大きな栗の木の下で 73
「いや、恐らく、･･･」 　御船さんはそう云って沙代子さんを見るのでありました。「沙代子に気持ちの強さや勇気があったとしても、それにずるくてもずるくなくても、矢張り沙代子の気持ちがその矢岳と云う男か..
タグ： 栗の木 木蔭 公園 勇気 物語 たじろぐ 家 音楽 苛々

大きな栗の木の下で 72
　御船さんは草を多目に毟って、それを力いっぱい前に投げるのでありました。それを見て、沙代子さんが聞くのでありました。 「あたしのこんなつまらない話、御船君、もう聞きたくなんかないでしょう？」 「い..
タグ： 栗の木 木蔭 公園 海 赤ちゃん たじろぐ 了見 勇気 鈍感

大きな栗の木の下で 71
　でも、結局矢岳君はそれが出来なかったの。ううん、要するに、しようとしなかったの。あたしと赤ちゃんは、自分の音楽や、音楽で身を立てようとする志とは対立するものだって、そう見做すしかなかったのよ。屹度成..
タグ： 栗の木 木蔭 公園 赤ちゃん 音楽 見取り図 機微 苛々 たじろぐ

大きな栗の木の下で 70
　おっと、自分は今、ややこしい思索の領域に足を踏み入れようとしているようだと、御船さんは秘かに眉根を寄せるのでありました。そこいら辺に思惟を致すなんと云うものは、御船さんとしてはどちらかと云うと不得手..
タグ： 栗の木 木蔭 公園 赤ちゃん 家 心根 海 街 見取り図

大きな栗の木の下で 69
　矢岳君は次の日の昼過ぎに一端帰って来たの。でもなんか譜面とかノートとかそんなものをかき集めて、次のレコードの打ちあわせで今日も帰れないかも知れない、なんて云ってすぐにアパートを出て行ったわ。赤ちゃん..
タグ： 栗の木 木蔭 公園 赤ちゃん 家 音楽 ギター 海 街

大きな栗の木の下で 68
　海からの風がまた御船さんと沙代子さんの前髪を乱すのでありました。 「案外肝が太いのかも知れないな、その矢岳と云う男は」 　御船さんが前髪を掻き上げながら云うのでありました。 「お父さんの借金や..
タグ： 栗の木 木蔭 公園 学校 一人暮らし 海 高校生 音楽 赤ちゃん

大きな栗の木の下で 67
　沙代子さんは顔を上に向けて古木の下枝の暗がりを見上げるのでありました。 「矢岳君のお父さんは横浜の方で、輸入食材を扱う商社を経営していたの。お父さんはかなりの遣り手で、事業は順調に推移していたんだ..
タグ： 栗の木 木蔭 公園 学校 一人暮らし 高校生 就職 無表情 呑気 解放感

大きな栗の木の下で 66
「合気道の大物？」 　沙代子さんが云うのでありました。 「いやあ、合気道を知る以前から描いていた見取り図のことだけどさ、それは。第一、合気道は知れば知る程、俺は端っこの方で地味に地道にやっていく方..
タグ： 栗の木 木蔭 公園 見取り図 合気道 無責任 海 家 実家

大きな栗の木の下で 65
　自分は未だフォークシンガーとして大成とは云わないまでも、地歩も固めてもいないと云うのに、そんな折りに、もっともっと先に予定していた筈の自分の子供が誕生するなんて云う事態は、俄かには容認できない事柄だ..
タグ： 海 学校 木蔭 家 音楽 栗の木 無責任 見取り図 公園 赤ちゃん

大きな栗の木の下で 64
「もう大丈夫よあたし、落ち着いたから」 　沙代子さんがそう云って御船さんに笑むのでありました。 「女の涙と云うのは、取り扱い注意だって職場の先輩とか同僚に、酒の席でよく云われていたから、それを守っ..
タグ： 栗の木 木蔭 公園 酒 レトリック 赤ちゃん 家 見取り図 音楽

大きな栗の木の下で 63
　御船さんは掌を沙代子さんの背に翳した儘、声を出せずに何時までも体を強張らせているのでありました。急に泣き出すことはないじゃないかと、強張った頭皮の奥の方で思うのでありました。まあ、当時の心境を思い出..
タグ： 栗の木 木蔭 公園 たじろぐ 了見 手持無沙汰 按配 腕時計 不謹慎

大きな栗の木の下で 62
　矢岳君のプライドの高さからすれば、その頃の矢岳君の境遇と云うものは、仕事の上でも生活の上でもすごく不本意だったと思うの。不本意続きだったと思うのよ。矢岳君今まで周りの人に結構ちやほやされていたし、自..
タグ： 木蔭 栗の木 公園 実家 赤ちゃん 家 心根 了見 呑気