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旅の友にお勧めします 「博士の愛した数式」小川洋子  [大切な人とのことを考えたいときに]


「博士の愛した数式」 小川洋子 2005年12月出版 新潮文庫
(新潮社2003年初版)

ずっと気になっていたが、もう少しほとぼりが冷めてから読んでみようと思っていた。

私はどうも多くの人が「いい!」という本は少し遠慮してしまう傾向がある。
どこかにも書いたかも知れないが、「窓際のトットちゃん」を読んだのも確か初版から
10年以上経ってからであった。

この本を手にする機会は、突然訪れた。
急に訳あって羽田から飛ぶことになった時、空港の小さな丸善でこの本を見かけ、
どうしても読みたくなってしまったのである。
理由は不明。
「これを逃すと、多分読まないかもしれない」と私の予感が告げた。

行きは別の本を読んでいたので、帰りの飛行機で読み始めた。
そして、家につく頃にはあと数ページ、というところに来ていた。

どんな旅であれ、旅に似合う作品だと思う。多分、移動にリズムが合うのだろう。

結果として、私の丸善での勘は当たったと思うし、読んでよかったと思う。
それは、いくつかの理由がある。

 一つは、多くの忘れかけていた数字の面白さを教えてくれたから。
(フェルマーの最終定理が証明された、というニュースを知ったときの驚きを思い出した。
その割りに数学には弱い私である)

 一つは、いろんな人がこの世の中には生きていて、それぞれの過去と生き方を
選ぶと選ばざるとに関わらず背負っているということを再認識したから。
当たり前の事だが、そのことを意識せず人と接してしまうことがある。

 一つは、どんな状況でも相手への敬意あるいは愛があれば、関係を構築することが
できるかもしれないという可能性に気が付いたから。

あまりに稚拙な理由かもしれない。しかし、それが読んでの素直な感想だ。
距離を飛ぶと、思いもかけず心が無防備になる。
それでいいのかもしれない、と私は思う。

***************************************

昨日、雪の中を避けがたい用事で出かけた私は、電車の中で
本を読みながら目を真っ赤にしている女性を見た。

そこに、本の美しい存在意義の一つがあるのかもしれない、と感じた。

<Amazon.co.jp へのリンク>
※読みたいけれど図書館で借りたり本屋で探す時間の無い方はご利用ください。

博士の愛した数式

博士の愛した数式

  • 作者: 小川 洋子
  • 出版社/メーカー: 新潮社
  • 発売日: 2005/11/26
  • メディア: 文庫


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コメント 4

歩林

はじめまして!いつも楽しみにブログを読ませていただいています。
先日、旅行したときに私もこの本をたまたま手に取り
行きと帰りで読んでしまいました。
旅のリズムにあうとのこと、なるほどそうかもと思いました。
また、素敵な本をいろいろ教えてください。では!
by 歩林 (2006-01-22 16:38) 

ニライカナイ店主

歩林さんへ>
初のご来店&ナイスありがとうございます。
さらに、いつもご購読いただいているとのこと、さらに感謝。
同じ経験を偶然ながらしているなんて、なんだか不思議な感じがしますね。
旅をするときには必ず何冊か家から持っていくにも関わらず、
空港でかならずまた文庫を買ってしまいます。これはもう病気ですね。
でも、そのおかげで良きものに出会えることもあるので、やめられません。
また遊びに来てくださいね。こちらからも伺います。
by ニライカナイ店主 (2006-01-22 18:03) 

私も、みんなが「いい!」って言うのは、ひねくれた性格上(笑)
避けてしまいます。(「東京タワー」もまだ読んでません…)
でも、この本は私もなんだか惹かれるところがあり
本屋で、この文庫の前を何度もウロウロしていました(笑)
ニカライナさんが読んだ!ってことで踏ん切りがつきました~。
私も読んでみます。ニカライナさん、ありがとう!
執筆頑張ってくださいね!
by (2006-01-24 00:47) 

ニライカナイ店主

ねこばすさんへ>
ははは、同じような人がいて、何だか安心しました。
私も読んでませんよ、「東京タワー」。立ち読みはしましたけど。
私も丸善でこの本の前を何度もうろうろしました。しかも、一度店を出たのに、
また戻ってうろうろしたんです。もう、これは呼ばれた、と観念。(爆笑)
踏ん切りがついてよかったです。数学の復習をしたくなりますよ、
結局?ですけれど(笑)。
by ニライカナイ店主 (2006-01-24 01:03) 

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