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真珠の耳飾りの少女 [2005年 ベスト20]

真珠の耳飾りの少女」(2003年・イギリス/ルクセンブルグ) 主演:スカーレット・ヨハンソン

 やばいです。この映画にはやられました。
 エンドクレジットを目にする頃、じわじわと湧き上がってくる感動。こんな体験は初めてでした。
 僕と同じ体験をしたいなら、「画家とその妻に雇われた使用人の物語」とだけ認識して観てください。公式HPも観ないほうがいい。
 この映画をご覧になった方と、「ナニ言ってんのよ、全部知ってから観るかどうか決めるわよ」って方は続きをどうぞ。




 なんと言ってもこの映画の構造が面白い。
 物語はフィクションなのに、「真珠の耳飾りの少女」という絵は実在しているということ。
 画家を主役に据えた映画はいくつもあるけれど、「絵画」というアイテムがストーリーの重要な鍵を握ってしまうと、そこで登場する「絵画(アイテム)」の質が作品の質も決めてしまうことがある。
 この作品をフィクションだと信じて疑わなかった僕は、一体どんな絵を見せて決着をつけるのか、後半はそれだけが気になって仕方がなかった。というのも劇中のスカーレット・ヨハンソンがあまりに美しく(特にグリートの絵を描くと決めたフェルメールが彼女の表情を確かめるシーンが圧倒的に美しい。また、このシーンに作品全体のトーンとはまったく異なる照明を施したピーター・ウェーバー監督のセンスにも感動する)、本人の美しさを超える絵(アイテム)は誰にも描けないだろうと思ったからだ。
 そして迎えたエンディング。
 絵画の真珠の耳飾り部分からカメラがズームアウトし、徐々に少女の表情が見え始めたとき、スカーレット・ヨハンソンとは明らかに違う絵の中の少女を見つめながら、いろんな想いが交錯した。結局描いたのは妻?それとも娘?。
 そこに一拍遅れて字幕が出る。
 その字幕によって僕は、フェルメールが実在した画家であり、「真珠の耳飾りの少女(別名:青いターバンの少女)」が現存する絵画であることを知る。
 見事な虚実のマジック。心が粟立つ。

 フィクションのオリジナル映画としては、説明の足りないところ、あるいは観客に伝わり難いところなどいくらかある。けれど原作モノの映画だと割り切れば「赤目四十八瀧心中未遂」同様、行間を読む楽しさもある、と評価していいと思う

 観終わった瞬間に「このままもう一度観たい」と思わせる映画はなかなかない。
 すべてを知った上で再び観ると、また新たな発見がいくつもあると思う。
 もう一度観るのが楽しみな映画です。
 そして本物の「真珠の耳飾りの少女」も観てみたいと思いました。

 

真珠の耳飾りの少女 通常版

真珠の耳飾りの少女 通常版

  • 出版社/メーカー: メディアファクトリー
  • 発売日: 2005/01/14
  • メディア: DVD

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コメント 17

darumaruma

はじめまして!TBありがとうございました。
私もさせていただきますね~。
本物の『真珠の耳飾の少女』いつか見に行ってみたいです。
by darumaruma (2005-03-25 13:33) 

0860

kenさん はじめまして
TBありがとうございました

ほんとにきれいな映画ですよね
同じくホンモノが見たいです
by 0860 (2005-03-26 00:04) 

ken

Dharmaさん、0860さん。
僕は絵を買う決心をしました。
ここまで惚れ込むとは自分でも思いませんでしたねえ(苦笑)。
by ken (2005-03-26 16:59) 

pon-pu

ちょっと遅い参加でごめんなさい。
「真珠の耳飾りの少女」は、映画も良かったけれど
なんといっても原作の小説が最高に面白いのです。
小説については、近日中にわたしのブログで取り上げますね。
とりあえず書き込みさせていただきました。
by pon-pu (2005-04-12 10:15) 

ken

pon-puさん、ようこそ。
いい映画を語るのに早いも遅いもありません^^
そうですか。原作も面白いんだ。
by ken (2005-04-12 12:49) 

TBありがとうございました。
以前、この「青いターバンの女」は大阪の美術館に来ていたんですよ。
その後に東京にフェルメールの「画家のアトリエ」という作品が来日して、
ちょうどその頃にこの映画の日本公開になりました。
「青いターバンの女」は来日するのは最初で最後というようなことを
どこかの記事で目にしたことがあるんですが・・・
生を見れなくて、とても残念でした(号泣)
でも日本に有名な絵画がくると、日本人はこぞって観に行くので、ゆっくり堪能
できないのが悔しいです。
フェルメールの作品こそ静かな空間で、自分の想いに浸りたいのですが(汗)
絵画は買われたのでしょうか?
思わず彼女の目に引き込まれてしまいますよね。
by (2005-04-15 19:33) 

ken

今の家のどこに飾ろうかと考え始めたら、ちょっと躊躇してました。
でも買う。買うったら買う!(笑)。
買ったら報告します。
by ken (2005-04-15 21:44) 

ecco

やっと見ました。
この映画みてたら『、ピアノ・レッスン』
思い出しました。
なんか印象がにてるんですが・・・
by ecco (2005-05-15 00:57) 

ken

「ピアノレッスン」かあ、観てないなあ。
このブログを始めてから「観てみよう」と思わせてくれる映画を
いくつも知ることが出来るので、とても嬉しいです。
by ken (2005-05-16 13:55) 

lucksun

はじめまして。TBありがとうございました。
絵を買ったとは!ずいぶん惚れ込みましたね。
でも、わかります。その気持ち。
この映画は、珍しく2回たてつづけに観てしまいました。
見終わって何日かたちますが、オランダに行きたくなりました。
あの絵もいつか、必ず観てみたいと思っています。

こちらからもTBさせていただきます。
kenさんのブログ、楽しそうなのでじっくり読ませていただきます。
今後ともよろしくお願いします。
by lucksun (2005-08-16 22:13) 

ken

lucksunさん、ようこそ。
絵のある生活、悪くないですよ~。オランダにも行ってみたいですねえ。
やっぱりナマ絵も見てみたいしなあ。
by ken (2005-08-17 04:45) 

こんばんは!
なるほど~、《グリートの絵を描くと決めたフェルメールが彼女の表情を確かめるシーン》の照明・・・もう一度観ないと!というか、映画館で見たかった・・・と思っちゃいます。
事実、あの絵の女性は妻?娘?使用人?と、誰なのかは不明らしいですよね。
私には、あの女性はやっぱり純粋無垢な(妻ではないな・・・娘ではないとまでは言い切れない)、フェルメールに何かしらの想いを寄せている表情に見えてなりません。。。
それにしても、この映画をイギリスが手がけていたとは、、、ショック・・・な~んて偏見を持ってはいけませんが、TBさせてくださ~い。
by (2005-09-19 22:58) 

ken

そういえば最近はもう「二番館」というものを見かけなくなりましたね。
昔はロードショーで見逃しても、必ずやどこかで観られたものですが
そんなことが出来なくなったのも、なんとなく寂しいですねえ。
やっぱりスクリーンで見たい作品ってありますからね。
by ken (2005-09-19 23:57) 

てくてく

結局モデルは定かではない感じ・・・なのですね。
それがまたミステリアスで想像力を書き立てるのでしょう。
映画もとても綺麗で、引き込まれました^^
by てくてく (2008-11-12 01:32) 

ken

フェルメールという作家のことを詳しく知った今だと、どんな風に映るのか
改めて観てみたくなりますね。nice!ありがとうございます。
by ken (2008-11-12 10:32) 

hana

こないだテレビでやっていたので観ました。
この映画はフィクションなのですね。
まるで本当にあったようなストーリーでのめり込みました。
スカーレットヨハンソンはグラマーが売りの娘っていう偏見を持っていたのですが、この映画でそれが払拭され、魅力的な女優さんだと思いました。

「モンパルナスの灯」など、画家もの映画、好きです。


by hana (2008-12-03 11:26) 

ken

「モンパルナスの灯」は知りませんでした。
画家モノでは「ポロック 2人だけのアトリエ」もオススメですよ!
nice!ありがとうございます。
by ken (2008-12-03 23:38) 

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