お前の番だ！ 61
　廊下から師範控えの間に近づいて来る足音が聞こえるのでありました。次第に大きくなるその床を踏む音は如何にも堂々とした足取りを想像させるもので、これは一般稽古を終えた鳥枝範士が道場から控えの間に戻って来..
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お前の番だ！ 49
　威治教士は立った儘頭をちょこんと前に倒すだけのお辞儀をするのでありましたが、それは上位者に示すべき礼容ではなかろうと、見ていた万太郎は不快に思うのでありました。興堂範士に対しては親子の狎れからそう云..
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お前の番だ！ 35
　良平は万太郎の「下半身がたじろぐ」と云う表現が妙に気に入ったようでありました。だから以後、初心者に稽古着の着方を指導する折とかに「下衣だけでは下半身がたじろぐかも知れないけど」等と時々、余計な付言を..
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お前の番だ！ ５
　学生の前に立つ祭に、露払いの二人が最後尾の男を挟むようにして横隊に並ぶのでありました。真ん中の恰幅の良い赤ら顔がもう一度学生達を睨め回してから、厳ついその顔と風体とは裏腹な、甲高い声で徐に口を開くの..
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お前の番だ！ ２
「神前に、礼！」 　鳥枝範士の大音声が道場に響くのでありましたが、是路総士の正坐からほんの少しこの発声までに間が空くのは、鳥枝範士が是路総士の入場の不手際に顔を顰めてから気を取り直すまでの時間が挟ま..
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もうじやのたわむれ 360
　こちらに戻ってきたら閻魔庁での記憶のあれこれは、すっかり消えて仕舞うと云う事でありましたが、不思議な事に拙生はその一部始終をすっかり覚えているのでありました。これは一体どうした事でありましょうや。何..
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もうじやのたわむれ 359
　叔父はしかし、この自分の返答がこう云う場合に、しっくりしているのかどうか全く自信がないようで、他に何かもっと状況に適した事を云いたいそうな素ぶりは見せるものの、当為の言葉が探り当てられないのでありま..
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もうじやのたわむれ 350
　発羅津玄喜氏が首を傾げるのでありました。 「卑しさが卑しさとしての意味を持っていない社会なのでしょうね、準娑婆省の社会は」 　これは拙生の右横に座っている、逸茂厳記氏の言葉であります。 「まあ..
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もうじやのたわむれ 326
　補佐官筆頭が拙生の方に手を向けるのでありました。 「亡者は何処へ行っても歓待されるのですねえ」 「まあ、遥々こちらにいらしたのですし、これから先、こちらの世でご一緒に時を過ごすのですから、省に囚..
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もうじやのたわむれ 300
「何やらワシの迂闊さから、不測の事態が出来したようじゃな」 　閻魔大王官が補佐官筆頭に声をかけるのでありました。 「ええまあ。･･･」 　補佐官筆頭は閻魔大王官の権威の手前、どうこの事態を知らせ..
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もうじやのたわむれ 298
「ふうん。本当に、そうじゃったのかえ？」 「本当に、そうじゃったのです」 　拙生は確信に満ちた頷きをしながら、閻魔大王官の口真似をするのでありました。 「それは大変な事じゃのう」 　閻魔大王官..
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もうじやのたわむれ 293
　補佐官筆頭が拙生を怖じ々々と見ながら云うのでありました。「私共の不手際で、とんでもない事態が出来して仕舞いました」 「ええと、そのとんでもない事態とは、先程、裁決書類が裁決箱から落ちた事ですね」 ..
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