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106 鳥ヶ首岬=上越市大字茶屋ケ原(新潟県)地図上でほどには目立っていない岬 [岬めぐり]

 新潟県の海岸線は、かなり長く北東から南西にわたってのびているが、ゆるやかなうねりでほとんど目立った凸凹がない。100万分の1くらいの地図で見ても、唯一の出っ張りといえるのが、上越の鳥ヶ首岬である。ところが、地図ではここだけ目立っているこの岬も、バスで走っていると、なんの変哲もない単なる道路にすぎず、どこが岬かわからず、まだかまだかと思っているうちにもう降りるチャンスを失して通り過ぎてしまったのだ。

 上越市といわれてもピンとこない人でも、直江津といえばだいたいの見当はつく。桜が満開の北信濃から、信越線に乗ると豊野を過ぎた牟礼あたりから電車は川沿いに登り始める。ナウマン象の化石が出た野尻湖がある黒姫は、結構広い盆地になっている。川の流れがいつの間にか逆になり、雪の残る妙高の山並みを眺めながら上越に降りてきたが、このコースを通るのは初めてだった。折から大河ドラマにあやかろうとやたらあちこちに「風林火山」の幟が立っているので、いやでも上杉謙信もここを越えて川中島まで進出したのだ、と意識せざるを得ない。
 謙信の居城だった春日山城もある直江津は、親鸞聖人が法然に連座して越後に流されたとき、上陸したのがここの浜だった。五智国分寺はその遺跡でもあるが、今回は岬めぐりで先を急ぐ。
 結果的には待ったほうがよかったのだけれど、次の北陸線の下りまで1時間近くも待たなければならないので、駅前からタクシーに乗って自転車道路の端まで連れて行ってもらった。そこまでいけば、ひょっとしてレンタサイクルでもあるのではないかという、かすかな期待もあった。
 直江津の谷浜という海水浴場から糸魚川まで、おそらく自転車道としては日本一だろうという久比岐自転車道が走っている。そうであれば、レンタサイクルくらいその入り口にはあるだろうと思った。女性の運転手さんは、「うちも家族で走ることがあるけれど、自転車は持ち込みなのでレンタサイクルはないかもしれませんよ」と心配してくれるが、なくても行き当たりばったりの変化を楽しめばよい。
 やっぱりなかった。
 久比岐自転車道は、国道8号線の脇から、ごく普通に歩道が分かれたという感じで始まっているが、あたりには人家もまばらで、レンタサイクルどころではない。じゃ、有間川の駅まで行ってくださいと、その先の北陸線の駅まで行ってもらう。そうそう、言い忘れたけれど、この自転車道は昔の北陸線の線路跡を利用してできているのだった。

 有間川駅も無人駅で、西側に岬も見えるが、これは鳥ヶ首岬ではない。停留所の時刻表を見れば、運良くしばらく待てば一日二本しかないバスがくるらしいので、それを待って乗ったのだが、それで停留所にそれらしいところがあるかと思っているうちに乗ったまま通過してしまった、というわけだ。
 そのままでは、やはり「岬めぐり」の看板が泣こうというものだ。翌日は、改めてここは上越市の西の端にあたる名立の駅で降りて、てくてく歩いて岬まで往復してきた。



 ただ道路がカーブしているだけの岬で、それらしい由緒も能書きもなにもない。だが、それもまたよいではないか。見上げれば、崖崩れ修復の跡というかはげ山というか、その上に四角い灯台があるが、これも普通のイメージとはずいぶん違う灯台である。この明かりを、昨夜の宿の窓から眺めていたのだ。古い町並みの道を歩いていると、ふとマンホールのふたにも、この灯台と夕日があしらわれていることに気がついた。地図上の存在感とはうらはらに実際には目立たない岬と灯台だが、いちおう地元のシンボルであるらしい。
 その名は、どうやら遠くから見ると、鳥が首を前に伸ばしているようにみえるところからついたものであるらしい。首が長く伸びる鳥といえば鴨とか鴫とかそういう類の鳥であろうが、ひょっとすると新潟によく飛来している白鳥かもしれぬ。


 名立の駅は、町並みから奥まった山側の、ちょうどトンネルとトンネルに挟まれた谷間にあり、そこを北陸自動車道の橋が高いところを渡るが、その下を名立川という川が流れている。次の電車がくるまで、また1時間近く待たなければならなかったので、桜は店じまいを迎え、立ち枯れ芦の間には緑の下草がいっぱいになってきた川原の土手に腰をおろして一休み。

 冬には鮭が遡上してくるらしい(「資源保護のため投網による捕獲はご遠慮願います」という控え目な看板が立っていた)川の音と、小鳥の声を聞きながら、ぼんやりと時を過ごした。


▼国土地理院 「地理院地図」
35度1分12.88秒 138度30分59.57秒
106とりがくびみさき-6.jpg
dendenmushi.gif北越地方(2007/04/19〜20 訪問)

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タグ:新潟県 灯台
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コメント 4

とも〜る

新潟といえば、角田岬ってところに行きたいとずっと思っているのですが、なかなか実現していません。角田岬も地図で見ても出っ張っていないので、いまいち場所がつかみづらいのですよ〜。
そこには普通のイメージの灯台が建っていますよ^^
ネットで写真を調べると、なかなか岬全体のロケーションがよさそうなので行ってみたいのです♪
by とも〜る (2007-04-22 15:45) 

dendenmushi

@とも〜るさん、おはようございます。実は今回の岬めぐりの計画に当たっては、最初は角田岬の方まで行くつもりだったのです。でも、親不知の方と一緒では、道中が長くなりすぎるので、二つに分けることにしました。
今回は、新潟県の南海岸だけですが、次回は弥彦山から角田岬、村上市の岩ヶ崎、山北町の狐崎あたりまでが候補ですね。
 最近は横着をして、5万分の1の地図を持たないで、もっぱらネットの地図頼りなのですが、これもいいかげんといやあいいかげんな歩き方で、やっぱりちゃんとした地図があったほうがいいかと、反省中。
 角田岬は、そんなに奥まっていないし、アプローチは問題なさそうですね。
by dendenmushi (2007-04-23 06:09) 

knaito57

アッハハ……たしかにあそこは凸凹の少ない曲線ですね。もしかしたら、海に接する県で岬が一番少ないんじゃないですか。「どこにも人が住んでいるものじゃ」とおっしゃるけれど、出不精としては「どこへでも出かけていく人がいるもんじゃ」と感嘆します。糸魚川で、松本清張の“翡翠”の小説を思い出しました。
by knaito57 (2007-04-24 07:26) 

dendenmushi

@う〜ん、一番少ないかどうかはわかりませんが、新潟県の海岸線は250キロ程度はありそうで、これはかなり長い。その中で岬がいくつあるか、これから順に全部行ってみるつもりですので、数えてみてくださいね。
 多くはないですし、ムリヤリなところもありますが…。
 「どこへでも出かけて行く」といえば、確かにそうですがねえ。
 でんでんむしの場合は「岬があれば出かけて行くだけ」ですから…。
 誰かが、「男は自分がこだわるものにこだわっているだけだ」といっていますが、それは言えてる。
by dendenmushi (2007-04-24 10:08) 

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