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奈良妊婦死亡事件の提訴記事をみて思うこと [医療記事]

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例の奈良大淀病院の妊婦死亡事例が、民事の訴訟を提起したようだ。この事例の特徴は、医師の殆んどは、医学的な過失なしと検証済みに関わらず、マスコミ(特に毎日新聞)が世論扇動の陣頭をとり、家族VS医師(ひいては医学会)の対立を際立たせているというのが大きな特徴だろう。この訴訟の中心である石川弁護士は、上手にマスコミを利用して医師掲示板m3.comを徹底的に叩き、医師側の声を封殺しようとするあたり、かなりの切れ者の印象をうける。 時期を見計らって、いよいよ訴訟ということころでしょうか。

私は言いたい。

声なき善良な方々へ

 「マスコミを盲目的に信じてはいけない」 

彼らは、医師を悪者にしようという意図に基づいて記事を書いているから。彼らは、事実といいながら、巧みな表現で、医師悪者の印象操作を行っている


座位先生のブログもマスコミをどう見るかという視点において大変参考になりました。ありがとうございました。

次の記事で、その印象操作について、私見を述べてみたい。

http://headlines.yahoo.co.jp/hl?a=20070524-00000006-mai-soci

<妊婦死亡>病院と医師の過失主張 遺族が提訴 奈良

奈良県大淀町立大淀病院で昨年8月、同県五條市の高崎実香さん(当時32歳)が分娩(ぶんべん)中に意識不明となり、転送先で脳内出血で死亡した問題で、遺族は23日、病院を経営する大淀町と担当産科医を相手取り、慰謝料など損害賠償を求める訴訟を大阪地裁に起こした。「大淀病院の担当医が脳の異常を見過ごしたことが死亡につながった」と過失責任を主張している。
 提訴したのは夫晋輔さん(25)と、転送先で生まれた9カ月の長男奏太(そうた)ちゃん。訴状によると、実香さんは昨年8月7日、出産のため大淀病院に入院。翌8日午前0時ごろ頭痛を訴えた後、突然意識を失った。産科医は頭痛と陣痛から来る失神と説明し、仮眠のため退室。同1時40分ごろ、両腕が硬直するなど脳内出血をうかがわせる症状が表れたが、来室した産科医は子癇(しかん)発作(妊婦が分娩中に起こすけいれん)と誤診して処置をせずに病室を離れ、同4時半ごろまで病室に来なかった。
 病院は同2時ごろまでに転送先探しを始め、実香さんは19病院で転送を断られた後、大阪府吹田市の国立循環器病センターに同6時ごろ到着。CT(コンピューター断層撮影)で右脳に大血腫が見つかった。奏太ちゃんは帝王切開で生まれたが、実香さんは8日後に死亡した。
 死亡診断書では同センター受診時、実香さんの意識が刺激にまったく反応しないレベルに達していたなどとする記載があり、遺族は「脳内出血の発症は午前0時ごろ」と主張。「これ以降、家族らが再三脳の異常を訴えたのに産科医はCTなどの検査をせず、手術でも回復しないほど脳内出血を進行させた」としている。
 大淀病院の原育史(やすひと)院長は「今後、司法の場において(立場を)明らかにしてまいりたいと考えております」とのコメントを出した。【中村敦茂】

論より詭弁という本がある。この本の中から、ある一説を紹介する。

家庭裁判所の厄介になった少年について、調査官は次のような所見を記した。

「頑固で柔軟性に欠け、融通がきかない。自分の思い通りにしていたいとの気持ちが強く、他人から干渉されることを嫌う。目下のものに対しては、ボス的で強圧的な態度に出るが、目下の者に対しては卑屈に振舞う。」

私(本の著者)が、少年を弁護したいという意図から、この所見を次のように書き換えたらどうだろう。

「意志が強く、一途な性格で、曲がったことが嫌い。自立心旺盛で、自分のポリシーをもっており、周囲の意見に流されない。年下の者に対しては、親分肌なところを見せるが、年長者に対しては礼儀を守り、謙虚である。」

私が、こちらこそが少年の真の性格だと主張するとき、私は詭弁を弄していると見なされるのか。私は少年の性格について何か明らかな嘘を書いたのか。

いかがでしょうか? 何が真実かというよりも、書き手の意図ありきで、こうも論調が変わるのです。言葉・文章を職業としているマスコミ人は、なおさら、一つ一つの表現に十分に自分達の意図を組み込んでいると思います。そう、「真実」「事実」という大義名分のもとに隠れて。

上記記事を検証します。

>訴状によると
訴状は、大変長いものであり、かならずここに要約というステップが入ります。この段階で、記者側の意図が必ず入ります。そして、どう書こうと、「訴状により」ということで、書き手自身の責任を回避できるようになっています。

>仮眠のため退室
医師の当直は、患者一人のためだけではありません。管理する病棟全体の患者さんのためです。医師が最初の診察で、様子観察可能と判断して、仮眠をとるのは、次に起るかもしれない新たな事態に備えて、自分がベストをつくすために、まさに的確な行動なのです。一人の患者だけはなく全体を考えた行動とはそういうものです。ここにこの文章をわざわざ入れた記者の意図として、仮眠というとんでもない怠慢をしているひどい医師のような印象を読者に与えようとしていることを垣間見ることができます。

>誤診して処置をせずに
誤診、処置をせずという表現は何事ですか! 悪意以外のなにものでもありません。
「臨床状況は大変難しい判断ではあったが、バイタルサインなどの経過観察は怠らず、経過を慎重に見ていた」 とも書けますよ。毎日さん。

>同4時半ごろまで病室に来なかった
これは、懸命に仮眠も取らずに、患者のためを思って受け入れ先を探していたのではないのですか? 毎日さん、患者に寄り添いたい気持ちも商売上わからないでもないですが、あなた方の記事がどれほど医師の心を傷つけているか、考えてみてください。

>死亡診断書では同センター受診時、実香さんの意識が刺激にまったく反応しないレベルに達していたなどとする記載があり、遺族は「脳内出血の発症は午前0時ごろ」と主張
これは、まったく医学的整合性がありませんよ。家族の主張と死亡診断の話を、さも意味ありげに無理やり結び付けていませんか? それは、医者が悪かったという印象を読者に与えようとする印象操作以外のなにものでもありません。

大淀病院に関連する報道は、このような背後にあるマスコミ側の意図を考えながら、読み取っていただければ幸いです。

国民の一人ひとりが、浅薄な情報に流されないという意識をもつことが必要だと思います。

どうか目の前の医師を信じて、

医療を受けてください。 


マスコミ報道に振り回されないでください。


お願いします。

コメント一覧
激しく同意。なんという悪意に満ちた報道か!
えぶりでい新聞は形だけ反省しているように見せかけて、中身は全く変わっていないことを見事に証明していますね。
written by 山口(産婦人科) / 2007.05.24 17:56
私も全くもって同意です。私も座位先生の指摘するNHKのニュースを見て、同じ感想を持ちました。あまりに一方的過ぎて、もう何とも言えず悔しい想いがしました。
written by 春野ことり / 2007.05.24 20:12
素晴らしい、御指摘です。
NHKNEWS9のビデオをみて、ああ、もうマスコミはだめだなと思いました。
患者様のご不幸には痛み入りますが……。
ご主人の主張は、主張。現時点では真実だとはいいがたいのに。
裁判となった以上、原告の主張のみを肯定的にとりあげ、被告を攻撃するのは反則でしょう。

written by akagama / 2007.05.25 00:11
初めまして。某掲示板の奈良大淀報道のスレから飛んできました。NHKのあの報道には、目が点でした。
wiki「テレビ離れ」「情報・メディアリテラシー」の項目あたり、面白くて良いです。マスコミ報道、詭弁と自己愛の固まりになってしまいましたね。
written by purin / 2007.05.25 00:18
還暦過ぎの両親は夕食時にこのニュース映像を見ながら
「これは騙されとるな」
「かわいそうに、何も耳に入らんのやろうね」
と、直感で何かを感じたみたいです。
意外とたくさんの人が違和感を感じているのではないかと、サイレントマジョリティに対しては楽観的ですが、果たしてノイジーな一部がどうかというと非常に不安です。

非医療者の私にとっても気分の悪いニュース映像でした。

written by 一般人です / 2007.05.25 01:19
論より詭弁からの紹介、なるほどと読ませて頂きました。
written by Tai-chan / 2007.05.25 05:27
今日のm3医療ニュースは正に燃料満載といったところですね。

>真実をはっきりさせ、謝罪してもらいたい。

と既に医療サイドに非があるとの結果ありきのコメントや、

>医師の中には「100%の安全はあり得ない。患者側は出産の危険を理解していない」などと、訴えを起こす患者や家族を批判する声もある。だが、今回はこうした批判は当てはまらない。

と断言する記者。
こんな仕打ちを受けてなお、

>もうすぐ出産する人がいる。遠くに行かないといけない不満もある。大淀病院は悪い部分を改善して、産科をもう一度やってほしい。

なんて言われても無理です。
written by ヤバクリ / 2007.05.25 09:27
皆様、たくさんのコメントをありがとうございます。

医師の方は、報道がおかしいことで意見の一致を見ることは言うまでもないのですが、一般の方からも違和感を感じているとお聞きすると、なんだかほっとします。

マスコミさんは、どこのブログでも出てこないですねえ。
これだけいろんなところで言われても・・・
だんまりなんですかね。
written by なんちゃって救急医 / 2007.05.25 21:55

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テレビのつくる罪ー大淀事件提訴に絡めてー (天国へのビザ)
http://blog.m3.com/Visa/20070525

メディア リテラシーとクリティカルシンキング (臨床医学に環境・労働の観点を)
http://blog.m3.com/OEM/20070525/3

正鵠を得る (kameの いい味出してね)
http://drkame.at.webry.info/200705/article_30.html

 


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