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久間防衛相の原爆容認発言と靖国神社 (1) [今日のニュース]

家に戻ってニュースをつけたら、ちょうど久間章生防衛相が言い訳をしてる映像が流れていた。そのことは後で触れるとして。

きょうは九段下方面で用事があったので、帰りに靖国神社に寄ってきた。訪れるのは初めて。外国人を含めて観光客が多いことに驚き。もっと右翼っぽい雰囲気を想像してたんだけど、普通の「観光地」および「市民の憩いの場」だった。これがそのときの写真。参拝しなかったけど。
                     
んで、遊就館にも行ってきました。靖国神社のHPでも”軍事博物館”と明記されているにもかかわらず、「入館料」ではなく「拝観料」を払うことになっている。これってやっぱり、「遊就館も宗教施設ですよ」というアピールで、だから「拝観料」には税金がかからないからなんだろうな。大人800円。高いよなあと思ったけど、京都のあこぎな寺の坊主たちは紅葉の季節になると1000円取る。それと比べれば…せっかく来たんだし…博物館好きとしてはやっぱり見ておくべきか…などなど、うじうじと迷った末に”拝観”したのでした。

入ったのはもう夕刻。閉館まで1時間ちょっとしかなくて、駆け足の意気込みだった。にもかかわらず、「私たちは忘れない!」という50分モノの映画を35分も見てしまい、あとはほんとに駆け足。いやー、資料の多さにびっくりした。もともと小さな博物館でも一度入ったらじっくり見尽くすタイプだから、遊就館をきちんと見学しようと思ったら一日がかり(一日では足りないか?)だと思う。滞在時間1時間はもったいなかった。あれだけの資料を見られるのであれば、800円は高くないかな。

資料の豊富さ、徹底したビジュアル化、多様な映像(2時間モノも含め、映画だけで4本もある!)などなど視覚と聴覚に徹底的に訴えかけてくる迫力はすごい。「軍事博物館」を名乗るだけあって、鎧兜や名刀まで展示されている。これまで見くびっていてごめんねって感じだ。

だがしかし。褒めてばかりでも仕方ないので、なんでここまで徹底しているか考えてみた。結論から言うと、やっぱり宗教施設だからだ。つまり、遊就館の使命は教義にのっとって拝観者を洗脳することなのだ。だから都合の悪い事実にはまったく触れないか、文脈上どうしても触れざるを得ない場合は「やむをえなかった」と表現される。自信があるところは資料を基に論理を組み立て、突っ込まれるとやばそうなところは「情」に訴えて物語を展開する。実に巧みなので、この辺をうまくかいくぐって見学することがポイント。見学者ノートには「英霊と比べていまの日本人は恥ずかしい」といった類のコメントが多かったが、そんな無邪気な心では”振り込め詐欺”にも簡単に引っかかってしまうのでは、と余計な心配をしてしまう。

それはさておき。
例えば、映画の話で言えば、欧米を真似して植民地獲得に乗り出し、朝鮮分捕りを狙って引き起こした日清戦争は、都合が悪いので「朝鮮の独立を助け、共にアジアの安定に寄与するため」とだけ言及してさらっと流す。第1次世界大戦は三国干渉だけに言及し「臥薪嘗胆」と結論付けて終わり。しかし、ロシアの侵略を防いだ日露戦争に関しては、膨大な資料(展示パネルには当時の欧米各紙の社説が並べられており、これは特に面白かった)で徹底的に分析・解説・賞賛するのである。

日露戦争の結果、アジアの民族主義が高揚したことは疑いない。トルコやかつてのイランが親日国だったのもその影響だ。しかし、その後に旧日本軍が占領した地域では、日本は欧米列強となんら変わりないという認識が広まり、かえって失望させる結果になったという側面もあったはずだ。

この辺を省みることはまったく無いまま、話はいきなり柳条湖事件や盧溝橋事件へ飛び、「中国やアメリカの謀略」による戦争の結果、敗戦の憂き目を見たことになる。んでもって、この辺から話が急にミクロ=個人史になり、○○命(”みこと”と読む。戦没者として靖国に祭られている人のこと)はこんな言いがかりで戦犯にされ処刑された、○○命はこんな遺書を残したなどなど、大局から日露戦争を語った雄弁さはどこへやら、情に訴えかける被害者意識の積み重ねで旧日本軍への批判を封じる(あるいは、考えさせない)仕組みになっている。

だから、”大東亜戦争”のナレーションでは「兵士は日本の自立自尊のために戦った。略奪や暴行をしようと思って大陸に渡った者は一兵卒たりともいなかった」というような具合になって、ちょっと笑ってしまうのである。渡った時点で思ってなかったらそれでいいのか?なーんてツッコミは端から想定してないんだろうな。ちなみに、ナレーションは女性の声だったが、北朝鮮のニュースを髣髴とさせる抑揚でいただけない。もうちょっと淡々としたナレーションのほうが説得力が出ると思うがいかがでしょう。

こうした靖国神社の思想を、”自虐史観”に比して”あらまほし史観”(←あほらしい、ではない)と名づけたのは文芸評論家の斎藤美奈子だったと思うけど(違ったらごめんなさい)、なるほどねえ。言い得て妙だよな。


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コメント 9

NO NAME

創価学会の記事では良い事書いてあったけど
靖国批判とはがっかりですね。
日本人だったら日本の為に命を奉げた人達を参拝しましょうよ。
日本人では無いのだったら別だけど。
靖国行って、批判記事書くんだったら反日マスゴミと同じだよ?
by NO NAME (2007-07-01 01:25) 

rio

匿名さん、コメントありがとうございます。

せっかくですが、特にお返事することはございません。失礼ですが、これまでこのブログにいただいたコメントの中でもっとも稚拙に感じます。私はバリバリの右翼の方々と靖国問題を議論したことも何度かありますが、どなたもあなたのようなレベルの言葉の投げ方はなさいませんでした。以上です。
by rio (2007-07-01 01:44) 

dio

大変興味深く読ませて戴きました。私は地方在住者ですが、近く東京に行く予定がありますので遊就k館には必ず行きたいと思います。全てがそううだとは思っていませんが、最近のウヨブログの薄っぺらな歴史観に少々閉口しています。
by dio (2007-07-01 02:16) 

rio

dioさん、コメントありがとうございます。

遊就館はぜひ行ってみてください。できれば充分にお時間をとって行かれることをお勧めします。政治的立場はさておき、日本の軍事史を概観できる工夫が凝らされています。わたしも今度はゆっくり見学しようと思っています。
by rio (2007-07-01 02:21) 

keisuke

トラックバック有り難うございます。
今度私も靖国神社を見学に行きたいと思います。
by keisuke (2007-07-01 08:04) 

rio

keisukeさん、コメントありがとうございます。

800円であの内容はお得です。「一宗教法人の見解」という視点が念頭にあれば、必要以上に高揚することも不快になることもないと思います。私が行った時には、中国語や韓国語を話している人もいました。
by rio (2007-07-01 10:26) 

madoka

恐るべし遊就館!もっとチャチなもんを想像してました。
一度行ってみたいと思いつつも、地方在住者でもあり、遊就館には足を運んだことがありません。機会があれば是非行ってみたいものです。

斎藤美奈子さんは『たまには、時事ネタ』の「夏の東京で戦争追体験ツアー」の中でも遊就館を取り上げてますね。「一度は見ておいたほうがいい」「ここは戦争の遺物だけでなく、戦争中の史観も保存された場所なのだ」と…。
しかし、rioさんも言うように、ありえないような振り込め詐欺に引っかかる、疑うことを知らない”無邪気な”人がこれだけ多い世の中ですからね。素朴な善男善女やウブな若者は、こういうのにうっかり「感動」しちゃったりするのかも…。
斎藤本を読むような人やrioさんのように「一宗教法人の見解」という冷静な視点を持って見学に行く人は安心だけど、そんな人はどちらかと言えば少数派。立派な施設で視覚・聴覚に訴えられて(しかも情に訴えてくるんでしょ?!)、しっかり洗脳されて、「美談」に「感動」して帰ってくる人の方が多いんじゃないかと思うと、ちょっと怖いなあと思ってしまう。悲観的過ぎ?
by madoka (2007-07-03 01:20) 

rio

madokaさん、そうです、『たまには、時事ネタ』で”あらまほし史観”って言ってたんじゃないかという気がしてきました。いま手元に無いので確認できないけど。

感動なさってる若者はたくさんいらっしゃいました。泣いておられる方(ほとんどが女性)もたくさん。感動なさるのは人それぞれですからいいんですけども、「展示=事実とは限らない」というところを押さえているかどうかは気にかかるところです。

靖国神社は「国を守るために命を捨てろ」という主張をいまも持ち続けています。遊就館でもくり返しその主張が目に付く仕組みになっています。それが一宗教法人として戦没者を祀る靖国神社の存在意義なのですから、譲れないところなのでしょう。しかし、靖国の主張では、外交問題は何も解決しないことを、私たちは日中戦争、太平洋戦争、朝鮮戦争、ベトナム戦争、その他多くの戦争からすでに学んだではずなのです。


一部左翼による自虐史観への反感から、”敵の敵は味方”とばかり靖国を賛美し、小林よしのりに傾倒するような軽率な若者たち(うっかり右翼、とでも呼びたくなるような)が増えています。しかし、万が一、日本に戦争の危機が訪れた時、彼らは率先して志願兵となるでしょうか?私はそうはならないと思います。

旧日本軍に限らずどの国の軍隊でも、志願兵のほとんどは、貧しい家庭で育ち、学歴社会やあらゆる差別に阻まれ、一発逆転を狙うには軍隊しかなかった人たちなのです。

なぜアメリカで、多くの若者がイラク戦争や湾岸戦争に志願したか。兵役を終えて生きて帰国できれば、「大学へ行ける」からなのです。

旧日本軍でも、当初から最前線に志願(あるいは配属)された兵士の多くは、朝鮮人、台湾人と、被差別部落の出身者だったのです。


一つの思想に簡単に染まる者は、簡単に暴走し、自分の身に不利益が及ぶとあっという間にその思想を捨ててしまいます。かつての軍国主義者しかり、全共闘しかり。昨今の”うっかり右翼”も、いずれはそうなるんだろうなととおもっています。
by rio (2007-07-03 06:12) 

madoka

「感動なさってる若者はたくさんいらっしゃいました~「展示=事実とは限らない」というところを押さえているかどうかは気にかかるところです。」
そう、私もそれが気にかかる!

私もオニじゃないので、戦争で亡くなった方々のために涙を流す人に対して「安易に感動してんじゃねえよ!」とは言いませんが、遊就館ではrioさんが↑で書いてるようなことは絶対教えてくれないじゃないですか。
遊就館の目的は、とにかく戦争の正当化・美化であり、最終的には「教義にのっとって拝観者を洗脳すること」なわけだから、昨今の日本人(趣味は感動)が軽ーい気持ちで見学~♪なんてことになったら、ハイ洗脳いっちょ上がり!…ってならない?ならないならいいんですけど…。
(でも「うっかり右翼」って命名、いいですね(笑)。思慮が浅ーい感じがよく出てて。)

私としては、感動して泣いている純真な人の後ろに立って、「疑ってみなきゃダメだよ!」「あなたが戦争に駆り出されて死んだとして、こんな風に祀り上げられて、それで喜べるか?!」と(立派な設備に負けないように)耳元で叫びたい気持ちです。ていうかそれ以前に、入館(あ、「拝観」か)しようとしてるひと1人1人に、「ちょっとは勉強してきた?」「あなた、騙されやすい?油断しちゃだめよ」とか忠告したい…。ああ。こういうのを老婆心って言うんですよねー!
えっ、なに?結局わたし、オニババで老婆かよ…。
by madoka (2007-07-03 19:05) 

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