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188 九ノ崎=北茨城市平潟町(茨城県)アンコウのようなもの… [岬めぐり]

 長い間、“アンコウ”といえば、本で見たチョウチンアンコウの姿くらいしか、思い浮かべることができなかった。頭と口が大きくなんとなく人間くさい顔をしたこの魚は、深海魚とまではいかないまでも、かなり深いところにいるので、漁法も特別なものはないらしく、冬寒くなると浅場に寄ってくるのがトロール船の網にかかる、というくらい不確実で不安定なものなのだ。
 それにしては、日本人は(特に東日本では)昔から一部でこの魚をよく食べていたらしいが、西日本のでんでんむしには、ラジオで聞いた落語で「できますものは…アンコウのようなもの…」というのがでてきて、そんなようなものがあるのかと思うくらいが、せいぜいの馴染みに過ぎなかった。
 神田の須田町は、古い東京の名残りを伝えるそば屋も有名だが、そのそばのアンコウ料理の店も老舗である。こういうのが残っていることが、この料理が通といわれる人々の間で人気を博していた証なのだろう。
 もっとも、今はテレビ時代。なんでもかんでもテレビがお手軽に囃し立て、女の子がキャーキャー騒いでいるのを必ず映し出すので、この平潟のアンコウも吊るし切りもアンキモも…誰もが知っている。誰もが知っていても、水揚げされるアンコウは数が限られるので、需要と供給の関係からいえば、売り手市場になっている。この頃では、“アンコウ料理は高い”というのが、通り相場として定着し、西のフグと並び称されるほどになってしまったようである。
 坂の上の方にはアンコウを出す民宿などがたくさんあるが、九ノ崎へは海沿いに南に行かなければならない。まだ、本格的な鍋シーズンに入る前のことでもあり、港の周辺もひっそりしている。

 九ノ崎もこのあたり独特の岬の姿をしているが、その浜はだんだん波に削られてきたのか、一面にテトラポット(Mac OS X Leopardにシステムを変えてATOKに切り替えてみると、このおせっかいなFEPはこの「テトラポット」が“商標名”である、と教えてくれる。へぇー。そうなの)が埋め尽くしている。道のそばの溝からは、湯気が立っている。ここは溫泉もあるのだ。
 この写真は、鵜ノ子岬と同じようだが、別のものである。この崖には落石防止のネットが張り巡らせてあるが、電柱の上や木の茂みの下にもハマギクが群れている。

 アンコウの看板に釣られて、細い路地を入り、岬寄りに行くと民家の間にぽつんと暖簾を掲げた店がある。鍋はまだシーズン前だろうから、どぶ汁でも食べられないかと尋ねてみると、そこではやっていないという。鍋は一人6000円からで、しかも二人前からだというし、一人で食べられるものは“お刺身のようなもの”とかになるという。それではおもしろくもなんともない。

 港のところには確かどぶ汁の幟を出していた店もあったよな、とまた港に戻ってきて、一軒の民宿兼食堂に落ち着く。昼時なのに空いていて、先客が定食を囲んでいる。店のおかみとの話の様子で、“ははぁん、これは市役所の職員とその上司とおぼしき4人連れだな”と推測がつく。
 実は、“どぶ汁”なるものがどんなものか、まったく知らないままに注文してみる。神田の老舗でも食べたし、最近では住んでいる地元月島にはコアな有名店があるのでそこへは毎年行っているが、アンコウ鍋は、店によって微妙に違うものである。
 でてきたのは、鍋と同じくコンロと土鍋である。蓋をとってみると、アンキモでオレンジ色になっており、これは一見したところ月島のアンコウ鍋と似ている。コラーゲンたっぷり、ぷりぷりの身もたっぷり…。
 情けないことながら、歳のせいかどうも集中力に欠ける。あとで「しまった」と思うことが多い。考えてみれば、このどぶ汁も、店に掲げてあった油絵も、写真に撮っておくべきであった。

 その油絵は、額装などの様子ではかなり年代物で、昔の九ノ崎を描いたものだったのだ。ほぼ構図がこの写真と同じようなもので、浜はテトラポット(はいはい、わかりましたよ《商標名》だというんでしょ)ではなく、一面広い砂浜が描かれているではないか。(そうだよ、なんであのとき写真を撮らなかったんだ)
 さぁーて。おなかもいっぱいになったし、腹ごなしにここから五浦美術館を経由して大津港の近くにある鵜島の鼻まで歩いて行きたいところだ。だが、それも天気がよければ、の話。
 相変わらず雨は降り続いている。雨というのは、意外に行動を制約する要素である。天心記念五浦美術館は、県立の美術館なのだが、これがロケーションも建物もすごいの一語に尽きる。今は、大倉集古館の特別展示もあるはずなのだが、なんだかめんどくさくなってしまう。
 一人でやってきて、絵のことやらどぶ汁のことやらいろいろ聞いて、この客は何だろうと、店の人も疑問に思ったらしい。どこからきたのか目的はなんなのか、知りたいような雰囲気だった。そんな質問には軽く答えて、電話を借りたいというと、タクシーならお呼びしますと言ってくれたので、お言葉に甘えて呼んでもらうことに…。
 どぶ汁? あ、そうそう。3000円でした。

▼国土地理院 「地理院地図」
36度51分11.52秒 140度47分51.61秒
188くのさき-88.jpg
dendenmushi.gif関東地方(2007/10/26 訪問)

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タグ:茨城県
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