『扉の外』 [ライトノベル(少年・総合)]
『十五少年漂流記』(『二年間の休暇』)か『蝿の王』か。『蝿の王』かな、やっぱり。
突然、閉鎖空間に放り出され、人工知能のルールに支配される学生たち。チェスのような陣取りゲームは、ゲームでありながら、学生たちへの食料や娯楽の配給とリンクしている。クラス対クラスの陣取りゲームは、争うことなく互いを信頼すれば平和にいられるが、互いに疑心暗鬼になり、食料や娯楽を削って(ゲーム上の)武器を生産し、相争う。
人工知能のルールに従うことを拒否した主人公・千葉紀之は、そんなクラスメイトたちを冷ややかに眺めたり、クラスメイトのリーダ役の女生徒とゲームの戦略を相談したりする。
クラスを纏める役を、複数のクラスで女生徒に設定して、主人公にそれぞれの女生徒と交流させることで、ライトノベルらしさを出しつつ、外面と内面のリンクやギャップを描いていて、ややステレオタイプとはいえ、人物像に幅を出している。
結末は、はっきりと決着をつけておらず、やや物足りない終わり方だけれど、これはその方がリアリティがあるという判断だろうか。ここはそこまでこだわらず、セオリーを守った終わらせ方の方が私としては好みだが。
萌え系が林立するライトノベルの中で、ライトノベルらしさを保ちつつ、ジュヴナイルと言えるようなテーマと書き方はいい感じ。
★★★★
コメント 0