「夢の仲蔵千本桜」 [観劇(伝統芸能)]
斎藤雅文 作/九代琴松 演出「夢の仲蔵千本桜」
日生劇場
2005年10月23日(日)17時開演(20時15分終演) 2階A列43番
正直なところ「歌舞伎会」ゴールド会員狙いで観に行くことにした面もあったが、再演であり先月は大阪松竹座でも上演しているためか、よく練られた舞台として楽しめた。
日生劇場の花道は昨年の劇団☆新感線「阿修羅城の瞳」でも使っていたが、劇場全体の雰囲気からは少々不思議な感じ。
江戸森田座、中村仲蔵という歴史上の存在を背景にした物語。江戸時代の歌舞伎役者達を現代の歌舞伎俳優が演じる面白さもあり、十分見物に耐える演目となっている。劇中劇の「義経千本桜」もほぼ本来の歌舞伎と同じなので安心して見ていられる。日生劇場は回り舞台が無いが、舞台面のスライドや多彩なせり上がりで森田座の舞台、楽屋、奈落を縦横に見せる演出も斬新。
最近の「勧進帳」や「魚屋宗五郎」などでの幸四郎の演技に対する何とも言えない「ズレ」のようなものは、パンフレットの中で本人が言っている「演劇としての歌舞伎」という意識によるものか、などとふと思ったが、今回については仲蔵役では現代劇の演技だし、劇中劇での渡海屋銀平と碇知盛でも特に違和感は感じなかった。
実質的な主役である此蔵の染五郎は、仲蔵に対する愛憎を含んだ複雑な思いをストレートに表現して好演。劇中劇での狐忠信では、宙乗りも含め身体の切れも良く楽しんで演じている様子で、こちらは本役として見てみたい気がする。
難を言えば、悪役の底意地の悪さと殺人事件に至る経過の描き方がやや物足りないか。それがあれば、クライマックスの悲劇性がより浮かび上がるのでは。
他には、立女形・中村里好役の上村吉弥、森田勘弥役の秀太郎などが印象的。
はじめまして!ShyBoarさんは伝統芸能系に大変お詳しいのですね。
私もこの舞台は今月8日に観てきました。たしかに「悪役」が殺されるほど悪い感じがしなかったように思います。2つTBさせていただきます。
by Ren (2005-10-24 18:37)