あなたのとりこ 699
　袁満さんはこのところ日比課長とは、何だかしっくりとはいっていないような感じであります。前はあんなに、互いに冗談半分の悪態をつき合う程の名コンビであったのでありましたけれど。まあ、労働組合が結成されて..
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あなたのとりこ 697
　まあこう云っては何ですが、那間裕子女史が部屋の電灯をちゃんと消してから帰って行った、と云うその律義さなんと云うのは、女史にはあんまり似つかわしくはないようにも思えるのであります。しかし電灯を消す生真..
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あなたのとりこ 688
「均目君について、唐目君が何か知っているかと思ってね」 　那間裕子女史もビールを一口飲むのでありました。 「と云うのは？」 「会社を辞めた後、もう既に働き口とか決まっているのかとか」 「あれ、..
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あなたのとりこ 680
「向こうの、もっとお偉いさんとかが出てきてあれこれ話を聞くとか、今迄見た事のないような顔がそこに一緒にある、とか云う事もなかったんですね？ 「うん、横瀬さんだけだったよ」 　均目さんとしてはひょっ..
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あなたのとりこ 669
「藪から棒で、本当に恐縮なんですが、結局そう云う結論になったんです」 　袁満さんがようやく気分を立て直して均目さんの後から続けるのでありました。横瀬氏は怪訝そうな目を袁満さんに向けて、暫く言葉を発し..
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あなたのとりこ 668
「あら、皆で何の談判をしているの？」 　那間裕子女史は妙にあっけらかんとした口調で誰にともなく訊くのでありました。遅刻したくせにあっけらかんとしている態度にも不愉快を覚えたようで、土師尾常務は眉根を..
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あなたのとりこ 667
　均目さんが皮肉な笑いを片頬に湛えながら云うのでありました。「それをどう云う勘違いか妙に偉そうに、しかも恩着せがましく、誰よりも早く朝一番で、とか抜け々々と云ってのけるのは、一体全体どう云う了見からな..
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あなたのとりこ 650
「いやね、直前にふと閃いた人からじゃなかったから、ちょっと驚いたんだよ」 「その、閃いた人、って誰？」 「会社の袁満さんだよ」 「ああ、労働組合の委員長をしている人ね」 　受話器の向こうから夕..
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あなたのとりこ 640
　均目さんは土師尾常務の小心を見抜いて、嵩にかかって云い募るのでありました。 「と云う事は、･･･」 　ここで社長が喋り始めるのでありました。「均目君と那間君がこの全体会議に参加して何でももの申す..
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あなたのとりこ 638
「社長と常務の悪辣さに対しては、俺と唐目君だけでは対抗出来ませんからね」 　袁満さんは挑むような笑いを社長に投げるのでありました。 「いや、全総連が絡んでくるのはいただけない」 　社長はここでも..
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あなたのとりこ 629
「先ず話さなければならないのは、･･･」 　土師尾常務は何となく上目遣いになって、皆の気配を窺うような風情をするのでありました。なかなか話し辛いのでありましょう。 「変な間を空けないで、さっさと話..
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あなたのとりこ 626
　倉庫に入ると作業台を五人で取り囲んで、袁満さんが一同をゆっくり見渡して、最後に頑治さんに視線を留めて訊くのでありました。 「こちらとしてもこれは労働組合案件だと啖呵を切った手前、全総連の人を交えて..
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