞれ「印象度」がついていて、その度合いの強いものが比較的取り出しやすいところにいます。
 でもファイルのサイズには限界があって、容量の大きなものは一つのファイルで保存できません。だからそれをいくつかに分ける作業が勝手に行われます。
 例えば、最近読んだ
paserinさんの記事を例にすると、ホームと電車の間にバッグを落としてしまった原因は【乗り合わせたお客さんのGジャンのボタンが自分のニットに引っ掛かってしまい、それを外そうとしたら気が焦り、バッグを持つ手が正体不明になった】ためです。
 paserinさんはこの先、【電車とホームの間にバッグを落としてしまった】事件を思い出すとき、先に書いた原因と、その後【平然とした駅員さんにバッグを拾い上げてもらったこと】もセットで思い出すことでしょう。僕の想像ではここまでがひとつの記憶ファイルになります。
 しかし、【友人3人と待ち合わせをしていた】こと、【17時くらいに井の頭線に乗り渋谷に向っていた】こと、【遅れて行った集合場所】などはきっと別のファイルに勝手に入れられて、記憶(保存)されることになるでしょう。しばらく時間が経過してしまうとpaserinさんは、「そもそも何しにいく途中だったっけ?」ということになると思います。
 つまり「記憶ファイルの容量」は独立したシークエンスまでが限界で、全体のストーリーまでは及ばない、と言うことなのです。

 さて。
 どうしてこんなに屁理屈こねたかというと、この作品を観終わったあと、やっぱり「長い!」とは思ったのですが、ストーリードラマでないことに違和感は感じなかったんです。
 一晩たってこの映画を思い出すと、楽しくて可愛くて素敵なシークエンスを次々と思い出します。そこに一連のストーリーは必要ありません。なんならストーリーは自分で想像してみてもいいと思う。たとえばDVDを買って好きなエピソードをチャプター選択し、そのシークエンスだけ楽しむと言う方法もこの映画の場合はあると思う(あ、これいい。自分で書いててそう思った。じゃ、DVD買おう・笑)。
 
 僕が気に入ったことのいくつか。
 ・春野幸子を演じた坂野真弥ちゃんが文句なく可愛いです。6歳とは思えない演技も素敵。
 ・土屋アンナが好きな人にはたまりません。出番はすごく少ないですが、予告編にもあった
  「春野くん、一局打とうよ」のあと、いいセリフがあります。
 ・浅野忠信と中嶋朋子のワンカット長回し芝居が感動的です。
 ・和久井映見のナレーションが素晴らしいです。癒されるってこういうことかと思った。
 ・野外シーンのすべてに自然音のS.Eが必要以上についてます。
  これはなんでもないものを、心地よいものに変える(人間の深層心理に訴える)ウラ技だね。
 ・ヘンなおじいちゃん(我修院達也)を素敵なおじいちゃんに仕立てたアイディアに完敗。

 それにしても、143分は長いと思うなあ。
 なんならヤクザのエピソードだけはいらなかったんじゃないかしら???

茶の味 グッドテイスト・エディション

茶の味 グッドテイスト・エディション

  • 出版社/メーカー: レントラックジャパン
  • 発売日: 2005/02/25
  • メディア: DVD

nice!(2)  コメント(7)  トラックバック(5) 
共通テーマ:映画

nice! 2

コメント 7

kenさん!!
読んでてびっくりしたじゃないですかーー!!
自分の記事が教科書にでも掲載された気分ですよー(笑)
たしかに記憶ファイルの話はなるほどって思いました。
今度レンタルしてみます。
by (2005-05-02 13:38) 

「わちゃーっ」 …・・・和茶???
by (2005-05-02 13:39) 

ken

和茶には気付きませんでした(笑)。
おまけに記事の無断転載、ゴメンナサイです。
by ken (2005-05-02 14:13) 

masa63

"一晩たってこの映画を思い出すと、楽しくて可愛くて素敵なシークエンスを次々と思い出します。"
うんうん、確かにその通りなんですよねぇ。ストーリーというよりも何気なく見すごしていた場面場面が「思い出」のようによみがえってくるんですよ。これは監督の「技」なのでしょうね。
by masa63 (2005-06-13 10:02) 

ken

>tanamasa63さん
 nice!ありがとうございます。
 今思い返すと最初に浮かぶのは土屋アンナの「一局打とうよ」です。
 いいシーンだったな。
by ken (2005-06-13 12:51) 

魚河岸おじさん

こんばんは
kenさんこの作品見ていたのですね
本当に愛しい作品に出合いました。
雨のバスのシーンも何だかたまりません
お仕事頑張ってください
TBします
by 魚河岸おじさん (2005-08-26 19:23) 

ken

この作品は「家族愛」の強い人にはたまらない作品かもしれないな、と
ふとそんなことを思いました。nice!ありがとうございます。
by ken (2005-08-27 01:19) 

コメントを書く

お名前:
URL:
コメント:
画像認証:
下の画像に表示されている文字を入力してください。

トラックバック 5

この広告は前回の更新から一定期間経過したブログに表示されています。更新すると自動で解除されます。