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113 観音岬(椎谷岬)=柏崎市大字椎谷(新潟県)原発を超えて [岬めぐり]

 番神岬からも鴎ヶ鼻からも見えた観音岬へ行こうと、あれこれ尋ねた結果、柏崎駅から椎谷行きのバスがあることがわかった。JR越後線も本数が少ない線なので、これで西山往復はしんどいし、西山からのアプローチも歩くしかない。これは少々待ってもバスに限る。
 鴎ヶ鼻の案内板には“椎谷岬”と書いてあったが、地図には観音岬という表示しかない。でも、どちらかというと全国あちこちにありそうな名前より椎谷岬のほうが、確かに場所が特定されてわかりやすいようにも思える。それが決して有名な場所というわけではない。椎谷というのは柏崎市の字名で小さな港と簡易郵便局と神社とお寺をもつ集落である。それでも、市振と同じく、明治天皇はこんなところまでやってきたらしく、御休息の地の石碑まで建っている。

 いまにも降り出しそうな空模様は、やがてすぐに崩れてきた。風もでてきて、昼間だというのにあたりも暗くなってきた。なんとなく、これぞ日本海という雰囲気だ。おまけに、壁は黒っぽい板張りで黒い屋根を載せた椎谷の道筋の家々の佇まいさえも、ぴったりのように見える。むしろ、海岸に新しく設けられたらしいおしゃれなとんがり帽子のトイレや公園のほうが、浮いて見える。

 そして、なぜか地方のそれも辺鄙な場所でよく目にする家の壁に貼付けられたキリストの福音を謳う黒地に白文字の看板さえもが、馴染んでいるように感じられる。これも全国どこへ行っても見かけるが、いったいどこの誰が、どういう組織がやっているのか、20年前の値段で同じところをかなり頻繁に巡回しているようにみえる「さおだけ屋」と、同じくらい疑問の対象である。

 柏崎からここへ来る途中に、バスは長い松林の横を通る。それが尽きると、道は林に囲まれた場所を大きく迂回するようにして回り込む。ここが、あのニュースでも有名な東京電力の柏崎刈羽原子力発電所なのだ。その高い煙突のような塔が数基立っており、それは椎谷からもよく見える。刈羽村が柏崎市にぐるりと取り囲まれながら合併しないのは、原発があるからだろうと思っていたが、今回よくよく地図を眺めてみると、刈羽村は海岸線をもっていない。そこは原発の主要な施設があるところを含めて全部柏崎市なのだ。

 地図ではよくわからないが、おそらくはこれは広島県安芸郡府中町と広島市におけるマツダの場合と同じ関係なのだろうか。地図といえば、So-net buzzmapが不具合で、今朝は表示ができないが、この地図では原発のところは何も書いてないまったくの空白地帯である。昔の陸軍が検閲した後の地図と同じ、機密事項だから知らしむべからずなのだろうか。
 プロメテウス以来、火を自由に操るようになった人間は、やはり火によって多く命を落としてきた。人が生きるために必要と思われるもので、同時にその取り扱いが難しいものは少なくない。だが、その取り扱いについての知識が非常に高度なもので、ごく一部の一握りの人間にしかわからないようなものに手を出すようになると、別の意味でも危険になる。
 東京電力が、原発のデータを改竄したり、事故を隠したり、ごまかしたりしたくなるのも、どうせ誰もわかりはしないのだから、と考えるようになったとしても、それも充分に理解できる。われわれは、何も知らなくても、何も知らされなくても、ここでつくられた電気を使っている。発電所を迂回する道路の途中にあるインフォメーションセンターの建物にあるTEPCOのマークを眺めながら、そう考えた。

 柏崎の中心部の通りには、冬場の雪対策でもあろうか、アーケードのついた歩道が続く。そこに、10メートルおきくらいに歌碑が並んでいる。その名の文字と歌をみても“はて、誰だったっけ?”と首をひねった。そのときは、良寛は出雲崎だからここではないという意識だけが強すぎて、ほかのことばかり想像していた。
 一休みするために入った喫茶店で、よしておけばいいのに、つい聞いてしまった。「そこのお店の前にある歌碑ですが貞心尼というのは?」
 統一地方選挙も運動の最終日とあって選挙カーが通る。なかには、東電を追及すると叫んでいる車もある。通りに顔を出して手を振ったりしている店の人は、もうながいことそこで商売をしているらしいのだ。にもかかわらず、店の前にある歌碑のことは何も知らなかった。
 人は何も知らなくても、何も知らされなくても、生きていける…。ましてや、古い昔の良寛さんの恋人のことなど…。

▼国土地理院 「地理院地図」
37度28分58.45秒 138度37分7.00秒
113かんのんみさきしいや-13.jpg
dendenmushi.gif北越地方(2007/04/21 訪問)

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タグ:新潟県
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