SSブログ

いけてる問診(3) [救急医療]

↓ポチッとランキングにご協力を m(_ _)m

特徴的な病歴で、一気に鑑別を絞り込める問診。私はそんな問診が大好きだ。今日は、そんな第3弾。
本日、自分の身近な初期研修医達に提示したある患者の病歴。彼らは、全員、撃沈・・・・・・。

その病歴を紹介する。 近医からの紹介状に記載された病歴

45歳女性 4日間続く頭痛

4日前より、右頭頂部を中心としてゆっくりとした頭痛が始まった。痛みが増加するため当院を受診。起き上がると痛みが増強するため、食事も車の運転もできないほどの痛みです。
本日になって、後頚部まで痛みが広がってきました。嘔気なし。麻痺なし。頭痛の程度がひどいため、貴院にて御高診願います


この紹介状をもってきたその日は休日。その日の当院の外来は非常勤医師が担当していた。

この紹介状をうけたその担当医は、当然CTを取っていた。異常はなかった。そこで、機能性頭痛と診断をくだして、対症療法で帰宅させていた。

その3日後、やはり頭痛が改善しないとのことで、午後の我々の救急外来へやってきた。

脳外科の先生方や神経内科の先生方は、ぴんとくると思います。 
その他の先生方はいかがでしょうか? びびっときます?

今日はここで止めます。
続きは、連休時にでもアップします。

 

では、続きです。

たくさんの方から、コメントをいただきました。ありがとうございます。

私達は、紹介状のある一文に注目した。

起き上がると痛みが増強するため

もしかして・・・、と思った。

で、患者に聞いてみた。
「横になっているときに、痛みはありますか?」

患者は答えた。
「痛みは、ありません。起き上がるときだけで、15分くらいが限界です」

横になると痛みが消えます

おお、きたあ・・・・ という感じだった。
交通事故の既往や、髄液検査の既往をしつこく聞いたが、いずれもないとのこと。
しかし、それでもこの路線を私はあきらめなかった。
実は、特発性の低髄液圧性の頭痛ってがあるのをどこかで昔聞いていたことがあったからだ。
特発性低髄液圧性頭痛(SIH : spontaneous intracranial hypotension

私達は、この問診のみで、診断的に決着をつけた。
もちろん、専門家による確定診断というわけではなかったが、救急初期診療レベルの暫定診断としては、これで十分だろうと私は思う。

当院の神経内科部長にコンサルトした。
部長も我々の暫定診断に同意をしてくれた。

後日、MR検査が施行され、造影効果のある硬膜の肥厚も確認され、ほぼ診断は確定した。
神経内科部長外来において、、ブラッドパッチ療法を行なっている専門施設へ紹介を進めていた矢先に
残念ながらある合併症が発生してしまった。

硬膜下血腫である。

http://www5e.biglobe.ne.jp/~ebinansc/teizuiekiatu.htmより引用
SIH患者の10%程度に硬膜下血腫の合併が認められる。これは架橋静脈がMonro-Kellieの法則に従って拡張するのに加えて、脳の下方偏倚により過伸展することにより、わずかな刺激により破綻しやすくなるためと考えられている

危ういところであった。私達のところで方向性を見出せないまま、硬膜下血腫を発症したら・・・・と思うとちと怖い。
患者は、硬膜下血腫の治療とブラッドパッチの治療を受けることができたらしいが、その後の正確なフォローは出来ていない。無事を治療がうまくいったことを願うばかりである。
このケースのように、特徴的な問診が、診断に大きく役に立つ場合もある。これは、問診する側がその疾患を知っているか否かで勝負が決まるといっても過言ではない。適切な救急初期診療のためには、浅くてもいいから広範な知識が求められていると思う。まとめます。

本日の教訓
問診で、起立性頭痛をつかまえたら、SIHも考えよう


コメント(16)  トラックバック(0) 
共通テーマ:日記・雑感

コメント 16

コメントの受付は締め切りました
偽精神科医

あ、これは、先生のお好きな例のアレですね。
血沈を測定すれば一発っていう・・・・。確か臨床研修部の部長先生も好きだった記憶もあります。
by 偽精神科医 (2007-07-12 23:10) 

moto

起立性頭痛ということで、低髄圧症候群はどうでしょうか?「脳外科の先生方や神経内科の先生方は、ぴんとくると思います」というあたりで、そんな気がしたのですが。
by moto (2007-07-12 23:14) 

あおむし

CTを撮るなら当然血液も見てるはず。ESRまで調べないにしろ、WBCやCRPはチェックしたはず。それも正常だったとすれば側頭動脈炎でもない。

副鼻腔炎ならCTで見えるはずですが、CTで見えないのもあります。真空副鼻腔炎の初期です。時間が経つと液体が貯留してきます。蝶形洞でこれが起きていると強い痛みが後頚部まで広がります。

各副鼻腔の自然孔はいずれも小さく、粘膜腫張などで閉塞することがあります。開孔部が閉塞すると、副鼻腔の空気中の酸素は吸収されて陰圧を生じます。急に陰圧になると強く痛みます。

でもこれは、
>脳外科の先生方や神経内科の先生方は、ぴんとくる、
事はないでしょうから、違いますね。
by あおむし (2007-07-13 00:27) 

偽精神科医

>moto先生

あ、そうですね。間違っていました。
リウマチ性多発性筋痛症はじっとしていても痛いので。
by 偽精神科医 (2007-07-13 00:28) 

クーデルムーデル

1 交通事故などの外傷が以前になかったか聞き、あれば低髄圧を疑う。
2 仕事でパソコンを常時使用するなど眼精疲労が顕著であれば、筋緊張性頭痛を疑う。

っていうのはどうなのでしょうか。
by クーデルムーデル (2007-07-13 09:04) 

コラレス

まさか、ルンバール後ってことはないですよね(笑)
by コラレス (2007-07-13 14:36) 

べっちょむ

いつも見させていただいています。
大変ためになります。ありがとうございます。

最悪のこと、を考えるくせがついてまして、、

破傷風、あるいは、髄膜炎!!

では、どうでしょうか。
by べっちょむ (2007-07-13 16:36) 

ゆう

脳底動脈解離か脳静脈洞血栓症でしょうか?
以前に受け持った症例では,いずれもCTでは捉えられなかった
経験があり,頭部MRIなどで確認できましたが...

痛みが移動しているので前者の方があてはまるのでしょうか?
by ゆう (2007-07-13 17:33) 

ER

「起き上がると痛みが増強する」、「車の運転」から、過去に自動車での事故歴のある方の低髄液圧症候群かと考えましたがいかがでしょうか?
by ER (2007-07-13 17:44) 

めい

うーむ、いちおう神経内科医のたまごとして・・・

やはりこれだけの激しい痛みというのは椎骨脳底動脈系の解離ではないでしょうか?
後頚部に痛みが移動してますし。

MRAやMRA元画像をじっくり見るべきかと。

低髄圧はこれほど激しい痛みはこないイメージです。
by めい (2007-07-13 19:35) 

ひろとも

初めまして、いつも拝見させていただいています。
今回の症例、とりあえず「目見えてますか?」と聞き、目を触って、対座法で視野検査してみることも必要だと思います。
ということで緑内障発作というのはいかがでしょう?
by ひろとも (2007-07-13 20:01) 

ミチバ

久々によらせていただきました。
ズバリ、脳脊髄液減少症でしょう。つい最近のLancetのCace reportにもあったと思います。
あと鑑別として脊椎骨脳低動脈乖離や側頭動脈炎を挙げたいと思います。(言ったモン勝ち)
by ミチバ (2007-07-13 21:23) 

勤務医です。

やはり 横になっていれば 楽なのですかね。
低髄液圧は 原因不明のことが 実は多いと思います。
自然経過で 改善する患者さんも 実は多いのですが。

CTで異常なくとも MRIの冠状断と矢状断が 診断には 有用です。
髄液圧の測定のために 腰椎穿刺すると 増悪させてしまうこともあるので、原則的には していません。
これまで 最近の何人かは 入院もできないというので、MRIで診断確認をした後は、自然経過で 改善を待ちましたが それで治っています。1ヶ月ほどではありますが。

どうしても治らないときに MRIでも リーク部位が確認できないときに
腰椎穿刺で リークの部位の確認のための 造影か 核医学的なけんさでしょうかね。
by 勤務医です。 (2007-07-13 21:52) 

元なんちゃって救急医

>偽精神科医様  PMRネタはそのうちにということで
>moto様  いつもありがとうございます。お見事です。
>あおむし様 副鼻腔炎は前かがみで痛み増強ってのがありますね。
>クーデルムーデル様 お見事でございます。
>コラレス様  ポイントのご指摘どおりです。
>べっちょむ様  ワーストシナリオで行動する。すごく重要です。
>ゆう様 脳静脈洞血栓症を診断する自身は私にはありません
>ER様 お見事です。事故がなくてもありえるということもポイントかも。
>めい様 けっこう激しい痛みもあるようです。
>ひろとも様 緑内障も重要ですね。体位は関係ないかもしれません。
>ミチバ様 ご明察どおりです。お見事です。
>勤務医です様 ご明察どおりです。お見事です。
by 元なんちゃって救急医 (2007-07-14 08:44) 

NR

合併症としてのSDHですが、通常手術を必要とすることはなく、
問題のないことが多いです。むしろ、両側に薄いSDHを見た時に、
低髄圧を疑います。
by NR (2007-07-14 21:07) 

勤務医です。 

ブラッドパッチを積極的に進めるべき根拠は自分は持っていませんが
一般的には勧めているんでしょうか。

SDHが起きても 圧が高くはないので 確かに 自然経過に任せられることが多いようにも思います。

どこからリークしているかを確認する必要性があるのか
でもそれを確認しないでは ブラッドパッチは行えない と思います。

結構 発症した患者さんは 臥床しながらでも 家での仕事をしていたりして 過ごしていますよね。。
by 勤務医です。  (2007-07-14 21:26) 

トラックバック 0

この広告は前回の更新から一定期間経過したブログに表示されています。更新すると自動で解除されます。