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悩ましい若い女性の上腹部痛 [救急医療]

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若い女性の腹痛は、考えることが多くなり、時間外診療に携わるものにとって、ストレスフルなものである。常に「妊娠」「婦人科救急」のことを考えておかなければ、いつ地雷にはまるかわからないからだ。
ところで、同じ腹痛といっても「上」と「下」がある。婦人科救急は、確かに下腹部痛のほうが頻度が圧倒的に多い。しかしながら、上腹部痛だからといって、それだけで婦人科疾患を否定できうるものでもない。その一例としては、尿路結石に潜む地雷(その2)のエントリーで述べた超レアケースのほかにも、もっと頻度が高いものとして、こんなものもあるということを本日のネタにしてみたい。

 

21歳女性  大学生

過去に発熱と腹痛で、骨盤内腹膜炎を疑われ、抗生物質治療を受けたことがある。性的には活動度が高い。深夜の2時ごろ、ここ3日続く上腹部痛ということで、時間外外来を受診した。来院時の体温は、37.1度。心か部に圧痛あり。軽くリバウンドを認めた。白血球13000、CRP0.3であった。妊娠反応は(-)。尿潜血(-)。当直医は消化管穿孔や虫垂炎を疑い、CT検査を行ったが、どちらも否定的であった。その他、これという所見なし。一旦、帰宅となるも、腹痛改善しないため、救急車で同日、昼再来となった。

激しい心か部痛を訴えていた。 我々もCTを見てみたが、当直医と判断は同じであった。そこで、緊急の胃内視鏡を行ってみた。異常はなかった。

う~~~~ん?????????
という雰囲気が救急部に生じた。

性的に活動度が高いという情報から、下腹部痛は(-)であるもの、骨盤内腹膜炎の可能性も含めて婦人科に診察を依頼した。結果、急性付属器炎は否定的との診察結果であった。クラミジアと淋菌の検査は提出された。

結局よくわからないまま、抗生物質の内服を数日間出して、内科外来に再来してもらう方針で帰宅とした。
4日後、再来。クラミジア陽性が判明した。症状は改善していた。

結局、なんだったんだろう?という話の中で、ある医師が、「Fitz-Huh-Curtis症候群(肝周囲炎)じゃないの?」と言った。それを聞いて、私はなるほどなあと思った。 言われてみて気がついた。すぐには思いつかなかった・・・・・。

CTをその目で見直しても下記URLに述べられているようなCT所見はなさそうだった。この症例は、本当に肝周囲炎でいいののか?確たる証拠はそろっていない。しかし、状況証拠としては十分だと思う。

若い女性の上腹部痛の鑑別のひとつに、肝周囲炎のことを知っていると少しかしこい医者にみえるかもしれない

教訓 
若い女性のよくわかない上腹部痛には、肝周囲炎を考えてみよう。

参考URLです。
Fitz-Hugh-Curtis症候群とは
CT所見に関する論文

コメント一覧
当院は下町にあり、性的活動度の高い人がよく受診します。よって内科医にも「若い女性でCRPやWBCがそれほど高くなく、その割に上腹部痛を訴える人は肝周囲炎を疑う」と言うのをたたき込んでいます。
これのミソは、体をひねるなどの動きで痛みが増強するかどうか。胆石と違い、肝周囲炎なら痛みが増強します。クラミジア単独だとあまりCRP,WBCは上がりません。CTで発見するのは難しいですよ。

なお、上腹部痛を主訴に受診したが、実は黄体血腫の就寝時破綻でモリソン窩まで出血が流れたためと言うのも経験があります。
written by 山口(産婦人科) / 2007.05.17 16:14
山口(産婦人科)先生

ご専門の立場からのコメントありがとうございました。
体動時痛もFHCSの所見ととってよいですね。勉強になりました。
written by なんちゃって救急医 / 2007.05.17 20:51


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