お前の番だ！ 190
「そう。何時だったか稽古が終わってから、ちょっと相談したい事があるって云われて、土曜日のお習字のお稽古に行った帰りに、駅前商店街の喫茶店で待ちあわせてね」 「良さんに結婚を申しこまれたけど、どうした..
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お前の番だ！ 189
「ま、そう云うなら良君も狸だけどね」 「同じ穴の貉、と云うか、狸、と云うか。二人共結構やりますねえ」 　万太郎は腕組みして感心したような表情をするのでありました。 「何時も一緒にいる万ちゃんに、..
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お前の番だ！ 188
「で、三人の話しあいは、一体何なのですか？」 　万太郎の催促に、そうする必要は特にない筈でありますが、あゆみが少し顔を寄せて小声になるのは、話の内容にややデリケートなところがある故でありましょうか。..
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お前の番だ！ 187
「押忍、承りました」 　万太郎はそう返事して師範控えの間を下がるのでありました。良平は鳥枝範士が云うところの、小難しい難題、の関連で呼びつけられるのでありましょう。 　小難しい難題、とは何でありま..
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お前の番だ！ 186
　新木奈は、もう一度あゆみの書が見たくなったからとか何とか云って次の日も夕方頃に上野までやって来て、あゆみの前に歯の浮くようなべんちゃらの総棚浚えをしてから帰るのでありました。慎に以ってご執心な事であ..
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お前の番だ！ 185
「ああそう」 　大岸先生は奥の方に視線を向けるのでありました。それからそちらに歩き去るのは、あゆみと一緒に新木奈にもう一度愛想をするためでありましょうか。 　万太郎は目の前に置かれた、大輪の赤い花..
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お前の番だ！ 184
「どうぞゆっくり見ていってください」 　大岸先生がもう一度新木奈にお辞儀して受け取った花束を抱えて控室に去るのは、花瓶にその花を活けるためでありましょうか。 「じゃあ、僕も受付に座っていますからご..
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お前の番だ！ 183
「よお、折野君」 　男は万太郎に手を上げて見せるのでありました。 「ああ、これは新木奈さん」 　万太郎は立ち上がって軽くお辞儀するのでありました。新木奈は持っていた大ぶりの花束を万太郎に渡すので..
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お前の番だ！ 181
「ああそう」 　女性はそう云った後に何も続けないのでありました。万太郎の返した言葉のどこにも引っかりを見せないのは、万太郎にしたら多少拍子抜けでありました。 「貴方は大岸先生のお弟子さんなんですか..
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お前の番だ！ 177
「いや、実は前から気にはしていたのです。まあ、入門から三年も経っているのに今更何ですが、花司馬先生が、あゆみ先生、とちゃんと尊称をつけて呼ばれているのですから、僕なんかも当然そう呼ばなければならないか..
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お前の番だ！ 175
「でも世間じゃ、剣術は別としても、体術では親父さんの方が上だと評判だぜ」 「そんなのは、ワシの技の派手さに惑わされている素人の見損ないじゃな。剣術は云うまでもなく、体術の実力に於いてもワシは到底あに..
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お前の番だ！ 173
「そんな遠慮していないで、折野君もこちらにお入りなさい」 　興堂範士が万太郎に手招きするのでありました。「何時もと違って今日はあゆみちゃんも一緒なんだから、二人に茶でもふる舞って進ぜよう」 「押忍..
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