ぎゅうにゅうⅩ
　そうしてそれから今度は背泳ぎで岩場から遠ざかり、しばらくして反転して、今度はクロールでまた元の位置まで戻ってきます。顔をぶるんと振って水を切り、掌で顔面をひと拭いした後ぎゅうにゅうは拙生に笑いかける..
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ぎゅうにゅうⅨ
　あの美しい黒い肌と見事な腹筋を持ったぎゅうにゅうが、悪人であるはずはないのであります。美しい肉体と優しい態度、それに英語が喋れて物識りである彼を冒涜する輩は、当人が穢れているが故に彼を賤しめることで..
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ぎゅうにゅうⅧ
　従兄弟はそう拙生に怒鳴るのでありました。 「あの人は悪か人？」 「そう。あがん悪か人間はおらんとぞ」 　従兄弟が断言します。「あいはパンパンの子供けんね」 「パンパンてなん？」 　従兄弟ま..
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ぎゅうにゅうⅦ
　ぎゅうにゅうは彼が開示した指導法を順守し、拙生の頭を無理に海中へ押しこんだりなど決してしないのでありました。絶対にそう云う無体なことは自分はしないから安心しろと、拙生の肩に当てたその掌の力加減が拙生..
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ぎゅうにゅうⅥ
　ぎゅうにゅうはにやにやと笑うのでありました。拙生はなにやら馬鹿にされたような気がして、むきになって言葉を募らせるのであります。 「頑張れば、十メートルくらいは泳ぎきるかもしれんよ僕」 「オイが泳..
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ぎゅうにゅうⅤ
　ぎゅうにゅうに腹を突つかれて、急に力が抜けて、拙生は身体を捩ってげらげらと笑い出してしまいました。 「こそ映ゆうして、力の入らん」 「もう一回力ば入れてみろ」 　再びぎゅうにゅうに腹を突つかれ..
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ぎゅうにゅうⅣ
「ギューニュー？」 　またもや初めて耳にする名称が出てきて拙生は頭が痛くなるのでありました。 「そいは英語の名前？」 「いいや、違う。あの、飲む牛乳くさ」 「白か牛乳？」 「うん、そうくさ」..
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ぎゅうにゅうⅢ
「アメリカ人のことは、みんなそがん云うと？」 　拙生は少年に聞くのでありました。 「大体そう云うとやろうけど、特にオイ達んごと黒かとばそがん云うと」 「へえ、黒か人のことば云うとね。そしたら白か..
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ぎゅうにゅうⅡ
　少年は拙生に断りもなく、砂の小山の向こう側からトンネルを掘りだします。彼の大きな掌は拙生の掘削作業よりもはるかに効率的に、大量の砂を一挙に掻きだします。その掌はその甲の艶やかな黒さに比して、潤んだよ..
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ぎゅうにゅうⅠ
　もう一つ、とつ国の少年との思い出を書きます。もっとも彼がとつ国の少年だったのか、それとも国籍は日本だったのかよくは判らないのであります。恐らく彼は日本人だったのでありましょう。父親が佐世保に寄港した..
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