海外ミステリーを読む(その26) [└ミステリー]
アガサ・クリスティ(1890〜1976)の『書斎の死体』です。
発表年は、1942年。『The Body in the Library』
クリスティの名探偵でポワロに次いで有名なミス・マープルの二作目です。
クリスティ作品中ではあまり上位ランクに入らないのですが、軽快で読みやすく、伏線もしっかりした秀作だと思いますよ。
序文で「書斎にある死体」という、現実にはありそうもなく、推理小説の中ではよくあるテーマをあえて取り上げて書きたいとあります。
数々の作品を産み出したクリスティの遊び心でしょうか。
ミス・マープルと近所のおばさん達のおとぼけ感が、さらにいい味を出しています。
ミス・マープルの旧友であるパントリー大佐夫妻の書斎で死体が発見される。
夫妻はもちろん、屋敷の人間は全員この死体が誰なのかわからない。
車椅子の大富豪とその一族が登場、滞在しているホテルへと舞台は移っていく。
警察と元警視長官、そしてミス・マープルがそれぞれの役割で捜査が進められる。
登場人物がなにかしら、みんな旧知の間柄なんですね。
動機が何なのかを推理しようとした(クリスティの狙いに乗った?)のですが、書き方が実にうまいので、いくつも考えさせられてしまう。
よくある遺産相続の金銭的動機、それとからめた恋愛(結婚)によるもの、恋愛がらみのサヤあてや嫉妬によるもの、人間関係によるねたみ、激情による発作的殺人等々、どうとでもとれるように、うまくちりばめられている。
この線から手繰っていくと、犯人はわからないかもしれませんが、もっとも楽しめる部分でもあります。
トリックはミステリーを読み慣れた人ならピンとくるかも知れません。
これでかなり真相に近づきますが、犯人を見つけるには、もう一押しが必要です。
なかなか一筋縄ではいきません。
事件が解決したあとのラストの1ページが印象的で、なんともいい感じです。
よく読んで、あれこれいっぱい考えてからの1ページが効果的です。
【追記】
NHKで「アガサ・クリスティーの名探偵ポワロとマープル」というアニメ番組を放送していました。(今は終了しています)
ポアロを里見浩太朗、マープルは八千草薫が声優として出演していました。
一度だけ見たことがありますが、全39話とかなりロングランだったようで、『ABC殺人事件』『パディントン発4時50分』『スリーピングマーダー』等の有名作品を取り上げたようです。クリスティの人気が伺えますね。
次回は、ハードボイルドだぜ。フィリップ・マーロウ登場。
私はマープルはポアロほど読んでいなくて、「パディントン発4時50分」や「スリーピングマーダー」は読んだのですが、これはまだ読んでいないんです。
YumYumさんの文章を読んでラスト1ページに心惹かれたので、是非読んでみます!
次はチャンドラーなんですね。楽しみです(^^)
by 翠 (2006-05-17 17:15)
翠さんへ
コメントとnice!をありがとうございます。
マープル物って独特の味がありますよね。
ユーモアというか遊び心というか。
個人的には、ポアロ物よりも好きかも。
by YumYum (2006-05-19 22:05)