空
   空を掴もうとしていた。 か細く、綺麗な手を伸ばす先は空虚でも、彼女の目には雲一つない綺麗な青空が映っていた。 掴もうと、もがいていたその手が静かにシャッター..
タグ： 小説 ファインダー カメラ 空

インターネット
   インターネットは無駄な時間の塊である。 トラフィックが混み合うと、ページの移動に時間がかかる。 その間１秒か２秒。 しかしそれを積み重ねれば数分、数十..
タグ： 接客 小説 客 店員 ブース インターネット

グレイ
   あなたが灰色なんて好きになった理由がわからない。 灰色なんていう、地味だし薄汚れた感じの色を、好きになる理由が分からない。 コンクリート、曇天、木灰……気が..
タグ： 小説 カップル 灰色 グレイ

クレヨン
   なんて挑発的な１２色のクレヨンたちだろう。 どのクレヨンも一筋縄ではいかない色ばかりだ。 例えばこのクレヨンなんかは，橙と茶を２：１で混ぜてこんがりと焼き上..
タグ： クレヨン カラー 小説

カウンター
   バックバーに並んだ無数のウイスキー・ボトル。 今日だけはトパーズのように古い輝きを放っているように見える。 喜びも悲しみも同じ表情で受け止めてきてくれたこの..
タグ： バー 酒 カウンター 小説

九回裏
  夕暮れの住宅街をうす汚れた軽トラックが走っている。軽トラックには拡声器が搭載してあり、そこから皴枯れた男の声が響く。「九回裏はいらんかえ～！九回裏はいらんかえ～！」その様子を見..
タグ： 野球 最終回 九回 小説

ロボット
   「御主人様、起きてください」 私はその声で目覚めた。 先日購入したばかりの、お手伝いロボットだ。 「よし、わかった。おまえは修復ロボットに気体調整..
タグ： 小説 ロボット 近未来

せんべい
    ジュワー、っと上がる白い湯気に醤油があぶられた香ばしい匂いがする。 参道沿いに並んだ屋台で、網の上の煎餅が薄く飴色に焼き上がっている。 屋台の奥..
タグ： せんべい 祭り 香 小説

くまモン
   朝起きたら俺は熊だった。１階に下りて朝食をとる為テーブルに着く。「おはよう」嫁と娘にいった。嫁は犬だった、娘は猫だった。食事を終え会社に行く。「オハヨウオハヨウオハヨウ」部長..
タグ： くまモン 動物 熊 小説 記念日

タクシー
   突然の雨に降られて飛び乗ったのは 真夜中のタクシーバタンと扉がしまって静けさの車内に 俺と運転手の２人「お待ち致しておりました」バックミラー越しに運転手が言うワイパ..
タグ： 小説 夜中 タクシー

勇者
  この世は何処からかやってきた魔王に支配されてしまった。この魔王を倒そうと何人もの勇者が立ち向かったがことごとく敗れ去ってしまったのであった。ある村で勇者は言った。「もう何人もの..
タグ： 魔王 小説 勇者

風鈴
    滝のような蝉時雨でさえ隠せない風鈴の音がひとつだけ、チリンと聴こえた。風はなく、時間は止まったように感じられる。風鈴が退屈に飽きてひとりでに鳴ったのかもしれない。..
タグ： 風鈴 小説 夏