SSブログ

110 聖ヶ鼻=柏崎市米山町(新潟県)飛べよ鉄鉢!鳴れよ鳴神! [岬めぐり]

 「聖ヶ鼻」という岬が、なぜそういう名前になったかは、この地に伝わる伝説と関係があるのだろう。
 だが、直江津から信越本線の電車に乗り換えて、米山の駅に降り立ち、そのホームから岬を眺めたときには、それもまだ知らなかった。

 昔むかし、米山の薬師堂で仏像を刻んでいた師匠についてこの地で修行していた坊さんは、法力でちょっと変わった托鉢をやっていたという。この岬から沖を行く船に鉄鉢を飛ばして、喜捨を求めていたのだが、ある日たくさんの米俵を積んだ船が通りかかった。例によって鉄鉢を飛ばしたところ、強欲な長者である船主は喜捨を拒んだ。すると、船の米俵は、全部師匠のいる米山に飛んで行ってしまい、山は米で雪が降ったように真っ白になった。長者が心を改め、米山に登って詫びを入れると、米俵は船に戻っていた…。
 …んじゃったそうな。
 米山という名前も、この日本昔話からきているのか。それとももともとから米山で偶然の一致なのか、それはよくわからないが、無人駅の狭い待合室に大きな観光案内図が掲げてあって、それで初めてこのことを知った。

 そして、もうひとつ、この駅に降りてこの案内図を見るまで、まったく気がつかなかったのは、この「米山」こそが“米山さんから雲が出〜たぁ”の『三階節』に歌われていた「米山さん」だったのだ。これは意外な大発見だった。そうだったのかぁ。
 別に民謡に趣味があるわけではないが、幼い頃からずっと祖父と暮らしていたでんでんむしは、ラジオから流れてくるこんな歌も、ちゃんと覚えていた。
 “米山さんから雲が出〜た いまに夕立が来るやら
   ピッカラ シャンカラ ドンカラリンと 音〜がぁする…”

 駅前の家では雪囲いをはずしているところだった。その駅前通りからも、独立峰でよく目立つその米山さんには、米ではなく白い雪がまだ谷筋に残っている。標高は1000メートルにわずかに届かない山で、季節は4月も終わろうという時期なのに、さすがに越後である。


 別名には米山崎ともいう聖ヶ鼻には、小さな峰の上の木立の中に窮屈そうに灯台が立っている。この灯台は昭和44年に建てられたというから、比較的新しい灯台だ。
 『三階節』に歌われている雷は、決してフィクションではなかった。実際ここは雷が多いところで、灯台ができてからも幾度も落雷の被害を受けたらしく、燈光会などが設けた看板には「雷を呼ぶ灯台」と書いてあった。
 その向こうには形のよい円錐形の小山があって、これは船に向かって鉢を飛ばすには、絶好のロケーションである。

 そこから北東の海岸を望めば、田塚鼻という岬の向こうにさらに大きな岬が横たわっているのが、遠望できる。あれはこれから行く予定の鴎ヶ鼻で、その岬の付け根には今夜の宿に予定しているホテルの白い建物も見える。

 手前すぐ下には、ここにも旧信越本線のうち捨てられたトンネルがむなしくぽっかりと口を開いているが、それも土砂崩れで半分以上塞がれたようになっている。いつからこういう状態なのかわからないが、手が届かないのかそれともあえて手を出す必要がないのか、なんとも侘びしいというか、これはいかにも複雑な景色のように見える。

 灯台のある峰の下には展望台を兼ねた広場というか駐車場というかがあって、間宮林蔵について樺太探検に従事した米山出身の松田伝十郎の碑も立っている。その広場を切り開いた崖には、おもしろい地層が見られたが、後で知ったところではこの先の牛の首には地質学的に有名な褶曲があったのだ。

 ここにも上杉謙信以来という関所の跡があって、“女と鉄砲”を詮議していた。その名を鉢崎関所という。鉢崎とは、昔話の伝説が深く浸透していたことを示す名前だが、ほかには今も鉢崎神社と鉢崎郵便局だけが、それを称している。

 米山の海岸もそうだったが、線路の脇にも無数のごみが散らかっている。こんなところのごみが、どこから飛んでくるのか、誰が捨てるのかよくわからない。あるいは、雷さんがピッカラシャンカラと運んでくるのだろうか。誰も片づけないのか、片づけてもすぐ汚れるから片づけないのか、それもわからないが、これもまたある種不思議さをただよわせた光景のように思える。
 行政区画としては、ここは柏崎市の西のはずれである。このごみ処理には、鉄鉢を飛ばすという奇跡でもないと、きれいにならないのだろうか。

▼国土地理院 「地理院地図」
37度19分26.08秒 138度26分13.60秒
110ひじりがはな-10.jpg
dendenmushi.gif北越地方(2007/04/20 訪問)

@このブログは、ヘッダー、サイドバーをも含めた、全画面表示でみることを大前提としています。

にほんブログ村 その他趣味ブログ
その他珍しい趣味へ 人気ブログランキングへ

タグ:新潟県
きた!みた!印(3)  コメント(3)  トラックバック(7) 
共通テーマ:地域

きた!みた!印 3

コメント 3

おじゃまします^^日本海ですねぇ~なつかしい~
子供のころ、父が新潟出身でしたから各駅どまりの汽車に乗って
すすだらけになって~糸魚川で海水浴の記憶があります。
でんでんむしさんのきれいな写真をいつも楽しみにしています^^
by (2007-05-03 13:38) 

dendenmushi

@灯台ネタありがとうございます。とも〜るさん。レスはこっちの灯台があるほうにさせていただきますね。
 白黒または白赤の灯台の塗りワケですが、これはでんでんむしもかねてから疑問に思っていました。マニアではないので、追及もせず、ただ漠然と「なんでかな〜あ」と思っていたのです。
 確かに、西ではほとんど灯台といえば「紺碧の空。群青の海。そして白亜の灯台」というのが通り相場…だと思い込んでいましたから。
 北のほうは白黒灯台多いですものねえ。霧というのは考えてみたけど、おしゃるとおりです。それに霧は西でも多いし。
 岬めぐりを続けていれば、そのうちどこかの岬のどこかの灯台で、それも解明されるかもしれません。
 それを楽しみに、これからもぼつぼつと参りましょう。
 
by dendenmushi (2007-05-04 06:05) 

dendenmushi

@ウサコさん、ありがとうございます。またしてもウサコさんの記憶を掘り起こしてしまいましたか。でも、今度は楽しい思い出でよかった!
 ね、やっぱり海水浴場でしょ。糸魚川にもありますものねえ。
 じゃ、今は廃線になっている、この昔の北陸本線に乗って…。
 懐かしいですね。今頃になって、SLだのなんだのと騒いでいますが、蒸気機関車は北陸本線ではかなり遅くまで走っていたと思います。
 でんでんむしの写真は、安いデジカメで、ただメモ代わりに撮っているだけなので、そんなたいしたのはありませんが、ニホンカモシカの写真は、自分でも記憶に残る写真になるかもしれません。
by dendenmushi (2007-05-04 06:18) 

コメントを書く

お名前:[必須]
URL:[必須]
コメント:
画像認証:
下の画像に表示されている文字を入力してください。

トラックバック 7

トラックバックの受付は締め切りました