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「経済学的思考のセンス」 ・・・ インセンティブと因果関係 [仕事]


経済学的思考のセンス / 大竹 文雄
1.My Review Rank : ★★★★☆ + 三高の意味
2.Published Data : ¥819, 232Page,中央公論新社,’05/12
3.Review Point : 著者は 「経済学的思考法」 を以下の様に定義している.
 社会における様々な現象を、人々のインセンティブを重視した意思決定メカニズムから考え直すこと.
 "インセンティブ" と "因果関係" にポイントを置き、解り易く身近な例から導入し、身近な問題の「年金未納」, 「年功賃金と成果主義」, 「所得格差」 等について考察しており、かなりの構成力, 文章力を感じた.
 当Blogでも紹介した 「戦略的思考の技術-ゲーム理論を実践する」 (記事はこちら) と共に頭の体操としてお薦め.
 本書には、硬軟様々な「経済学的思考」の例が挙げられているが、我々の生活設計・人生設計に影響を与える「年功賃金の崩壊」について整理すると以下.

 年功賃金の存在理由は4点有り、各々問題点も持つ.
 ①人的資本理論
 理 由勤続年数と共に技能が上がるため、賃金も上がってゆく.
 問題点 : 足元のIT革命により、ベテラン労働者の技能が陳腐化し、若手の生産性の方が高い場合も有る.
 ②インセンティブ理論
 理 由 : 将来的な賃金上昇により、労働者の規律を高める(真面目に働かなかったら解雇する). 一種の供託金として機能.
 問題点解雇が困難な日本の大企業では難しい.
 ③適職探し理論
 理 由 : 企業の中で自分の生産性を発揮出来る職を見つけられる.
 問題点職種がそれほど多くない企業では適用出来ない.
 ④生計費理論
 理 由生活費が年と共に上がってゆくため、それに応じて賃金を支払う.
 問題点多様な家族形態と対応していない. 金融が自由化された現在、貯蓄を企業に委託するメリットは小さい.
 現在、「団塊の世代」を直撃している「年功賃金の崩壊」については、企業は ①の問題点の方を上手く利用する一方 ②(退職金も含む)と④を全く無視している(契約書は無いが契約違反の様なもの).
 団塊の世代はある意味被害者だが、我々はとやかく言ってもしょうがないので、自分のスキルUPに努めるしかない..
 
4.Summary : 導入部にある軟らかい話題の 「女性はなぜ背の高い男性を好むのか」 については以下.
 1950年代後半~1960前半生まれの女性が結婚相手の男性に求める条件として 「三高」 (高学歴・高収入・高身長) という言葉が流行した.
 ここで、 「高学歴」 と 「高収入」 とに相関が有る事は解り易いが、「高身長」 はただ単に見かけの話ではなく、 「身長プレミアム」(身長が高い程収入が高い)が存在すると考えるのが「経済学的思考」.
 米国・英国の調査では、身長が1インチ高いと、賃金が各々1.8%, 2.2%高くなる. 更に、身長が低い方から25%のグループと高い方から25%のグループの賃金差は13%以上になり、これは、白人と黒人との格差15%或いは、男女間の格差20%にも匹敵するレベルとのこと.
 最終的に調査では、現在の賃金を決める上で最も重要なのは、16歳の時点での身長とし、以下の因果関係としている.
 「身長が高いと青年期ての運動部への加入率が高まり、それが、社会に出てから組織を運営する能力(「困難にめげず、最後までやりぬく」, 「チームに貢献し、役割を果たす」 等々)の形成に役立っている」.
 また、男性の身長が高いと、自分の子供の身長も高くなり子供の所得も有利になる. 女性は本能的に高身長を条件の中に入れていた.

 なお、現在は 「三低」と言われるらしい. 「低姿勢」(⇒レディ・ファースト), 「低リスク」(⇒公務員などの安定した職業), 「低依存」(⇒相手を束縛せず、互いの生活を尊重する). バブル期は「高収入」がキーワードになり、雇用不安の時代には、「低リスク」がキーワードとなっているだけで、「収入」がポイントに変わりは無い.

 その他、 「美男美女は本当に徳か?」 (要因としては3つ ①雇用主の好み,②顧客が好む,③女優等容姿が必須), 「太るアメリカ人、やせる日本女性」 (調理時間の短縮⇒時間費用の低下), 「イイ男は結婚しているのか?」 (要因としては5つ ①分業仮説, ②労働意欲仮説, ③シグナル仮説, ④差別仮説, ⑤隠れた魅力仮説) 等の話題も面白い(恥ずかしながら、この手の話の方に興味を引かれた).


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