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200 真崎=静岡市清水区三保(静岡県)休んでもいないし死んでもいない [岬めぐり]

 たまにテレビのリモコンをかちゃかちゃ(といっても、最近のは音はしないのだが)変えていると、タレントが己の無知・非常識・バカさ加減をさらけ出すことを芸と勘違いしているような(させるような)番組に遭遇する。「へぇーっ! そんなことも知らないのか?!」と、新鮮な驚きに打たれてしまう。テレビの好きな言葉で言えば、ある種の“感動”さえある。たとえそれが妙な“カンドー”であったとしても、しばらく見入ってしまったりして、プロデューサーの思惑に見事に嵌まってしまっている自分に、はたと気づいたりすることがあった。
 しかし…。 知識とはなんだろう? 常識とはナンだろう? また、それはどんだけが必要でそこまでは知らなくていいという線引きができるのだろうか?
 おそらくそれはできないだろう。また、知識のあるほうがないほうよりも、常に優位にあるということもないし、そのために生き死ににかかわるようなことは稀であろう。だが、知識の多くが、経験と学習(情報の吸収)によって得られるとすれば、その人の知識は、生きてきた歴史の地層をある程度示している、というくらいのことは言えるのかも知れない。
 そんなことを、ふと思ったのは、真崎から富士山をぼんやりと眺めているときだった。

 富士山を知らない日本人はいないであろう。だが、その標高を正確に記憶している人となると、かなり減るだろうし、「富士山検定」の問題のようなことまで、みんなが知らなければならない理由もない。
 それはおいても、自分が富士山について、いったい何を知っているだろうか? いいしれぬ親しみを持ち、意味不明の憧れを持ち、理由なく新幹線でも飛行機でもその窓に富士の姿を探している。だが、その山については、一度はその頂に立ったことがあるとはいうものの、なにひとつ詳しく究めたことはない。
 ただ、少しばかりの経験と学習で、断片的な知識をバラバラにパラパラと纏っているに過ぎない。それも、考えてみれば少しばかり悲しいような、残念なような気もする。

 富士山の知識は、多くの日本人と同じく、最初は本や雑誌で見る絵や写真からだった。それが、一歩自分の体験に踏み出したのは、小学生の高学年で教材の富士山の立地模型を作ったときであろう。教材は地域をいくつか選べたが、迷わずに富士山周辺を選んでいた。ボール紙を印刷された線に沿って切り抜いて、それを糊で貼り合せていき、最後に着色してツヤを出した。
 けれども、その出来上がりには自分ではあまり満足ではなかった。いちおうはほぼ高度も等高線にしたがって紙で厚みを出すようになっていたはずだったが、思っていたよりもはるかに、その富士山は高くなかったからである。



 真崎は三保の砂洲の先端で、少しばかり西に回り込むようにして、“ちびまる子ちゃん”の清水の町と港を抱え込んでいる。
 ここから見る景色は、由比・蒲原・富士川・田子の浦をひとなめにしたもので、それは古来多くの文人墨客や絵師や芸術家によって記録され描かれてきたところの風景でもある。
 中学生になって始めた趣味が切手収集で、多くの切手に描かれた富士山の姿も、まだ見たこともない富士山への思いを増幅させてきたものだった。

 そして、初めてその姿を目にしたのは、修学旅行の高校生たちを乗せた夜行列車が、静岡に近づく頃だった。東雲の空がぼんやりと明け初めるなか、その黒いコニーデ型の火山のシルエットは、教材の模型とほぼ同じ高さで横たわっていたものだった。
 その頃、学習して得た知識では、「富士山は休火山である」ということだった。今でも、そう信じ込んでいる大人は多いはずだが、これについてはきっと今の小学生のほうが正しい知識を持っていることだろう。
 今では、「富士山は活火山」となっている。活火山の定義が、「過去1万年以内に噴火した火山と、現在活発な噴気活動がある火山」に改められたのは、休火山とされていた山が突然活動に目覚めて、深刻な被害を生じるような事例がいくつか起こったためであろう。
 ついでにいえば、この定義に該当する山は、日本中で108あるのだという。ちょうど大晦日に鐘とともに打ち出される煩悩の数と同じというのは、もちろん単なる偶然であろう。
 そうか、現在のでんでんむしも、死火山でも休火山でもない富士山といっしょなのかも知れんなあ。
 いやね、死んでもいないし休んでもいない、かといってそんなに活発に活動しているというわけでもない、という点においてのみ…。


▼国土地理院 「地理院地図」
35度1分12.88秒 138度30分59.57秒
200まさき-100.jpg
dendenmushi.gif東海地方(2007/12/04 訪問)

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タグ:静岡県 灯台
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コメント 6

toshibon

男鹿半島在住のtoshibonです。クリスマスをはさんで1週間ほど勝どきに滞在しておりました。たまたま22日夜にトリトンに行ったら、グランドロビーで第9の演奏会が行われていて得した気分になりました。クリスマスのイルミネーションもよかったですね。
「そんなご縁があるなら、一度お会いしたいですね。晴海トリトンは、でんでんむしの昼食処なので、ぜひ…」とのでんでんむしさんのコメントを思い出したのですが、元来人見知りなもので…というか、恥ずかしさが先に立ち…。トリトンから対岸の月島のマンション群を眺めながら、あの建物にでんでんむしさんの仕事場があるのかな?などと想像をめぐらすだけで秋田に帰ってまいりました。でも、いつか気が向いた時にご連絡することがあるかもしれません。その時はどうぞよろしく…。
よいお年を!
by toshibon (2007-12-31 00:18) 

krause

本年は、お世話になりました。
よいお年をお迎え下さい。
また08年も宜しく御願い申し上げます。
by krause (2007-12-31 18:00) 

右左あんつぁん

積もった雪がやがて石清水になるように、でんでんむしさんの知識の泉が私たちの心の潤いとなっています。死んでもいないし休んでもいない、しかし真白き雪を讃えている富士山、そうです。でんでんむしさんにそっくりです。
また来年も宜しくお願いいたします。
by 右左あんつぁん (2007-12-31 20:09) 

dendenmushi

@toshibonさん、連絡してくださればよかったのに! 残念! でもね、勝手な無理強いはいけませんね。
勝ちどきに滞在されたということは、もしかして地下鉄の駅とトリトンの間にあるあの「東京Bなんとか」というホテルだったのでしょうか? もし、そうならでんでんむしの仕事場は、すぐそこに見えていたのですが。
次の機会には、ぜひぜひ…。
男鹿のtoshibonさんは、どういう人なのだろう? 一昨年、初めて訪問汁までは、まったく未知の地であったはずの半島が、急に身近なものになっったような気がします。「男鹿半島 ひやみこぎ通信」も、またゆっくり読ませていただきたいと思います。
by dendenmushi (2008-01-02 07:45) 

dendenmushi

@Krauseさん、ごていねいなごあいさつ、恐れ入ります。「北総での晴耕雨耕」という理想的な生活はうらやましく思っていました。
nice押印をしていただいて、ありがとうございました。でんでんむしはどうもこの「nice!」という趣旨が理解できずにいました。用語の使い方がよくないと思っていたのです。おまけに、でんでんむしは「ひきこもり」なので、積極的に他の方のブログを探して見ているわけではないのです。
が、訪問した足跡を残す「記名帳」のような使われ方をしていると考えて、昨年の後半からは、いただいたnice!には、お返しの訪問をさせていただくことにしました。
Krauseさんも、今年からはペースダウンをされ、コメントも積極的に…と書いておられましたね。
毎日は、やはり大変です。でんでんむしも過去の経験から、いまのところいちおう隔日くらいがいいペースなのかなと…。
今年もよろしくお願いいたします。
by dendenmushi (2008-01-02 08:09) 

dendenmushi

@右左あんつぁん さん、富士山と似ていると自分で思うのは、あくまでも「活火山といわれているけども、なんにも目立った活動をしていない」ということだけですから。
お互いマイペースで、今年もボチボチいってみましょうね。
by dendenmushi (2008-01-02 08:19) 

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