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LOVERS [2005年 レビュー]

LOVERS」(2004年・中国) 監督:チャン・イーモウ 主演:金城武、アンディ・ラウ、チャン・ツィイー
 
 この映画を観ながら「僕たち観客が映画に求めるものってなんだろう?」と考えた。
 映画が最大の娯楽だった時代の話じゃなく、今のこととして。
 【豪華スター夢の競演】【最新技術を駆使した映像】【壮大なスケール感】【奇抜な設定とストーリー】【海外の事情が汲み取れるドラマ】などなど。
 映画を成功させる方程式が仮にあるとして、それは「観客が映画に求めるモノをいくつか掛け合わせたもの」であることは間違いない。
 かつて僕が脚本の勉強をしているときに習った「ジョルジュ・ポルティ36の悲劇」と同じ法則だ。
 悲劇には36通りの要素しかなく、これを3つ取り入れた本を書ければ悲劇ドラマは成立する、という魔法の教えである。
 しかし、僕が先にあげた【映画に求めるもの】のすべては、テレビと比較したものになっている。
 テレビで出来ないことを映画でやって欲しい、という【願望】だ。
 ひいては、観客が映画に求めるもののすべては、【お金と手間暇が掛けられた上質な作品】と言うことになる。では…
 「ただそれだけでいいのか?」
 これが「LOVERS」に対する僕の感想だ。
 劇場公開時に観に行った僕と同世代の女性は「美しいもの(金城武)を観ているだけで充分に幸せ」と言った。
 僕もチャン・ツィイーの顔を眺めているだけで幸せな気分にはなる。しかしこの映画には僕が求める要素のうち【豪華スターの競演】と【最新技術を駆使した映像】の2つしか見当たらない。なるほど、これだけでは作品の完成度は低いということだ。
 これはチャン・イーモウの前作「HERO」のときも同じことを思った。映像は美しい。豪華スターの競演も楽しい。しかしドラマの印象が決定的に薄い。
 結局何を言いたかったのか、監督の真意は伝わらぬままエンドクレジットを迎えるのだ。2時間少々の時間を費やしてこれほど残念なことはない。やはり映画を成功させるための絶対条件は「脚本」なのだ。
 
 「LOVERS」の脚本に欠けていたのはサプライズ。またそれを生かすための伏線である。
 観客を登場人物に感情移入させ、男はチャン・ツィイーを、女は金城武(あるいはアンディ・ラウ)を殺さなければならないとなったときに観客の心が真綿で締め付けられていなければ、この作品は失敗したも同然である。
 脚本は少なくともあと一度、書き直されるべきだったと思う。チャン・イーモウ、力の限界か?
 
 追記:ワダエミさんの衣装はこの作品も素晴らしい。完璧としか言いようの無い仕事です。

LOVERS

LOVERS

  • 出版社/メーカー: レントラックジャパン
  • 発売日: 2005/01/28
  • メディア: DVD

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コメント 8

NIKO

これは私も見終わった時はすごく不満で。
出演予定だったアニタ・ムイさんが亡くなって、チャン・イーモウ監督は脚本を書き直したんです。角川文庫から出てる原作はもっとおもしろいです。
by NIKO (2005-06-17 21:25) 

ken

なるほどそういうことでしたか。
と、いうことは?主要登場人物4人の物語だったと言うことでしょうか。
by ken (2005-06-18 00:44) 

NIKO

角川文庫のは4人の物語です。
by NIKO (2005-06-18 07:49) 

ken

あれ?ちょっと興味あるなあ。
by ken (2005-06-18 10:13) 

Aa

こんばんは。先日は我がブログにお越しいただき、ありがとうございました。
ところでkenさんは「グリーン・ディスティニー」は未見でいらっしゃいますか? 私にとってこの「LOVERS」と「HERO」という作品は、「グリーン・ディスティニーという巨大な山を別ルートで登ろうとして途中で挫折した」作品です。まあ、どちらも独自のそれなりの味があって好きですけど。
「グリーン・・」はアカデミー賞作品部門にノミネートされ(多分)惜しいところまで行きました。それはやはり中国映画界にとって大きかったと思うのです。
あれもやはり映像と音楽はとても美しかったものの、物語の筋としては破綻しまくっていました。でも私は「グリーン・・」では監督のやりたかったこと、またそれが達成されたことを感じました。破綻している物語の筋にすら、感動させる特別な、他にはない何かがありました。
このような疑問を感じておられるのでしたら、よろしければ是非、「グリーン・ディスティニー」もご覧になっていただきたいです。・・・邦題はとってもセンスないですけど。後、もしもすでにご覧になっていたら、すみません。
by Aa (2005-06-23 17:15) 

ken

Aaさん、ようこそ。
「グリーン・デスティニー」は公開当時観に行きました。
アカデミー作品賞にノミネートされたと聞いたときには、腰が抜けるほど
驚いた記憶があります。
観てから5年も経ってるので、詳しいディティールは記憶にありませんが
「感動した」という記憶はあまりありません(笑)。
なんと言っても、自在に空を飛んでるのがやっぱり驚きでしたね。
「そんなのありかよ!」って(笑)。
by ken (2005-06-23 17:31) 

Aa

「HERO」も「LOVERS」も普通に空くらい飛んでいますが・・・。
5年前には確かにその一点で切り捨てられたレビューが多かったことを考えると、あの作品は日本人にとって早すぎたというか、捨て石だったのかもしれませんね。その後、マトリックスの2と3もありましたし。時代の変化は早い。
それにしても惜しいことです。
by Aa (2005-06-23 22:05) 

ken

早すぎた、というのはそうかも知れませんね。
今なら普通の評価が出来るのかも。
by ken (2005-06-23 23:35) 

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