トマトでなにかこしらえたもの [宮沢賢治]
宮沢賢治の童話「銀河鉄道の夜」の前半部分で、主人公のジョバンニが「トマトでなにかこしらえたもの」をたべている場面があります。ジョバンニのお姉さんが置いていったそれを、ジョバンニは「パンといっしょにしばらくむしゃむしゃ」とたべています。
これは一体どんなお料理なのでしょう。
本当のところは、賢治さんに聞いてみないことにはわかりませんが、そういうわけにもいきません。読者が想像力を膨らませて楽める部分です。
私はというと、これはラタトゥイユだといいなあと思っています。南欧風のトマトベースの野菜の煮物です。ジョバンニやカンパネルラという登場人物の名前もどこかイタリア風だし、物語に似合う一皿だと思うのですが・・・。
ところで、賢治さんの時代、大正8年発行の『西洋料理法』(赤堀峯吉・著)には「トマトオムレツ」「トマトスープ」「スチュードトマト(赤茄子牛酪煮)」「フライドトマト(赤茄子麺麭粉揚)」など。大正11年発行の『家庭料理講義録』(東京割烹講習会発行)には「トマトスチウ」(トマトシチュー)が載っています(このトマトスチウには、兎肉を使っています)。トマトでなにかこしらえたものは、当時も色々あったようです。ちなみに当時のレシピにはトマト(は赤茄子(あかなす))と記されています。
「こんな記事があるよ」と教えてもらいました(まだしばらくはリンクできるはず)。
この記事を見た私は「おおこれはっ」と、すぐさま “おとりよせ” してしまいました。
明治29年創業清水屋ケチャップです。国産初のトマトケチャップの復刻版です。
販売先は横濱屋本舗さん
※追記 2018.5.8 販売先のお名前とリンク先が変わっていたので変更しました
さて、これで「なにをこしらえ」ましょうか。
まずは、朝ごはんのスクランブルエッグにたっぷりつけていただきました。
一般のケチャップに多い、甘ったるくてべたっとした感じはなく、トマトのさわやかな味がして、そのあと香辛料がコクになってでてきます。トマトソースとしてピザなどにも使えそう。ラタトゥイユにも使ってみようかな。
このケチャップのいいところは、当時の状況を考えて(きっと農薬や化学肥料は使っていないだろう)、有機トマトと有機香辛料を使用しているところ。瓶にはちゃんと有機JASマークがついています。それがまた、現代において「おいしさ」につながっているというのもユニークですね。
賢治さんがたべたかどうかはわからないけれど、明治の人の気分になってケチャップを味わうと、食事の時間がいっそう楽しくなりました。
コメント 0