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肺水腫をみたら(続編) [救急医療]

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まず、前エントリー肺水腫をみたら・・・をごらんになってない方は、まず前エントリーからご覧ください。本編はその続きでございます。ミチバ様、僻地外科医様、moto様コメントありがとうございます。本編アップをもちまして、先生方のコメントを公開とさせていただきました。

では、続きです。

研修医の先生のコンサルトを受けて、循環器当直のK先生がやってきました。
「おお、心不全やな、ありがとう。あとやっとくわ。」
そして患者はCCUへ入った。利尿剤などで肺水腫は改善をみたにも関わらず、意識は戻らなかった
「おかしい・・・」
意識障害として翌朝一番で頭部CTがとられた。
SAH(くも膜下出血)であった
大至急、脳外科へ転科となった。

いかがでしょうか? これは、私の自検例と私がいつもお世話になっているmedtoolz様のサイトからの引用(病名はひとつではない)を組み合わせて私が創作した物語でした。 前エントリーでお示しした病歴は、自検例そのものです。実際の自検例では、頭部CTでSAHの診断が先について、次に胸部レントゲンの情報が加わりました。ですので、この肺水腫は、以下にお話しますように、私たちは混乱なく受け入れることができたのです。

もし、レントゲンがCTよりも先になってしまったら・・・。こんな地雷の踏み方をするんじゃないかと思ったのが、前回と今回を通してのテーマでした。medtoolz様は、上記引用サイトの中で次のような指摘をしています。

胸部単純写真上は確かに肺うっ血があった場合は、思考がそこで停止してしまう

じつにするどい御指摘だとおもいます。

ミチバ様は、前エントリーの話から、neurogenic pulmonary edema(神経原性肺水腫)の可能性を一番に指摘されておりました。ミチバ様のご指摘のとおり、これは神経原性肺水腫です。

重篤なSAHをよく治療される脳外科医の先生方にとっては、この神経原性肺水腫は臨床上よくご経験されておられることと思います。私自身は、ERで初期診断と初期対応のみやってきましたが、重症SAHで、この肺水腫が多かったような気がします。以下、UpToDateからの引用です。英語のままでごめんなさい。

・Neurogenic pulmonary edema (NPE) represents an increase in pulmonary interstitial and alveolar fluid due to, and usually developing rapidly after, acute central nervous system injury.

・The primary causes of NPE are epileptic seizures, head injury, and cerebral hemorrhage

・NPE may complicate subarachnoid or intracerebral hemorrhage . As an example, one series of 78 fatal cases of subarachnoid hemorrhage found pathologic evidence of pulmonary edema in 71 percent

・Various theories regarding the pathogenesis of NPE have centered around potential roles for the hypothalamus and medulla, elevated intracranial pressure, and activation of the sympathoadrenal system .

SAHは見逃すと、患者さんの生命はもちろんのこと、関わった医師の職業生命にも関わりかねない一大事です。日本全国で、私が創作した物語のようなSAH見逃しパターンが発生しないことを祈ります。

最後に今日の教訓です。
肺水腫+意識障害 →SAHの可能性も視野に入れよう

 コメント一覧
・いつも興味深い症例ありがとうございます。実は、回答を送る前にUpToDateを確認して送信しました。そこで改めて、SAHの約7割に肺水腫が合併することを知りました。(ただし、死亡例ですよね)
・medtoolzさんのブログもみせていただきました。勉強になりそうなので、ちょこちょこ見せてもらおうと思います。「病名はひとつではない」は教訓にしないと。
written by ミチバ / 2007.04.22 21:36
ミチバ様

コメントありがとうございます。
病名はひとつではない→これをテーマに自検例を紹介してみたいのがあります。おいおい、また書かせていただきます。
written by なんちゃって救急医 / 2007.04.22 21:54
なるほど。
 高血圧、意識障害からSAHの可能性はちょっとだけ考えましたが、neurogenic pulmonary edemaという概念は知りませんでした。大変勉強になりました。

 胸部外科・循環器内科を経た人間であの写真から左心負荷を考える人は希かなぁ。コメントにも書きましたようにbifurcation(気管分岐)の開大がないのが否定要因です。静水圧亢進型の肺水腫ではなく透過性亢進型の肺水腫を考えると思います。
written by 僻地外科医 / 2007.04.22 22:44
こういうQ&A形式のブログというのもいいですね。年をとると恥をかくのが億劫になりますが、間違えて恥をかいた症例ほど印象に残って、次に何かのときに役立つものです。ですから、ほかの皆さんも、こういうQ&Aには大いに参加して予想を書き込んでみるのをお勧めしますよ。
written by moto / 2007.04.23 01:03
僻地外科医様

コメントありがとうございます。ご指摘の通りかもしれません。この写真だけ見せられたら、循環器の医師は、なんかおかしいなあと思うでしょうね。
written by なんちゃって救急医 / 2007.04.23 06:42
moto様

コメントありがとうございました。今回、全部かくとスペース的に長くなりすぎるかなあなんて思ってるうちに、思いつきで、設問形式にしてみました。このパターンは今後も時々入れてみようと思います。
written by なんちゃって救急医 / 2007.04.23 06:45
これは難問ですね?確かにSAH後に起きてきて非常に予後が悪くなることを経験してますが、肺水腫像が先だったら??意識障害の程度が頭部CTを要求する臭いを発散していたのでしょう。お見事です。
written by 脳外科見習い / 2007.04.23 11:21
 子供でも痙攣重積などの児でこのような水腫様レントゲンを見ることがあります。ただ先に痙攣ありきなので、議論としてはなぜ胸部レントゲンがそうなったかということになります。知っていればわけないのですが、知らないとあたふたします。5年前にそういった症例に出会い、勉強になりました・・・
 症状がはっきりとSAHを示さず、この胸部レントゲンだけ情報にあるとすると難しいですね。
written by kudelmudel55 / 2007.04.23 13:28
確かに頭部外傷で患者が肺水腫になっている症例を何度もきてきました。neurogenic pulmonary edemaという概念でしたか、勉強させていただきました。
written by doctor-d / 2007.04.23 15:11
毎回大変勉強になります。ありがとうございます。
神経原性肺水腫、よく覚えておきます。
written by 春野ことり / 2007.04.23 17:28
脳外科見習い先生、kudelmudel55先生、doctor-d先生、ことり先生

皆様、コメントありがとうございます。皆様のご経験をうかがうとNPEは、痙攣、外傷などもあるんですね。まさにUpToDateの記載どおりですね。今後ともよろしくおねがいします。
written by なんちゃって救急医 / 2007.04.23 21:42


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