SSブログ

今後のエンジン技術動向 その4 ガソリンエンジンのトレンド(前編) [仕事]

前置きの記事はこちら
1点目の記事はこちら
2点目の記事はこちら

私が考える、この先10数年で一気に拡大していきそうな傾向は、以下の3つ。

1.ハイブリッドシステムの開発促進
2.ディーゼルエンジンへの移行
3.より効率の高いガソリンエンジンの開発

今回は3点目のガソリンエンジンの最新トレンドについて触れる。

これまでの話から、現在主流のガソリンエンジンは、単独では廃れていくのかというとそうではなく、まだまだ進化の余地はある

私自身、昔勤務していた会社で、エンジンハードの性能開発をしていたので、エンジンだけで1%の燃費改善をすることがどれだけ難しいかはよく理解している。カー用品店で販売している、怪しげな燃費グッズで効果があるなら、何も苦労することはない。
ガソリンエンジンがこの先も生き残っていくには、既存のものの小改良ではなく、画期的な新しいシステムが必要がある。

私が個人的に注目している新技術は、BMWのバルブトロニックに代表される「可変バルブリフトシステム」と、フォルクスワーゲンの TSI と呼ばれる新エンジンに代表される「過給器によるダウンサイジング」
どちらも、実際の製品の市場投入や、考え方は、以前からあったものなので、今更な感もあるのだが、ここにきて、ようやく本格的な普及期を迎える気配が見られる。

「可変バルブリフトシステム」は、理論的な燃焼サイクルにより近い運転が可能になる。
ガソリンエンジンには、大きな損失を発生する(しかし出力をコントロールするには不可欠な)スロットルバルブという、吸入空気量を制御する部品がある。システムの理屈の上では、このスロットルバルブが不要となる。(実際は、製造の精度上と万が一のシステムフェイル時に対応する理由で、完全に廃止することはできていないが)
今後、吸排気バルブがスイッチで瞬時に開閉できる電磁バルブにまで進化すると、エンジンだけで20~30%くらいの燃費改善が可能だろう。(ただしこれも、電子制御部品の耐熱性の問題で、量産への課題は多い)
今のところ、この可変バルブリフトを市場投入しているのはBMWのみだが、ニッサンが先日のニューヨークモーターショウで、新しい Infinity G37クーペ(日本のスカイライン・クーペ)に投入することを発表したし、トヨタも間もなくノア/ヴォクシーに2Lのエンジンで採用するという噂だ。
BMWが量産後も品質管理の点で苦労した技術を、ニッサン、トヨタがどのくらいものにしているのか、興味があるところだ。

さすがに自分の技術分野になると、話が長くなってしまう。
ここで一度切らせていただきたい。


nice!(1)  コメント(5)  トラックバック(0) 
共通テーマ:自動車

nice! 1

コメント 5

めぎ

とても専門的な記事なのに、素人の私にも分かりやすく書いてくださって、とても興味深く読みました。車のこと、少し詳しくなって嬉しいです。
効率の良いエンジンで、もっと効率よく走れるような空いている環境が整うと、とても効果的でしょうね。日本では特に、混んでいる中でいかに燃料を使わずに済ませられるか、というあたりも問題なのでは、と素人ながら想像してます。
by めぎ (2007-04-16 04:36) 

こきさんじ

やはり私にはちんぷんかんぷんな事ばかりだし、エンジンとは関係ないと思うのですが、スウェーデンでは燃料として水素を使用する試みが為されているようです。無色・無臭、燃焼させると酸素と化合して水を生ずることから、排気ガス問題にも大きく寄与するであろう事。
異常気象が全世界で起こっている現在、色々な点からの見直しが迫られているのですね。
by こきさんじ (2007-04-16 07:57) 

YAP

めぎさん、こきさんじさん、コメントありがとうございます。

めぎさん、
まさに書かれている通りで、ヨーロッパやアメリカの郊外のように、スイスイ走ることができる道では、燃費は良くなります。
逆に、大都市部のように、慢性的な渋滞があるところでは、そんなに進みもしないのに、ガソリンは少しずつ消費しているわけですから燃費も悪くなります。前にも書きましたが、こういう環境では、ハイブリッドのメリットが出てきますね。
nice! ありがとうございます。

こきさんじさん、
水素を燃料とする試みは、けっこう前からありますね。
私も昨年夏のデス・バレーで、BMWの水素カー(もちろんテスト車両です)を目撃しました。
排出ガスは、理論上、水(水蒸気)のみとなりますので、理想的ですね。
ただ、0'Cで凍ってしまう「水」を排出するわけですので、寒冷地での問題(水蒸気が排気菅中で凍ってしまう)がありますし、水素供給のインフラ整備の問題もあります。
その辺りの課題に、各社とも取り組んでいる最中だと思います。
by YAP (2007-04-17 08:08) 

炎遊人

可変バルブリフトシステムですか。 これって語彙からとらえると、バルブ開閉の位相を各回転域の燃焼効率に合わせて変化させてやる機能と解釈しますがあってますか? 
要はハイカムの高回転特性をノーマルエンジンに加えたものって感じでしょうか。
その昔、何処かの雑誌で読みましたが、3次元曲線をカムシャフトに加工し、回転域に応じてスライドさせるというのを試験的にやったという記事を見たことがあります。 でもあまりうまくいかなかったと記憶しています。
by 炎遊人 (2007-04-17 17:10) 

YAP

炎遊人さん、コメントありがとうございます。
まず、炎遊人さんが書かれています、バルブの位相を回転域で変化させるシステムについては、可変バルブタイミングシステム(各メーカによって呼び方はさまざまですが、トヨタの使っているVVTという呼び方が一般的かと思います)というもので、今ではかなり普及しています。
後半で書かれています、3次元形状のカムをスライドさせるシステムというのは、おそらく可変リフトでしょう。
しかし、やはりご指摘のように、このカムをスライドさせる方法での量産は困難と思われます。
現在BMWが量産しているものや、これからニッサンが出すものは、バルブを駆動するカムと、実際にクランクによって動くカムとの間にリンクを設け、そこの可変機構でリフト量を変化させています。
うまく説明できなくてすみません。記事中のリンクで、ニッサンの資料が図付きであります。システム自体が複雑で図を見ても難解ですが...
トヨタのシステムも同様と思われますが、情報がまだ入ってきていません。
by YAP (2007-04-18 22:28) 

コメントを書く

お名前:
URL:
コメント:
画像認証:
下の画像に表示されている文字を入力してください。

トラックバック 0

JAL 日本航空 特便割引

この広告は前回の更新から一定期間経過したブログに表示されています。更新すると自動で解除されます。