お前の番だ！ 76
　是路総士はこれも前と同じに四方から、ゆっくりした動きと早い動きで下座の門下生に形を示して見せるのでありました。 「さて、今度はこれをやりましょう」 　是路総士がそう促すと下座の門下生達はきびきび..
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お前の番だ！ 74
　通例として手始めには下位者が仕太刀を、上位者が打太刀の役を取るのでありますから、お互いに八相に構えた後に入門間もない白帯風情の万太郎は、威治教士の打ちこむ動作の起こりを待つのでありました。威治教士は..
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お前の番だ！ 73
「どうですかな、要は、相打ち返し、と同じでしょう？」 　是路総士は門下生の方に向かって云うのでありました。下座の門下生の内何人かは頷いているのでありましたが、頷く程にその理を理解している者がどれだけ..
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お前の番だ！ 71
　朝稽古の前は色々仕事が一杯あって目が回るくらい忙しいものだと、万太郎は良平に唆されて初日から朝早くに道場に来た事を少し悔やむのでありました。しかし遅く来ていたとしても、初日こそこの忙しさを免れ得たか..
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お前の番だ！ 70
　万太郎が良平に云われた通り木刀を一本一本壁の木刀かけから取って拭っていると、稽古着に着替えたあゆみが道場に顔を出すのでありました。万太郎は竟愛想で笑顔を向けるのでありましたが、それに対してあゆみが先..
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お前の番だ！ 69
「本日からお世話になります。どうぞよろしくお願いいたします」 　万太郎は顔を伏せた儘で云うのでありました。 「はいよろしく」 　是路総士も威儀を正して万太郎に頭を下げるのでありました。「面能美、..
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お前の番だ！ 68
　是路総士が傍から離れた後、万太郎は興堂範士に頭を下げるのでありました。 「僕の了見違いから稽古の手を止めさせて仕舞って、申しわけありません」 　そう云う万太郎に興堂範士はニンマリと笑い返すのであ..
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お前の番だ！ 67
　万太郎は脂汗を額に滲ませるのでありました。 　出遅れないためには誘いをかけない方が良いと、二度興堂範士の木刀を頭上で受けた衝撃の残滓を掌に残しながら万太郎は考えめぐらすのでありました。 　万太郎..
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お前の番だ！ 66
「さあて、こうしてあれこれ話しばかりしていてもつまらないでしょから、二人で組んでこの一本目の形をやってみましょうかな」 　是路総士はその場に正坐すると、先ず万太郎に、それから下座の門下生に向かって「..
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お前の番だ！ 64
「よっしゃ。よろしく頼むぜ」 　良平は兄弟子らしく些か横柄に万太郎の肩を叩くのでありました。この同い歳で二か月だけ先輩たる良平の兄貴面に、万太郎は特段嫌味を感じる事はないのでありました。 　それは..
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お前の番だ！ 63
「今後とも、よろしくお願いいたします」 　鳥枝範士は今まで聞いた事のないような、返って万太郎の方がまごつくような丁重な物腰で云うのでありました。是路総士にしても鳥枝範士にしても、新入門の内弟子風情に..
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お前の番だ！ 61
　廊下から師範控えの間に近づいて来る足音が聞こえるのでありました。次第に大きくなるその床を踏む音は如何にも堂々とした足取りを想像させるもので、これは一般稽古を終えた鳥枝範士が道場から控えの間に戻って来..
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