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スター・ウォーズ [2004年 レビュー]

スター・ウォーズ」(1977年) 監督:ジョージ・ルーカス

 待ちに待ったDVDBOXが発売された。
 僕の人生を大きく左右した1本。78年の夏に松山の大街道にあったスバル座でこの映画を観た日のことは今でもありありと想い出すことが出来る。
 それはなぜか。ま、折りにつけ想い出してきたからなんですけどね(笑)。
 
 僕はこの映画をある女の子と観に行く予定にしていた。
 目指した高校の受験に失敗し私立の男子高校に入った僕は、夏休みを目前にして「ガールフレンドのいない高校生活は悪夢」、という妄想に取り付かれていた。
 そこで僕は夏休み直前、中学時代に同級生だったある女の子に電話をして映画に誘うことにした。電話口でタイトルを言ったら「それなら観たい」と彼女は言った。それが「スター・ウォーズ」だった。
 当日はスバル座まで歩いて5分とかからない同じ商店街の明屋書店で待ち合わせをした。
 前売り券は1枚800円。いい時代だった。
 僕は明屋書店の1階で「AUTO SPORTS」という雑誌を立ち読みしながら彼女を待っていた。
 ページをめくるとF1に関する記事があった。
 78年はロータス79に乗るマリオ・アンドレッティとロニー・ピーターソンが圧倒的な強さを誇っていた。けれどその黒いマシンをテレビで観ることは出来ない。まだそんな時代でもあった。
 F1に関する記事を読みながら、落ち着いていたわけじゃない。中学を卒業してから一度も逢っていなかった女の子との再会が迫っていた。
 ドキドキしていた。
 けれどその女の子は現れなかった。現れない代わりに別の女の子2人が僕の後ろに立った。
 「この人かな」「え、そうかな」「どうしよう」「どうする」
 そんな会話が聞こえた。何気なく振り返ってその女の子たちを見た。彼女たちの着ている制服は、僕が待っている女の子が進んだ高校の制服だった。
 嫌な予感がした。彼女は来ないと思った。理由は判らない。でも彼女は来ない。
 2人の女の子に話しかけられたくない、と思った僕はとっさに書店の2階へ上がった。開演時間は迫りつつあった。けれど僕の足は2階へ向った。
 文庫本を手に読むフリをしながら、時間をつぶした。どれくらいつぶしたかは覚えていない。けれどものの2~3分だろうと思う。開演時間は確実に迫っていた。
 1階に下りる。彼女の姿を探した。その姿はどこにもなかった。同じ制服を着た2人の女の子の姿も消えていた。
 「なんでだ?なんでだ?」と何度も頭の中で繰り返しながら、僕は足早にスバル座へ向った。
 チケット売り場を通り過ぎ、階段を上がって劇場内に入るとすでに開場されていて、フロアに客の姿はほとんどいなかった。もぎりはスバル座の支配人だった。
 「お、ひとりか?パンフレット買うか?」
 「あとで」
 中学時代から通っていたこともあり、支配人とは顔見知りだった。
 劇場はほぼ満杯だった。2人でこの時間に来たら座る場所はなかったかも知れない。独りだったからまずまずの席に座れた。
 ドキドキしていた。
 映画に対してではない。あの子達は何の目的だったのだろう、どうして彼女は現れなかったのだろう。そう考えたら心拍数が上がった。
 ブザーが鳴る。暗転する。「どうしてだろう」とまた考えた。
 
 この映画を見たことで、映像に関わる仕事をしようと思った最大の理由は「エンタテイメント」の持つ力を知ったからだ。
 劇場を出るとき僕は彼女のことをすっかり忘れていた。あまりの面白さに面食らって、頭の中はとっちらかっていた。
 ロビーではパンフレットが飛ぶように売れていた。支配人はその処理に追われていた。
 パンフレットを買うべく財布をのぞくと、使われるべき前売り券が残っていた。彼女が来なかったことをそこで思いだした。
 「うわ、もう一度観られるよ。ラッキー♪」
 僕は高校時代、彼女なしで3年間を過ごした。映画三昧の高校生活だった。
 
 スター・ウォーズが大ヒットした理由のひとつに「タイミング」をあげる人たちがいる。
 僕もそうかと思う。けれど普遍的なテーマと、慎重にリサーチされ構築されたストーリー展開、人物設定など参考にするべき点が実に多い。
 また、単なる子供向けSFで終わらなかった理由は、作り手の思いと狙いが明確だったことによるのだろう。
 今回のDVD化で一番嬉しかったのは、ボーナスディスクに収録された著名監督たちのインタビューだ。「ロード・オブ・ザ・リング」のピーター・ジャクソン、「エイリアン」のジェイムス・キャメロンたちが、「スター・ウォーズを見たから監督になった」と声を揃えている。
 この映画をリアルタイムで観ることが出来たのは最高の喜びだと。
 まったく同感だ。

スター・ウォーズ トリロジー DVD-BOX

スター・ウォーズ トリロジー DVD-BOX

  • 出版社/メーカー: 20世紀フォックス・ホーム・エンターテイメント・ジャパン
  • 発売日: 2004/09/23
  • メディア: DVD

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コメント 2

素敵なレビュー。その一言。ちょっとジーンとしちゃいました。kenさんのおかげで(せいで?)今日作るヘアはやさしめに決定です。
by (2005-07-14 14:31) 

ken

replicalove*さん、コメント&nice!ありがとうございます。
やさしめじゃないときはどんなヘアを作ってるのか心配になりました(笑)。
by ken (2005-07-14 19:59) 

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